風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

おしどり夫婦・ライオン夫婦 95号

2007年06月05日 06時46分08秒 | 随想
高齢となり人生の悩みも有り、寺の草刈でもと思った時期があったが、適当な寺がなかったので、飯田市の援農ボランティアに興味本位で参加したのが、一年前のことである。
理工系の出身であるが、機械文明そして物・金万能文明に疲れて、還暦目前から農学系に変身したのである。4日間農家に泊り込み、寝食を共にして、果樹園の農作業を手伝う過酷な労働である。

80歳を超えるお爺さん・お婆さんが一生懸命に労働する姿を見ると「老人には負けられない」という闘争心が芽生え、やる気が出るのである。80歳は未知の領域であるが、お爺さん・お婆さんの生き方が参考になり、先生・先達である。会社勤めの時は「まだまだ若いもんには負けられん」というのが闘争心の火種であり、労働のモチベーションであった。競争社会に適合する人間として訓練されたので、絶えず競争相手を探さなければならない憐れな存在である。若いもんやお爺さん・お婆さんがいなくなった時の競争相手は誰になるのだろう。その時は「もう一人の私」との熾烈な戦いになる。

夕食後の団欒で、旅行談義をした時に発見したことがある。都市のサラリーマン夫婦が何年ぶりかの温泉旅行の二人旅を話題にしたのであるが、田舎の夫婦の話は、農業仲間の男同士の旅の話・青年団の外国旅行の話・老人会や婦人部の旅の話など、夫婦別々の旅の話が多いのである。四六時中、共に農作業で顔を合わせて、会話しているので、一人旅の話題が新鮮な様である。田舎と都市では正反対の楽しみなのである。田舎の農家の夫婦はおしどりのツガイで・都市のサラリーマンの夫婦はライオンのツガイの様である。ライオンは普段は別々の行動をし、繁殖の時期に会うのである。

この事は農耕民族であった日本が、戦後、欧米の真似をして狩猟民族に変身してしまった為なのだろう。善悪は解からないけれども、田舎志向の思いの強い私のDNAには遠い先祖が百姓であった遺伝子が組み込まれている。先々代が廻船問屋で、母方は陸軍中将、先代は教師・専業主婦、現代は共稼ぎ会社員であるから、隔世遺伝で百姓のDNAが目覚めたのである。そして人間は何でも出来るのであるが、どれを選択するかは心の発露である。

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