風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

渚にて(On the Beach) 165号

2007年09月20日 18時46分02秒 | 随想
「渚にて」は、オーストラリアに住む小説家ネビル・シュートによって、昭和32年に書かれた空想小説である。中学生の時の娯楽である町内の映画会で「渚にて」と「宇宙大戦争」の映画を見て、恐怖に怯えた記憶がある。TVは寺院境内の映像の悪い力道山のプロレスを見る為に、兄貴に連れられ1時間ほど歩く、物のない時代である。

「渚にて」は第三次世界大戦が勃発して核爆弾による報復攻撃合戦の結果、北半球の全生物が壊滅する。孤立したアメリカ海軍の原子力潜水艦が、南半球のメルボルンに寄港する。全滅したと思われたアメリカから謎のモールス信号が断続的に発信されて来る。アメリカ人のタワーズ艦長以下、オーストラリア人の科学者のジュリアン、オーストラリア海軍所属ピーターらは原子力潜水艦に乗り込み調査に向かう。

潜望鏡から見たワシントン州ピューゼットサウンドのモールス信号は風に吹かれた空き瓶が揺れて電鍵を叩いている。生存者発見の望みが消え、凄惨な被害を確認して、メルボルンに戻ると、放射線被害者が出始める。市民はさらに南下することを選択せず、自宅での薬物による死を選ぶ。唯一の将校生存者のタワーズ艦長は米海軍総司令官に昇進し、オーストラリアでの死を望まず、飽くまでもアメリカ海軍の軍人としての死を望み、同様の選択をした乗組員と共に潜水艦をオーストラリアの領海外で沈没させる自死を選ぶ。そして人類は滅亡した。

「核の冬」とは、核兵器の使用に伴う爆発そのものや広範囲の延焼によって巻き上げられた灰や煙などの長期間浮遊する微粒子により、太陽光が大気透明度の低下で極端に遮断される事(日傘効果)から、海洋植物プランクトンを含む植物が光合成を行えずに枯れ、食物連鎖の崩壊で動物が飢えて死に、氷期となり、人間が生存できない程の地球環境の悪化を招く事である。

自然現象ではフィリピンのルソン島にあるピナトゥボ火山やアメリカのワシントン州にあるセント・ヘレンズ火山の大噴火によるエアロゾルの日傘効果による気温低下が現実に起こった。

「茹で蛙現象」という言葉がある。蛙をビーカーに入れアルコールランプで徐々に温度を上昇させると蛙は死亡する。最初から熱湯に蛙を入れると驚いて飛び跳ねて逃げて助かるのである。

熱湯に飛び込む蛙の核戦争による悲惨な環境破壊は納得しやすいのであるが、徐々に効いてくるボデーブロウの地球温暖化はぬるま湯の蛙で、気が付いた時は、破滅的な状況になる可能性がある。その事を危惧している。

環境破壊を考えると、人間は原点に戻り、日の出と共に働き、日没と共に就寝する自然と同化した単純な生活サイクルを日常とする事の必要性を感じている。毎日がお祭り・宴会の生活は疲れるし、健康に良くないと反省している。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。