KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

そうだカタクリの花を見に行こう!

2022年04月29日 | 四国の山
2週続けて山歩きをお休みしたら、お山はいつの間にか花の季節に移っていた。

といっても花音痴。毎年この時期はカタクリの花とアケボノツツジを

見に出かける程度のワンパターン。と言う事でまずはカタクリの花の鋸山へ。

でもいつもの林道七々木線の登山口から往復したのではそれこそワンパターンなので、

少し趣向を変えて、北側の山裾の四国中央市寒川から登れないかと考えてみた。

さっそくネットで検索してみると中曽根からの翠波峰、野田からの赤星山

登っている人は結構いるのだが、寒川町から鋸山に登っている人が見当たらない。

地形図では新長谷寺からの尾根筋と鋸山と七々木山の中間辺りから

北に向かって破線が続いている。登りは林道観音谷線を歩くことになるが、

新長谷寺をスタートしてぐるっと周回すれば、距離も高度差もそこそこあって練習になる。


練習と言うのは間もなく再開する『線で繋ぐ石鎚山~剣山』で当面の課題となっている

野地峰~兵庫山の区間の練習。この区間を2回に分けて歩くか、一回で周回するか、

色々考えているのだが、エントツ山さんにアドバイスを求めると、さっそく検証歩きをしてくれて、

兵庫山の北側からのアプローチも有りだと、わざわざ実際に歩いてくれて教えてくれた。

この区間、登岐山のスズタケ藪もさることながら南側の白滝の里山村や東側の桑ノ川林道

登山口・下山口にするのが周回コースとしては一番単純なコースなのだが、

車をデポして、さらにデポ車の回収にとにかく時間がかかる。

山歩きにはめっぽう強いあっちゃんは車に酔うという弱点がある。

前回、野地峰へ白滝から登った時も山間部のくねくね道に車酔いをしてしまった。

もし北側からのアプローチと周回が可能になれば、この区間を一回で歩けて、

車の移動も恐らく苦にならないだろうと思われる。但し、法皇湖の落合橋を

スタート地点とするとその高度差と歩行距離はけっこうなものになる。

エントツ山さんからも『10~11時間はかかるよ!』と言われている。

そこで今回それに近いコース(高度差と歩行距離)で歩いてみて、奥様たちと

一緒に雰囲気や感触をつかんでみる練習になるかと思った次第だ。

登岐山周辺の計画図



新長谷寺の仁王門の前は大きなイチョウの木とトイレがあり、その脇の駐車場に

車を停めてスタートする。計画ではすぐ東側の尾根の破線を登ってみようと

思っていたのだが、取付きが判らなかったのと、まだ昨日の雨で草木が濡れているので

取りあえず登りはこのまま林道観音谷線を歩いてみることにする。







仁王門の前ではお寺の方が時間をかけて丁寧に石段を掃いていた。

事前に調べたところ、この林道を歩くと鋸山登山口まで約7.5kmの距離になる。

しかもほぼアスファルトの林道歩きとなるが、まぁ取りあえずのんびり歩いて行きましょう。

仁王門から少し歩くと銅山川疏水長谷川水路橋がある。

この宇摩地方は瀬戸内海と急峻な法皇山脈に挟まれ平野部が少なく、降った雨は直ぐに

瀬戸内海に流れ込んでしまい、用水不足で干ばつの多発地帯であったのを、山を越えた

銅山川からトンネルを貫き農業用水として利用している。その疏水が長谷川に架かる水路橋なのだ。







道の脇には所々に石仏が祀られている。この林道には新長谷寺を起点に両国霊場の1番から

15番までの石仏があるらしいが、そこまでの数は見受けられなかった。

奥様たちはあちらこちらで咲く小さな草花を眺めながら歩いている。
















しばらくの間は長谷川に沿って道が続いている。雨の後、川の水は勢いよく流れている。

湿った道をサワガニが横断していく。











川の水の音が聞こえなくなると周りは杉林になり、足元は未舗装路になる。

時折見える山の上はまだガスがかかっていて、重苦しい雰囲気が漂ってくる。

お目当てのカタクリの花が開いているかが気になってきた。







山の上はそんな状態だが、林道から北側を見ると木々の隙から麓の街は見え始めた。

このまま気温が上がって山の上のガスが流れてくれればいいのに。














道が未舗装から舗装路になる。気にせずそのまま舗装路を少し直進してしまうが、

スマホで確認すると翠波高原へ向いて歩いている。

