黒ボコ岩ではしゃいだ後、いよいよ弥陀ケ原へ。スタート時点で奥様たちには『膝の状
態で途中棄権するかもしれませんが、出来たら弥陀ケ原からの御前峰は見てみたい』と
言っていたので、取りあえず第一段階クリア。
植生保護のために造られた木道が緩やかな台地の中に続いている。前回来た時も山頂から
の景色よりも、この木道の景色が記憶に残っていた。
この弥陀ケ原や御前峰周辺の地形が緩やかな部分では真夏でも雪渓残り、無雪期間が短
い為、ハイマツは育ちにくく草本植物などの雪田植物が育つそうだ。
弥陀ケ原の台地から室堂への最後の登りの五葉坂は、先ほどまでの歩きやすい木道と比
べると、岩がゴロゴロした歩きにくい登りだ。
この辺りは斜度もあるので雪が残らずハイマツ(五葉松)が育っているためその名が付
いたようだ。道の両脇にそのハイマツが迫り道幅がなく、離合するのに時間がかかる。
それでも20分ほどで五葉坂を登り切り、正面に見える室堂ビジターセンターに着いた。
時間は11時過ぎ、予想以上に時間がかかっている。計画では御前峰でお弁当を広げる予
定だったが、ビジターセンターの北側のベンチでお昼ご飯にする。
お昼ご飯の後、さっそく御前峰へとあっちゃんと私はザックを置いて登って行く。その
前に白山比咩神社の祈祷殿を参拝。参拝した後はその奥宮の横を通って御前峰へと向か
うと、ここからの道でもお花畑が広がっていた。
室堂の平坦地が終わると石畳の登坂が続いて行く。東の遠くに見える雲の上に頭を出し
た山はどこの山だろうか?
途中で3年生くらいの男の子と、保護者らしき男性たちとすれ違う。その男の子を見る
ともう半べそをかいている。見かねたあっちゃんが声をかけてなだめるが、笑い顔には
ならず『がんばって!』と声をかけて別れる。
途中で神々の生まれる場所・天津神の住まう場所の高天ケ原の道標が立つ場所に着いた。
見上げると御前峰が目の前に近づいている。振り返ってみると室堂の東の窪地にはまだ
雪が残っていた。
室堂から40分を過ぎてやっと白山奥宮の社殿が見え始め、ひと踏ん張りで大きな石垣
に囲まれた奥宮に着いた。
その奥宮と御前峰は目と鼻の先。山頂碑で写真を撮る。北側正面には大汝峰とその右手
には剣ケ峰が見える。前回はこの山頂から下ってお池巡りをした。火山湖の点在する火
口は、山頂までの風景とは一変して火山らしい、白っぽい火山灰や青灰色の巨石の中の
道が続いている。今日は時間的に余裕ないのでこのまま折り返して下山していく。
奥宮の社殿が雲に浮かんでいる。そして360度雲の海が広がっている。
時間は予定を1時間ほど過ぎていた。南を見るとどんどんガスが流れ登ってきている。
ここまでで景色を存分に楽しめたから、下りは別段ガスがかかっても返って涼しくてい
いかもしれない。
ビジターセンターまで降りて食堂で一休み。喉を潤し一息つくがまだこれから1000m
以上は下って行かなければならない。今のところまだ膝は大丈夫だったが、腰掛けて靴ひ
もを直そうと屈むと足が攣りそうになった。
歩きづらい五葉坂を下り弥陀ケ原へ差し掛かるまでの間、登りでも一緒になった若いカッ
プルと話をしながら歩いて行く。
途中でエコーラインから下って行くというカップルと分かれ弥陀ケ原へ。今日は行動時
間が長い分歩くペースが似通っている人達とは、途中で抜いたり抜かれたりして度々顔
を合わせるので、その都度挨拶をして話をする。
弥陀ケ原の端部になる黒ボコ岩に近づくにつれ、次第にガスが濃くなってきた。
黒ボコ岩から観光新道へと入ると最初は緩やかな稜線の下のトラバース道。その山肌に
はイブキトラノオがゆらゆらと風に揺れている。薄紫のタカネマツムシソウとハクサン
