心のインフレ経済 ４９８号

「どら平太」のＶＨＳビデオをインターネットで１円で購入した。送料が３４０円である。

山本周五郎の「町奉行日記」を原本に、ビルマの竪琴の市川崑、七人の侍の黒澤明、二十四の瞳の木下惠介、人間の條件の小林正樹が脚本を共同で練った映画である。全員、あの世に行った。

時は江戸時代。新任町奉行の望月小平太は究極のどら息子である。呑む・打つ・買うは昔の男の三大娯楽。それを徹底するから「どら平太」の悪評が世間に蔓延する。

酒税を誤魔化す「大河岸の灘八」、売春で女を泣かせる「巴の太十」、八百長賭博の「継町の才兵衛」は、無法地帯の三悪人であるが結束が固い。贈賄する三悪党、収賄する城代家老「今村掃部」や藩の重職達の結束も固い。非常識な手段で、悪党を根こそぎ退治する。そして友人の大目付の仙波義十郎は自害する。悪のキーマンだった。

「どら平太」はどら息子を演技していた。そして芸者「こせい」にぞっこん惚れられている。そして頭が上がらない。釣りバカ日誌のみちこさんと浜崎伝助に似ている望月小平太。

現実社会にも似たような悪事が頻繁に起こるのである。資本家でも宗教家でも、偏執狂に権力が移行すると、修羅場になる。金と心の中道が政治の王道である。

民衆を裏切り優雅な生活を自分だけ享受するのか、騙される勇気を持って皆と質素倹約の人生を送るのかの選択は自己責任であるが、多くのお陰で生かされている人間である。

ＶＨＳビデオは１円で、ＤＶＤの「どら平太」は３０００円である。３千倍の感動があるのだろうか。テレビ画像からの映像は同じであると思う。

最新の再生媒体だから映画「どら平太」は高価でよいのか。日本人の心を伝えるのなら、同じ値段にならないといけない。心の発露の著作をもっと大切にすることが、心の時代なのである。３４１円でこの感動は、デフレ経済であると思うことが、心のインフレ経済で推奨される。