直ぐに引き返して分岐から未舗装の道を歩いて行く。地形図を見てみるとこの辺りは、

確かに線が複雑に交差しながら、あちらこちらに向かって続いている。










途中から見えた山の上はガスで真っ白だったが、少しずつ流れている雰囲気がする。

鋸山に着くころには青空が期待できるかもしれない。その白いガスを背景にして

新緑の明るい緑が輝いていて眩しく見えた。




未舗装路からまた舗装路へと飛び出した。この道が林道法皇線となる。

法皇山脈始めとする法皇トンネル・法皇スカイラインと法皇を冠にした名前が多いが

その名前の由来については、後白河法皇の三十三間堂建立時に使われた木材が

優秀であったため、その産地である山に法皇の名を付ける許しがあったと言われているそうだ。










その法皇線を東に向かって歩いて行くとガードレールに沿って、何台もの車が駐車していた。

ここから今度は林道七々木線の未舗装路へと歩いて行く。

いつもは翠波高原からアスファルト道をここまで車で来て、最後に登山口まで未舗装路を

車で走って行くのだが、今日は初めて歩いて行く。










新長谷寺から林道観音谷線を歩いて約8km。時間にして2時間30分で登山口に着いた。

登山口の手前には車が2台停まっていたが、その脇の木に新しく寒川山と書かれたプレートがあった。

あっちゃんに『YAMAPのポイントがひとつあるけど登りますか?』と聞くと

『もちろん!』と即返事が返ってきた。小さなピークを2回程越えると四等三角点 寒川山










寒川山からは直ぐに引き返して登山口へ。そしていつもの様に急登が始まる。








林道歩きとはいえ、さすがに8km近くを歩いてきた後の急登は堪える。

しかも3週間開けての本格的な山道。左の股関節辺りと太腿が張り始めた。

奥様たちはその林道歩きなどどこ吹く風。今そこから歩き始めたようにして

いつものように急登をグイグイと登っていっている。










急登が終わると新緑のプロムナード。その新緑の中、姿は見えないがあちらこちらで鳥が

鳴いている。今どきの事だから、鳥の鳴き声で種類が判るアプリもあるんじゃないだろうか。

今度探して見ようかな?といっても花の名前と一緒で、いつもで立っても憶えられない

ような気がしないでもない。










登山口から30分弱で鋸山山頂に着いた。山頂といっても周りは木々に囲まれて眺望はない。

ただ少し手前の北側の大岩からは眼下に眺望が広がっている。










大岩から山頂に戻りその先にあるいつもの大岩まで歩いて行く。

この大岩は鋸山では一番のビューポイント。四国中央市から土居町までの

東予の街並みと瀬戸内海の眺めが最高な場所だ。大抵ここで皆さん一息入れている。

時間は12時前。丁度いい時間なので眼下の景色を眺めながらお昼ご飯にする。

















三人でのんびりとお昼ご飯を食べていると、女性が独りやってきて『ご一緒してもいいですか?』と。

お話を聞くと高知の方で、所属している山の会の鋸山の山行が昨日だったが、

自分は参加できなかったので、今日一人でやって来たそうだ。七々木山まで歩いて

戻ってきたと言う。往路ではガスの中でここからの景色は全く見えなかったそうだ。

やはりリーダーの日頃の行いがいいからだろう。陽が当たってカタクリも期待できそうだ。













春の日差しは柔らかく瀬戸内海から吹き上げてくる風も湿気もなく心地いい。

このまま昼寝でもしたい気分だが、ここからが今日の本命。カタクリの花見物もあるが、

地形図にある破線の道が果たしてあるかどうか?取りあえず昼食を終えて先ずは群生地へと向かう。

群生地の道の両脇には植生保護のためテープが張られていていたが、足元で咲いている花もある。

陽が当たり反り返った薄紫の花弁。スプリング・エフェメラルの沢山ある中の花では

一番『春の妖精』の言葉が似あう花だと思う。待ちわびた春が来たのが嬉しくて

みんなで小躍りしているようにも見える。
















ただいつもと比べて咲いている花の数が少ないように思った。所々にポツリポツリと

いった雰囲気で、群生地といった感じは全くしなかった。

春の妖精の写真撮影会を終えた後、七々木山に向かって歩いて行く。

ツツジの花は散り始めていたが、それでも芽吹いた木々の春の彩が気持ちいい!










