病院でクスリをもらっての風邪が治る、治ったは、本当に治っているのか?という素朴な疑問。
現代日本で生活する大多数の日本人は、風邪をひけば病院へ行ってクスリをもらって飲んで、熱が下がったり咳が止まったりすれば、それで風邪が治ったとしている、と思っている。
しかしながら、それは本当に治っている、治療する側からいえば治せているといって良いのだろうか?
例えば、スコットランドで生活していた知人は、向こうのお医者様は、風邪で受診しても、クスリも出さないで「風邪だからゆっくり休んでください!」で終わりである、と言う。
これは、スイス生活の長い知人からも同様の話を聞いたことがある。要するに、日本の風邪の治療というものは、決してグローバル・スタンダードでは無い。(もっとも、手元にある『暮らしの医学 第81版(改訂第9版)』(大門出版 昭和63年3月22日発行)の前書きには、「近ごろ感ずることですが、早く早くが世の中のクセになって、病気についてもせっかちな人が多いようです。
自分の都合に合わせて無理やり症状を抑え込みたがる。たとえば熱ひとつでも2日と待てない。もし7度5分の熱なら1日で熱を落としてもいいかもしれません。しかし、38度代なら2〜3日、39度なら4〜5日は休んだ方が良い病気の内容があるはずです。
しかし、何が何でも熱さえあれば落とせばいいという考え方がはびこって、1日で落としたがる。解熱剤で熱が降りると、すぐに働きだしたりする。病気が治っているわけではないからまたこじれる。」と、現在の日本のスタンダード治療とは違ったあり方が、しっかりと述べられてはいるのだが......。)
とはいえ、現在の日本のスタンダードな治療としては、風邪をひけばクスリを飲んで症状を抑え込むのが(熱には解熱剤、咳や痰には咳止めや去痰剤というのが)当たり前である。
ではそのことの何がまずいのであろうか?
端的には、これは特殊的治療・一般的治療ということに関わる、あるいは病の現象と実体の問題と言ってもいいが、そのことを無視するがゆえの、誤謬であると思える。
どういうことかといえば、病が治ったと言った場合には二重性がある。一つは実体としての病が治って、病が治っていると現象しているもの。(これが本当の治ったである。)
もう一つは、実体としては病が治っていないにもかかわらず、現象としては熱もなく咳も止まりという、風邪が治ったといわれる状態になっている場合である。(『弁証法はどういう科学か』(三浦つとむ 著)の読者であれば、「あーあれか!」と、泥棒と警官の絵を思い浮かべられることと思う。)
これは当然に健康な状態を考える場合にもまた同様に、形の上では健康に見えても、その内実・実体は風邪状態の場合と見た目に健康であって、かつ実体も健康であるという場合があるのだが......。
それはさておき、要するに、現在の日本スタンダードの風邪の治療とされているものは現象としてのでしかなく、本当に(実体までもが)治っているか否かは、患者任せというか、患者次第という面が大きいのだと、治療の二重性(特殊的治療・一般的治療)が一般的ではない現在、そう思わざるを得ない。
これは自身の単なる杞憂であればいいのだが......。