シャジンが目立ち始める。
タカネマツムシソウ
ハクサンシャジン
石鎚山系でも見ることのできるタカネマツムシソウだけれど、これだけ群生している山
は四国にはないと思う。
下って行くにつれてガスが益々濃くなっていく。前を歩く奥様たちの姿が直ぐに見えな
くなる。この辺りが『馬のたてがみ』と呼ばれる場所で東から南にかけて広がる雄大な
景色を見ながら歩けるはずだが、今日は残念ながらガスのお陰で何にも見えない。
黒ボコ岩から50分ほどで殿ケ池避難小屋が見えた。小屋の横のベンチで小休止。ガス
のお陰で気温はそれほど高くは感じなかったが、念のため経口補水のゼリーを口に入れる。
クガイソウ
殿ケ池避難小屋から道は少しづつ険しくなってくる。七つ坂辺りの尾根筋も乾いた土と
石が足を滑らせる。
正面のゴツゴツした岩が餓鬼ヶ咽(ガキガノド)。これも約10万年前の白山火山の噴出
物のようだ。奇妙な形はその噴火の際やその後の浸食によって造り出されたと云われて
いる。
そんな大岩の足元にはシラタマノキやハクサンシャジンの白花など、砂防新道とはまた
違った花が咲いている。晴れていればもっと遠くまで見えただろうが、ここまでも砂防
新道以上のお花畑が広がっていた。
ハクサンシャジンの白花
シラタマノキ
岩が重なりその下を通り抜け出来る仙人窟(センニンイワヤ)を通る。この仙人窟の南
側は、昭和9年7月の大雨で甚大な被害を及ぼした大規模な崩壊の『別当大崩れ』があ
った場所だ。400mmを超す豪雨と,それによって残雪から溶けだした水によって,推定
1億立米に達する崩壊土砂が流れ出し,土石流となって下流に押し寄せ、市ノ瀬地区では
12mもの河床に土砂が堆積したと云う。この土石流による被害は死者・行方不明者112名
、流出家屋172戸、流失などの家屋437戸,埋没耕地2113町歩など,石川県史上最大規模
の災害だったそうだが、ここもガスで周りがほとんど見えない。
仙人窟を過ぎると道はどんどん険しくなってくる。場所によっては濡れて一段一段の段
差があって、とにかく転倒しないように注意深く降りていく。ただその段差が膝に堪え
てじわじわと痛み始めた。
別当坂分岐からも荒れているうえに急坂は続き油断ができない。朝スタートしてからす
でに11時間を経過しようとしている。ここ最近としては最長時間となる。健康時でも
疲れが出ているのに、ましてや膝にはかなりの負担になっている。この後炎症を起こし
て水がたまらないか心配になってくる。
後ろからこのコースで初めて男性二人が追い越していく。『こんにちは!』の挨拶の後、
お互いに『キツイですね』と声をかける。
別当坂分岐から1時間以上歩いてやっと別当登山センターに降り立った。くたくたにな
りながら登山センターのベンチに腰掛けると、目の前に御前峰の下ですれ違った小学生
が座っていた。さっそくあっちゃんが『よくがんばったね!』と声をかけると、下山し
てほっとしているのか少し笑顔になった。
センターのトイレの中にある更衣室で窮屈な着圧タイツを脱いで、駐車場まで戻る。
スタート時点でほぼ満車状態だった駐車場も車は疎らで、この時間にまだ停まってい
る車の人は恐らく室堂で泊まりの人たちだろう。
ガスのせいもあって薄暗くなった駐車場で着替えを済ませて、今日の宿へと車を走ら
せる。
YAMAPとカシミールでは若干データーが違っていて、カシミールでは沿面距離が
15.4km。累積標高差が1,670mとなっていた。行動時間は12時間20分。欠けた半
月板を抱えて自分でもよく歩けたと。
ホテルに着き近くの居酒屋での乾杯の生ビールがこの夏一番美味しくいただけたのは
言うまでもない!