そんな春の道を過ぎると雰囲気はガラッと変わって杉林の中の道になる。

途中から登山道から外れて、GPSを見ながら北に向かって続いている破線を辿って下って行く。

最初は緩やかだった斜面も次第に斜度を増してきたが、枝打ちで積もった枯れ枝と

柔らかい表土に足が食い込み、適度にグリップが効いて思ったよりも下りやすい。










杉林の中に破線の道は無かったが、それでも少し下には濃い実線が地形図には載っている。

このままその道に向かって降りて行けば何とかなるだろうと考えながら下って行く。

植栽地の中には縦横に作業道があり、その内に轍になったような道が下手に続いていた。

おそらくこれが破線の道だろうが、荒れていて歩きづらいので、途中からは窪んだ

道ではなく、その脇の土手になった所を下って行く。













等高線に沿った横の作業道を何度か横断しながら下へ下へと下って行く。

急斜面を岩や枯れ枝・伐採木を避けながらなので、地形図では裾野へ真っ直ぐに続く破線で、

下りの道としてはショートカットなのだが、予想以上に時間がかかっている。













すると少し下に道が見えた。ただ斜面はさらに角度を増していて、比較的まだマシな

沢筋に降りて行くしかない状態になってきた。濡れた岩がゴロゴロする沢筋を

とにかく転ばないように足元に注意しながら下って行っていたが、

左足を前に出し、その後脇の岩の上に右足を載せるとその岩がズルっと滑って

左足の上に載っかかってきた。左足首がその岩の下に埋まってしまって抜こうとしても

土が柔らかく、岩の重みで埋まって行くばかり。ストックで何とか体を支えながらも

身動きが出来ない状態が続く。すると後ろにいたルリちゃんが『ちょっと待っててよ!』と

言いながら助けに来てくれているが、とにかく岩と柔らかい斜面で直ぐには来れない。

なんとかすぐ傍まで来てくれたが、持ち上げられるような岩の大きさではない。

すると急に岩の重さが倍近くになった。前を向いたままで振り返り見ることもできないが、

どうやらルリちゃんが判らず岩の上に載ったようだ。堪らず『痛い・痛い!ルリちゃん、

岩の上に載っています!』と悲鳴をあげるが、ルリちゃんも直ぐに体制を戻せるような

状態ではない。その後降りてきたあっちゃんが埋まった登山靴の下の石を避けてくれ

始めると、少しずつだが足首が動き、何とかその岩から埋まった足を抜くことができた。

自分独りではどうにもできず、斜面で前に向いたまま後ろ足が動かず、そのまま

力尽きて倒れて足が折れるかと思ったが、『ルリちゃんに石の拷問を受けている

みたいだった』と冗談を言って事なきを得た。




足を抜いた後下に崩れた岩



幸い足の痛みもなく、そのまま沢筋を降りて行くとアスファルトの林道法皇線に飛び出した。










『この先の地形図の破線が今までの様な感じだと、けっこう時間がかかると思いますが、

このまま林道を下って行くか、予定通り破線を歩いてみるか、どうしますか?』と聞くと

『予定通り破線を辿って行く』とあっちゃんが即答した。GPSを見てみるとカーブミラーの

辺りから北に向かって破線は続いている。カーブミラーの場所から下を覗いて見ると

何となく道ぽい雰囲気がある。しかも道には真新しい『四国中央市』と書かれた

プラスチックの杭がある。ということは遠からず人が歩いた道があるという事だ。










道は林道から直ぐに明瞭な道になった。さっきまでの悪戦苦闘とは打って変わっての

山道歩き。石の拷問(笑)でロスした時間を取り戻すかのように、二人のスピードが上がっていく。










奥様たちの後ろから時々GPSを確認しながら歩いて行くと、破線からは外れる時もあるが

方角は合っているので下まで続いている破線の道に間違いはない。

その内に鉄塔広場に出た。見覚えのある形の巨大な鉄塔は、阿讃縦走の際に見かけた

伊方原発を起点とする『四国中央東幹線』の鉄塔だった。














道の脇の羊歯が現れると、標高が下がってきたのが判る。










道はGPSを見ると少し破線上から逸れ始めたので、軌道修正をしながら線に

沿って杉林の中を歩いて行く。










杉林を抜けると地形図では実線の道に出た。実線の終点には道の脇にベルトコンベアーや

給水タンクなどがあり、何か施設があったような雰囲気がする。







実線の道から林道観音谷線に向かって、最後に破線の道を下って行く。この辺りまで来ると

道の下には不法投棄された様々なものが目につくようになる。そんな中で一番大きなものは

ナンバーが外された軽トラックだった。







作業小屋の横を通りさらに下って行くと、観音谷線に出た。ここから残り2km弱。

そろそろ背中の張りがキツくなってきたが、アスファルト道を地味に歩いて行く。














二回ほど長谷川に架かる橋を渡り、道の脇に咲く小さな草花を写真に撮りながら

歩いて行くと、後ろからいつもの様にお喋りの絶えない二人も歩いてきている。

















スタートして7時間15分。リハビリ後最初の山歩きにしてはよく歩いたもんだ。

YAMAPでは15.9kmだがスーパー地形図の沿面距離では18.2kmになっていた。

途中から張りの出た股関節や太腿よりも、背中の張りが最後に相当酷くなったが、

ほぼ計画通りに歩き通す事が出来た。途中のアクシデントも独り歩きだったら

どうにもならずひょっとしたら遭難していたかもしれない。完歩できたのは奥様たちのお陰だ。

朝は気づかなかったが、新長谷寺の仁王門に続く石段は、平らな石を小端に立て並べて

菱形の模様にしている、とても手の込んだ石段だった。その石段の奥にある仁王門から

さらに奥には石段が続いているのが見えた。朝のスタート時にお寺の方がこの石段を

丁寧に掃いていたのは、平らにではなく小端たてに並べたこの石段のせいだった。













それにしても毎回転倒などのアクシデントを起こすのは私ばかり。

へっぽこリーダーの汚名返上が出来るのはいつのことになるやら!



