風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

諸刃(もろは)の剣(つるぎ) 

2007年10月20日 16時36分13秒 | 随想

「諸刃の剣」は相手を攻撃することにも役立つが、自分に害を与えるような危険性がある武器のことである。功罪の2面性を内包している事柄を説明する時に使われている。

しばしば訪れる、飯田市は東に赤石山脈・西は木曽山脈に挟まれた天竜川の河岸段丘に果樹農園が広がり、桃・なし・林檎・市田柿が広域に栽培され、農産物は東京や中京圏に出荷され、累代の資産の蓄積は豊かな田園風景を形成している。独特な地形は、よく晴れた秋の始まりの朝に、川霧を発生させる。初秋に訪れた四国大歩危の吉野川の渓谷と同じ景観を呈する。

霧 ちいさな水滴が空気中に浮遊していて視程が1km未満の状態
霜 晴れて風のない夜は地面から熱がさかんに放射され、よく冷える。この冷え込みがきついときに空気中の水蒸気が直接小さな氷の粒となって、地表近くの草や石の表面につくこと

高台に位置する座光寺からは、川霧の下の市街は見ることが出来ない。晩秋になると天竜の川霧は座光寺果樹農園の林檎や柿にまで到達し、果実を美味にする。そして霜が降ると究極にして至福の味になる。

しかし同じ霜も、5月の黄金週間にくる遅霜は果実を全滅させる力がある。ようやく花ひらいた雌しべを枯らして、実りの秋は無い。霜は春と秋の違いで「諸刃の剣」である。

霜の秋の功徳を承知している農家は、遅霜対策として徹夜で枯れ木や古タイヤを燃やして気温を上げ、霜を追い払うのである。経験から来た生活の智恵である。現在は、政府の援助で、高い鉄柱の上部に扇風機を設置して、暖気を下降させ、霜害を防止している。政府は人為的な悪事ばかりでなく、自然に対する弱者を救済する善事もしている。政府も「諸刃の剣」である。政府の最大の悪事は、物・金万能の経済体制に迎合した格差社会に誘導し、結果、田園から若者が消え、田舎を老人集落にしたことである。

利害得失を離れて霧を見ると、華やかな夏を思い出し懐かしみ、来るべき厳しい冬の生活を思う、日本人の情緒の心を育む小道具である。心の癒しを求めて来訪する観光客は、霧の創る景観に感動する。両刃の剣が鞘に納まった平和な時である。

「諸刃の剣」の天然自然の2面性に挑戦する智恵を獲得するのが、人生のテーマかもしれない。

写真は大歩危吉野川の川霧。祖谷渓の「空音遊」のノリさんHPより無断借用しました。ノリさん許して下さい。


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