風来坊参男坊

思い付くまま、気が向くまま、記述する雑文。好奇心は若さの秘訣。退屈なら屁理屈が心の良薬。

夜間飛行 71号

2007年05月02日 16時45分28秒 | 随想
内田幹樹の「機長からアナウンス(原書房)」を古本屋でみつけ、面白く読んだ。109頁に衝撃的な記述を発見した。冬空の雪雲が重く垂れ込めた日の、ジェット旅客機の雲上夜間飛行の光景描写である。

「関西空港から仙台へ向かって雲の上を飛んでいた時のことである。雲がぼんやり光って、あの下あたりが名古屋であることがわかる。その灯りを最期に、これから先は日本アルプスに入っていくために真っ暗になるはずだった。ところがしばらく行くと、雲が一部分だけ欠けていてぽっかり穴があいている。上から見ると細長い谷底が異常に明るくなっている。」

いつも地上からの風景を見慣れている人間には、珍しい景色である。好奇心旺盛な定期旅客機のベテラン機長だから気が付いたのである。そして発想が面白い。先に進もう。

「ナイタースキー場だった。ゲレンデのナイターの光にそって雲がなくなっていたのだ。雲頂から断崖絶壁のごとく切り立った雲の谷底に、スキー場のライトが並んでいる。ライトの温度で、ゲレンデの上空だけ雲が形成されないのだ。雲が消えてしまうほどの温度変化をもたらすエネルギーが使われている。スキー場に雪が無い、雪が降らないとニュースで見たことがあるけれども、そりゃあ、雲が無ければ雪も降らないわけだ」

スキーは昼間に楽しみ、夜は温泉にでも入り、食事を楽しみ、早寝したら如何だろう。明日、日の出と共に、スキーを楽しめばよいだろう。自然の贈り物の雪上を、天然の支配者である太陽の下で滑るからスキーというのである。人工雪とカクテル光線の下での遊びはスキーと言わず、キライと言うのである。

飛行機という道具で、絶えず高所から人間世界を眺めていると、仏様と同様に人の愚かさが見えるようである。2006年の暮れに極楽に旅立ったようであるが、一人乗りの飛行機を操縦して無事着陸したことだろう。



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