今日のトラック

WOC登山部で初めての林業体験ツアー

2022年04月21日 | 香川の里山

やっと回復した腰が、先週ちょっとした動作でまた再発。

普通にしていれば問題ないのだが、まだ長時間歩くのは少し不安が残る。

仕方ないので奥様たちには断りを入れて今週の山歩きはお休みする事にした。

あまり歩き過ぎると腰に張りがでてしまい良くないが、家でじっとしているのも良くない。

普段からディスクワークでほとんど身体を動かしていないので、適度に歩くのが一番の良薬。

そこで麵法師さんが企画したWOC登山部の林業体験ツアーに参加する事にした。

講師は琴南町で夏場は農業、冬場は林業を退職後に本格的に始めたNさん。

杣人(そまびと)Nさんは麺法師さん、ツーさんみやさんの高校の同級生。

そのNさんから麵法師さんに、林業の事をもっと知って欲しいと連絡があり、

今回、メンバーを募っての見学会・体験会の企画となったそうだ。

集合場所の琴南支所にはまんのう町の地域おこし協力隊の二人を含めて、

WOCのメンバー男女14名が集まった。


と、その集合前に少し遠回りをして以前から気になっていた広棚花の里

覗いて見ることにした。毎年この時期になると国道193号線を夏子ダムを過ぎ

大滝山への分岐に芝桜の幟が立てられている。

いつも山に出かけるときにその幟を目にするのだが、今まで立ち寄る事はなかった。

今日は集合時間がゆっくり目なので、少し早めに家を出て丁度

見頃だろう芝桜を見てから琴南支所に向かう事にした。

大滝山への分岐からどんどん高度を上げていくと10分ほどで広棚の集落に着いた。

まだ朝の時間も早く他に観光客の姿もなく、集落の斜面一面に植えられた芝桜の絨毯が

朝の光を浴びて輝いていた。この芝桜は過疎化した中山間部にある実家の畑が、

父母が倒れて手がかけられなくなり荒れそうになった時、三姉妹が花の咲く中で

両親を見送りたいと畑に芝桜を植え始めたのがきっかけだそうだ。

今では集落の住民のほとんどが花づくりに協力し、休耕地や家の周りに様々な花を植え、

『広棚の花の里』として名所になっている。中山間部の芝桜と云えば高開の芝桜を思い出すが、

高開の石垣と芝桜とはまた違った、山の斜面に広がる芝桜は圧巻だった。










駐車場の脇に植えられている菜の花と八重桜はもう終わりを告げようとしていたが、

ここからの景色も満開の時期にはさぞかし見ごたえがあっただろう。







赤やピンクの色に染まる畑と花の匂いに包まれてしばし見とれていると、集合時間まで

あまり時間が無くなってきた。慌てて車まで戻って広棚の集落を後にする。

琴南支所にはすでに全員が集まっていた。最初に麺法師さんから杣人Nさんの紹介。

その後、Nさんから今日のスケジュールの説明があった。







四人の同級生



最初に向かったのは山林ではなく、Nさんが設置している、営農型太陽光発電。

太陽光発電と農業生産を両立させた取り組みで、ここでは太陽光パネルの下で

日陰になっても育ちやすいシキビが植えられていた。この営農型太陽光発電は

売電収入や作物の販売が主目的ではなく、あくまでSDGsの取り組みが目的だとNさん。










次に向かったのはヒノキの植栽地。以前に伐採された斜面に平成29年から

現在までにヒノキの苗木を植栽している場所だった。




その植栽の様子を見学するために、今から斜面を登るという。林業見学・体験と言う事で

気軽に参加してみたが、見上げる斜面はなかなかの傾斜。メンバーの中からは

『ここを登るの~?』という声が聞こえてきた。










余り慣れていないメンバーにとってはヒノキの林の中の九十九折れの道が

とんでもない急登に見えるようだが、このところ奥様たちとの山歩きでは

まあまあ頻繁にこれくらいの急登は登っているのでリハビリにはちょうどいい。







日陰のヒノキの林の中から日当たりのいい植栽地に出ると、Nさんから

植栽についての説明が始まった。杣人Nさんにとっては普段の仕事場なので

何でもないように立っているが、説明を聞いているメンバーが木に掴まっている

様子から判る様に、自立するのにも難しいほどの斜面なのだ。

この植栽地は更新伐として、新しく山を作るのではなく、

主伐できるレベルに育っている木を伐採し、その跡地に別種の苗を植え替えて世代交代する事により、

新たな森の活性化と再生を目的としている植栽地だそうだ。










最初の植栽地から更に上に登って、下草の茂った足元の悪い植栽地の中を歩いて行く

さらに高度が上がって東側の眺望が広がってきた。澄み切った青空の下、新緑色の大川山

山裾には平川の下流にできた小さな扇状地と、この辺りの田植えは少し早いのだろうか?、

もう水を張った水田が目につく。
















視線を南に移すと笠形山の稜線。振り返ると三角の山は高鉢山飯野山だろうか?