他に見かけた花たち
態で途中棄権するかもしれませんが、出来たら弥陀ケ原からの御前峰は見てみたい』と
言っていたので、取りあえず第一段階クリア。
植生保護のために造られた木道が緩やかな台地の中に続いている。前回来た時も山頂から
の景色よりも、この木道の景色が記憶に残っていた。
この弥陀ケ原や御前峰周辺の地形が緩やかな部分では真夏でも雪渓残り、無雪期間が短
い為、ハイマツは育ちにくく草本植物などの雪田植物が育つそうだ。
弥陀ケ原の台地から室堂への最後の登りの五葉坂は、先ほどまでの歩きやすい木道と比
べると、岩がゴロゴロした歩きにくい登りだ。
この辺りは斜度もあるので雪が残らずハイマツ(五葉松)が育っているためその名が付
いたようだ。道の両脇にそのハイマツが迫り道幅がなく、離合するのに時間がかかる。
それでも20分ほどで五葉坂を登り切り、正面に見える室堂ビジターセンターに着いた。
時間は11時過ぎ、予想以上に時間がかかっている。計画では御前峰でお弁当を広げる予
定だったが、ビジターセンターの北側のベンチでお昼ご飯にする。
お昼ご飯の後、さっそく御前峰へとあっちゃんと私はザックを置いて登って行く。その
前に白山比咩神社の祈祷殿を参拝。参拝した後はその奥宮の横を通って御前峰へと向か
うと、ここからの道でもお花畑が広がっていた。
室堂の平坦地が終わると石畳の登坂が続いて行く。東の遠くに見える雲の上に頭を出し
た山はどこの山だろうか?
途中で3年生くらいの男の子と、保護者らしき男性たちとすれ違う。その男の子を見る
ともう半べそをかいている。見かねたあっちゃんが声をかけてなだめるが、笑い顔には
ならず『がんばって!』と声をかけて別れる。
途中で神々の生まれる場所・天津神の住まう場所の高天ケ原の道標が立つ場所に着いた。
見上げると御前峰が目の前に近づいている。振り返ってみると室堂の東の窪地にはまだ
雪が残っていた。
室堂から40分を過ぎてやっと白山奥宮の社殿が見え始め、ひと踏ん張りで大きな石垣
に囲まれた奥宮に着いた。
その奥宮と御前峰は目と鼻の先。山頂碑で写真を撮る。北側正面には大汝峰とその右手
には剣ケ峰が見える。前回はこの山頂から下ってお池巡りをした。火山湖の点在する火
口は、山頂までの風景とは一変して火山らしい、白っぽい火山灰や青灰色の巨石の中の
道が続いている。今日は時間的に余裕ないのでこのまま折り返して下山していく。
奥宮の社殿が雲に浮かんでいる。そして360度雲の海が広がっている。
時間は予定を1時間ほど過ぎていた。南を見るとどんどんガスが流れ登ってきている。
ここまでで景色を存分に楽しめたから、下りは別段ガスがかかっても返って涼しくてい
いかもしれない。
ビジターセンターまで降りて食堂で一休み。喉を潤し一息つくがまだこれから1000m
以上は下って行かなければならない。今のところまだ膝は大丈夫だったが、腰掛けて靴ひ
もを直そうと屈むと足が攣りそうになった。
歩きづらい五葉坂を下り弥陀ケ原へ差し掛かるまでの間、登りでも一緒になった若いカッ
プルと話をしながら歩いて行く。
途中でエコーラインから下って行くというカップルと分かれ弥陀ケ原へ。今日は行動時
間が長い分歩くペースが似通っている人達とは、途中で抜いたり抜かれたりして度々顔
を合わせるので、その都度挨拶をして話をする。
弥陀ケ原の端部になる黒ボコ岩に近づくにつれ、次第にガスが濃くなってきた。
黒ボコ岩から観光新道へと入ると最初は緩やかな稜線の下のトラバース道。その山肌に
はイブキトラノオがゆらゆらと風に揺れている。薄紫のタカネマツムシソウとハクサン
シャジンが目立ち始める。
