柿と牡蠣 ４２８号

最近、伊勢内宮参拝の時、おかげ横丁の二軒茶屋で牡蠣の土手鍋定食を頂いた。そして飯田市援農ボランティアで手伝った市田柿が干しあがり、自宅に届いた。

同音異義語の山の柿と海の牡蠣。牡蠣は「カ」にアクセントが有り、柿は「キ」が強調される。

真牡蠣の場合は夏の産卵期は食用には適さない。春から夏に旬を迎える岩牡蠣は通年食べることができる。「海のミルク」の牡蠣はフライや、土手鍋の具にして食べるほか、新鮮な細菌の無い的矢牡蠣は生食される。

宮城県気仙沼湾の、畠山重篤氏は、２０年ほど前に、フランスのロワール川河口の漁場を視察した。漁場に注ぐ川の上流の落葉広葉樹の柿の腐葉土のフルボ酸鉄が牡蠣の餌の海藻や植物性プランクトンに不可欠で、豊かな海を形成する。その体験が「森は海の恋人」運動に発展した。

成長に合わせて殻を大きくする牡蠣。その原料は温暖化の元凶である炭酸ガスとカルシュームである。その形状は人智の及ばない芸術品である。

炭酸ガスを酸素に換えた、山の柿の葉っぱのフレディーは死して牡蠣になる。牡蠣は人間に食われて栄養になる。柿も牡蠣も人間もＤＮＡに共通点があるのだろう。

２０万年前に誕生したミトコンドリア・イブを母とする現代人は、もっと遡れば３８億年前の単細胞生物に行き着く。柿も牡蠣も人間もあらゆる有情の源泉は同じ仲間である。人間だけの独善は許されない。お釈迦様は諸法無我と述べた。多くのおかげで生かされているのが人間である事を、柿と牡蠣が教えてくれた。