尾根の反対側はゴルフ場。広々とした芝生の上でプレーしている人の姿が見える。













植栽地の上端に沿って南に歩き少しづつ下って行く。水を張った水田が周りの影を映し出している。














植栽地の途中に一本の立ち枯れた木。安全に伐倒できる巻き枯らしという手法がとられている木だ。

幹表面の樹皮を1周、剥いだり、傷を付け、立木を倒さないで、枯らすことを「巻枯らし」というそうだ。

ただ「巻枯らし」は、完全に枯れる(1年程度)まで、生立木を加害する害虫が

大発生し、残った木への影響が危惧されるという問題点もあるそうだ。







さらにその下には巻き枯らしの木が、根が浅かったせいか根返りして倒れてしまっていた。




植栽地を下ると樹齢70年近くのスギとヒノキの林に出た。

Nさんが管理する林の中では一番樹齢が古い林になるそうだ。

少し谷筋になった場所に真っすぐに伸びたスギが立っていた。最初の植栽地から

Nさんからの講話が場所場所であったが、ここでも自身でしょうもない講釈と

言いながら語ってくれたのが、尾根マツ・谷スギ・中ヒノキという語呂のいい言葉だった。

乾燥に強いマツは尾根に、水が好きなスギは谷筋に、そしてその間にヒノキを植えるゾーニングが、

土に合わせた昔からの工夫だそうだ。







山から降りた後、車を停めた場所の近くでNさんが用意してくれたヒノキとスギの

苗木を記念で植樹する事になった。鍬で掘った穴に苗木を植え、周りの枯れ葉を取り除いて

土をかぶせて、踵で踏み固めていった。つま先ではなく踵で踏むのは、出来るだけ

硬く踏み固めた方が生育にはいいそうだ。
















植樹を終えた後は昼食。今日は近くにある三嶋製麺所で釜揚げうどんを頂く。

醤油と生卵にネギを載せただけの素朴なうどん。いつもは注文しない大もペロリだった。










メンバーが食べ終える頃にこれまた麺法師さんの同級生のYさんがやって来た。

普段からNさんと二人で山での作業をしているそうだ。

5人の同級生




次に向かったのは更に南に車を走らせた場所にある落合橋。国道438号線から

真鈴峠に向かう分岐となる場所にある橋だが、この橋の欄干にこの地区の歴史が形取られいた。

水田が多く畜力を必要とする讃岐と、山間傾斜地で畑作が盛んであり、一家に一頭牛を

要する阿波との間で「借耕牛」の取引が行われ、多数の牛と人々の往来で賑わった地域。

仕事を終えた借耕牛は報酬として得た米俵を積み、貸出農家の元へ返されるが、

これが米の少ない阿波にとって大きな魅力となり、借方の讃岐とあい補うものとなった。

その様子が橋の欄干のデザインになっていた。橋の西側は讃岐に向かう借耕牛。

そして東側は背中に米俵を背負って阿波に帰る借耕牛の姿がデザインになっている。

さらにNさんの説明では、讃岐に向かう借耕牛は頭を持ち上げ前を向いているが、

農作業を終えて帰る借耕牛はこき使われ疲れ切った様子で、うなだれているという。

その借耕牛の様子は瀬戸の島からさんのページに詳しく書かれている。













