毎日毎日暑い日が続く。
暑い、というだけで、そこそこイライラが募る人たちも大勢いる。
そんな人たちの矛先が向けられてしまう職業に息子は携わっている。
エレベーターのメンテナンス・・・
暑い中、外からビルやマンションに入った時にエレベーターが点検で停まっている。
階段を上らなければならない。
この暑いのに何やってるんだ!
舌打ちをされたり、罵られたり・・・で、息子もへこむ。
彼ら作業員は、エアコンの無い場所での作業がほとんど。
夏は暑いし冬は寒いし・・・
けれども、エレベーターを使う人たちの安全のために日々頑張っている。
毎日、ヘトヘトで帰ってくる息子だが、ときどきちょっとうれしそうなときがある。
「お疲れ様」の気持ちをいただいたときだ。
そんなときは、その嬉しい話をきかせてくれる。
先日、某大使館で点検した時のこと。
作業の開始時間になった時、大きな荷物を搬入しようとしている人が来た。
おそらく大使館の関係者であろうその人が、荷物の搬入のために何度か往復するのを待っていて、作業が遅れてしまった。
何とか終わらせて片付けていた時、両腕一面に入れ墨のある、大きな外国人の男性がこちらに走ってくる。
なにか粗相があったのかと、先輩と顔を見合わせてびびっていたら、
冷たいお茶を2本差しだして、日本語で「おつかれさま」と言ってくださった。
またある時は・・・
ものすごく暑い日に、作業を終えて帰ろうとしたら、その建物のオーナーの年配の女性に呼び止められた。
おばあちゃんくらいの年齢の女性は、息子におもむろに300円を手渡したという。
「暑いのにご苦労様。冷たいのにものを出してあげようと思ったらお茶しかなかったから、これでそこの自販機で好きな飲み物を買いなさい」
「いえいえ、大丈夫です」と辞退したけれど、いいからいいから、と手に握らせてくれたので、飲み物を買わせてもらったんだ、
と嬉しそうに話す。
嫌な顔をされることの多い仕事だけれど、時々の感謝とねぎらいの言葉に救われているようだ。
就職してから1年半が過ぎた。
コロナ禍で、入社式もなく、研修も中途半端。
歓迎会も忘年会もなにも経験することなく、もちろんテレワークになることもなく毎日が過ぎてゆく。
それでも日々頑張っている息子を応援したい。
幸いにも職場の人間関係には恵まれているみたいで、そこはちょっと安心。
暑い中、不規則な時間での勤務で身体を壊さないか、だけが母は心配なのです。
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