カーナビは人間の奴隷 ４７６号

名古屋高速道路のトール・コレクターの仕事の最後の勤務を大過なく勤め、契約期間満了の円満退職である。８年間・９６０回の勤務で様々な喜怒哀楽の人生模様を知る貴重な体験だった。

最近の奇妙な体験がある。上品なお嬢様が料金所で停車する。

「カーナビに従って、車を走らせたら此処に着きました。如何しましょう？」
「有料道路ですから通行料を払っていただけますか」

１万円で支払う金満家のお嬢様の様である。７５０円。

「松坂屋へはどの様な経路がよろしいのでしょうか？」
「東別院から真直ぐです」
「あら、カーナビは錦橋から出る案内をしていますよ、可笑しいですね」

良家のお嬢様！貴女は機械と人間とどちらを信用なさるのですか？
定年間際の禿老人は機械より劣っているのですか？

喜怒哀楽の人生、天寿を全うする事無く、自ら生命を絶つ人がいる。

断崖絶壁や深山幽谷の観光地。死の恐怖を簡単に体験できる。反面、死を願望する人間には「確実に死ねる場所」である。

栃木県中禅寺湖の華厳の滝、名峰富士の青木が原樹海、高知は足摺の岬、越前蟹の東尋坊、伊豆大島の三原山。

悪魔の人間がカーナビに死出の経路をプログラムしたら確実に不慮の死を遂げる。

他人に寄り掛かる処世術の危険性よりも、もっと危険なのは機械及びそれを造った貨幣の完全信頼である。

旅をするならば事前に複数の情報を収集し、自己責任で取捨選択し確固たる信念を持って行動することが鉄則である。

機械・金を人間より優先する世相が、振り込め詐欺を成立させる温床である。重要視することは確実に振り込む機械でなく、振り込む先が本当に自分の息子なのかどうかということである。木を見て森を無視するなら、幸せの青い鳥も無視する。

カーナビを信頼する良家のお嬢様、貴女を美しいと賞賛するのは人間ですよ！！！。