落合橋で借耕牛の話を聞いた後、真鈴峠に向かって県道を走って、野田小屋地区にある、

Nさんの別の植林地に向かう。間伐され枝打ちもされ管理されたヒノキの林は陽の光が届いて明るい。

山を歩いていても手入れされていない林は薄暗くあまりいい雰囲気がしないが、

手入れされている林は歩いていてもとても気持ちがいい。先ずは間伐を体験するために

目印を付けていた木までは林の中の斜面を登って行く。













先にNさんが手本を見せてくれる。斜面の下側に幹周りの1/3ほど水平と斜めに切れ目を入れ

三角形の空洞を作り、次に反対側から水平に切っていく。チェーンソウが廻らなくなったら

全部切れた事になるようだ。その後チェーンソウを抜いて、丸太を使って斜面の下側に木を落とし、

少しずつ末口を倒しながら、斜面の上に向かって倒していく。周りの木々の枝ぶりや足元を

確認しながら、安全に倒していく。倒した木はその場で枝打ちをして、今回は荒廃地の杭として

3メートルの長さに切って出荷するようだ。Nさんの手本の後、希望者が一通り体験してみる。

























伐採を体験した後は枝打ち体験。10年目の手届きまで枝打ち、以後3mぐらいまでは

二段鋸で、最後に高所になると登降機を使って枝打ちするそうだ。

今日はその登降機を使っての枝打ちを体験させてくれた。

足掛け部と腰掛け部の二つに分かれていて、体重を掛けると木に巻き付けた

チェーンがストッパーになって固定される仕組みで、腰掛けながら安全に

負担がかからず作業ができると言う優れモノだつた。

木の上に向かっては、腰掛けた状態で足掛け部を持ち上げて行く、

その様子を見ていると尺取り虫が木を登っている様な感じに見える。













枝打ちを体験した後は間伐した木を運び出す。今回は3mほどの長さなので

ロープを使って道まで運び降ろしていく。今までの体験は腰に負担がかかるといけないので

遠慮していたが、歩いて降りるだけの動作は問題ないので今回初めて体験させてもらった。

木に巻いたロープを下手から引っ張って木を降ろすのだが、急な斜面もロープを掴んで

降りているような感じで、見た目より随分と楽に降りていけた。







大型犬と散歩するツーさん(笑)



ロープの数が足らずに手で降ろしているみやさんは、随分と苦労をしている様子だった。

枝打ちされた跡は、木にセミがとまっているいるように見えることから

蝉止まりと呼ばれているそうだ。この木には蝉が沢山とまっている。

この植栽地は約5反の面積。1反辺り300本程植えられたが、その後間伐して150本程になっている。

枝打ちだけで1本あたり5・6分の時間がかかるそうだ。移動や道具の準備を含めると

枝打ちだけでも結構な時間がかかる。その上下草刈りや間伐の作業も必要だ。











車を停めた場所まで降りて今回の講師のNさんから、今までの取り組みや考え方や

思いについてお話頂いた。今日一日を通して感じたのはまず作業の大変さ。

とてもじゃないが今の私には無理な作業ばかり。(山の登り下りを除いて)