タカネマツムシソウ
ハクサンシャジン
石鎚山系でも見ることのできるタカネマツムシソウだけれど、これだけ群生している山
は四国にはないと思う。
下って行くにつれてガスが益々濃くなっていく。前を歩く奥様たちの姿が直ぐに見えな
くなる。この辺りが『馬のたてがみ』と呼ばれる場所で東から南にかけて広がる雄大な
景色を見ながら歩けるはずだが、今日は残念ながらガスのお陰で何にも見えない。
黒ボコ岩から50分ほどで殿ケ池避難小屋が見えた。小屋の横のベンチで小休止。ガス
のお陰で気温はそれほど高くは感じなかったが、念のため経口補水のゼリーを口に入れる。
クガイソウ
殿ケ池避難小屋から道は少しづつ険しくなってくる。七つ坂辺りの尾根筋も乾いた土と
石が足を滑らせる。
正面のゴツゴツした岩が餓鬼ヶ咽(ガキガノド)。これも約10万年前の白山火山の噴出
物のようだ。奇妙な形はその噴火の際やその後の浸食によって造り出されたと云われて
いる。
そんな大岩の足元にはシラタマノキやハクサンシャジンの白花など、砂防新道とはまた
違った花が咲いている。晴れていればもっと遠くまで見えただろうが、ここまでも砂防
新道以上のお花畑が広がっていた。
ハクサンシャジンの白花
シラタマノキ
岩が重なりその下を通り抜け出来る仙人窟(センニンイワヤ)を通る。この仙人窟の南
側は、昭和9年7月の大雨で甚大な被害を及ぼした大規模な崩壊の『別当大崩れ』があ
った場所だ。400mmを超す豪雨と,それによって残雪から溶けだした水によって,推定
1億立米に達する崩壊土砂が流れ出し,土石流となって下流に押し寄せ、市ノ瀬地区では
12mもの河床に土砂が堆積したと云う。この土石流による被害は死者・行方不明者112名
、流出家屋172戸、流失などの家屋437戸,埋没耕地2113町歩など,石川県史上最大規模
の災害だったそうだが、ここもガスで周りがほとんど見えない。
仙人窟を過ぎると道はどんどん険しくなってくる。場所によっては濡れて一段一段の段
差があって、とにかく転倒しないように注意深く降りていく。ただその段差が膝に堪え
てじわじわと痛み始めた。
別当坂分岐からも荒れているうえに急坂は続き油断ができない。朝スタートしてからす
でに11時間を経過しようとしている。ここ最近としては最長時間となる。健康時でも
疲れが出ているのに、ましてや膝にはかなりの負担になっている。この後炎症を起こし
て水がたまらないか心配になってくる。
後ろからこのコースで初めて男性二人が追い越していく。『こんにちは!』の挨拶の後、
お互いに『キツイですね』と声をかける。
別当坂分岐から1時間以上歩いてやっと別当登山センターに降り立った。くたくたにな
りながら登山センターのベンチに腰掛けると、目の前に御前峰の下ですれ違った小学生
が座っていた。さっそくあっちゃんが『よくがんばったね!』と声をかけると、下山し
てほっとしているのか少し笑顔になった。
センターのトイレの中にある更衣室で窮屈な着圧タイツを脱いで、駐車場まで戻る。
スタート時点でほぼ満車状態だった駐車場も車は疎らで、この時間にまだ停まってい
る車の人は恐らく室堂で泊まりの人たちだろう。
ガスのせいもあって薄暗くなった駐車場で着替えを済ませて、今日の宿へと車を走ら
せる。
YAMAPとカシミールでは若干データーが違っていて、カシミールでは沿面距離が
15.4km。累積標高差が1,670mとなっていた。行動時間は12時間20分。欠けた半
月板を抱えて自分でもよく歩けたと。
ホテルに着き近くの居酒屋での乾杯の生ビールがこの夏一番美味しくいただけたのは
言うまでもない!
他に見かけた花たち