そしてその割に利益の出ない林業。ただ林業の機械化・自動化によって最近は

若い世代の従事者が増えているという明るい話題もあるが、重労働であることに変わりはない。

重機での作業が増えても、チェーンソーと燃料を担ぎ、山林に割って入って伐倒したり、

苗木を背負って山の斜面を登り植林したりするなどの作業は多くある。

夏は虫に悩まされ、チェーンソー作業や木材の伐採、搬出作業は常に危険と隣り合わせだ。

Nさんも常にヒヤリ、ハットは絶えない為、作業に入る前は山の神に安全のお祈りをし、

山から下りたら無事のお礼のお祈りを毎回欠かさず行っているという。

そんな困難を覚悟したうえで若い担い手がどんどん山に入ってくれ林業が

見直される時代が来ることを願った一日だった。

メンバーもまた機会があれば見学会や体験会を催して欲しいとお願いをして別れた。








毎年恒例の花紀行

2022年04月08日 | 四国の山



毎年この時期は、神山町周辺を花紀行と題して、桜・菜の花・芝桜を見て回っている。

今年もあちらこちらで開花の情報が耳に入ってきていたが、

先月から出かけようと考えていた川井峠の枝垂れ桜は、日曜日にはまだ蕾だった様子だった。

反対に神山町の枝垂れ桜は満開から散り始めとなっていた。

週を開けて気温も上がってきていたので、川井峠はまだ少し早いかもしれないが、

その後神山町まで足を延ばせば枝垂れ桜を満喫できるだろうと思って出かけてきた。

奥様たちとは穴吹町で待ち合わせをして、その後国道492号線を南に車を走らせる。

途中、朝の光に輝く満開の枝垂れ桜に後部座席で一斉に歓声があがった。










道沿いの枝垂れ桜は、陽がまだ当たらず日陰の花と陽の当った日向の花の陰影が幻想的だ。





川井峠のトンネル手前の駐車場に車を停めて歩き始める。




この川井峠の枝垂れ桜は、北尾氏が約60年前に、隣町の神山町の二宮八幡神社から

桜の苗をいただき、それを丹精込めて増やし、今日では四国有数の桜の名所となったとある。

日曜日は蕾だったという枝垂れ桜も、遠目に見るとそこそこ咲いているように見えた。

ただ満開になれば参道に覆いかぶさるようにして咲く桜。やはりまだ少し早いようだ。

鳥居の下にはコーンが置いてあり『コロナ渦の為立ち入り禁止』と書かれていた。








鳥居の手前の道の脇には双眼鏡を置いた展望台がある。展望台からは東にまだ雪の残る剣山が見えた。

その剣山の左横に見える笹原のピークを指さし『あれが次郎笈!』と知ったかぶりで

話をしていると、展望台の下の畑から『次郎笈は剣山の奥やからここからは見えん、

あれは一ノ森や!』と声が聞こえてきた。声の主は畑仕事をしていたおじいさんだった。

そのおじいさんに『立ち入り禁止になってるけど、天行山へはどこから登ったらいいんですか?』

と尋ねると。『山に入るだけだったら通ったらええが~!』と言ってくれた。この方が北尾さん?







お言葉に甘えて、いつもの様に鳥居を潜って登山口へと歩いて行く。

参道を過ぎて畑の横からは、雪を抱いた山を見るのはこれが最後になるだろう剣山。

猪避けのフェンスの真ん中は、ベビーゲートが入り口の扉になっていた。














ベビーゲートを入り直ぐ薄暗い林の中を歩いて行く。しばらく歩くと東宮山への分岐となる。













更に進むと川井峠の下手にある『天行山窟大師堂入り口』登山口からの道と合流した。







更にその先にアカマツの大木のある休憩所。ここからは眼下に木屋平の集落が見下ろせる。

深い谷あいが剣山に向かって続いている。一ノ森の左手に少し下がったピークが

槍戸山だろうか?またここで知ったかぶりをして間違えるといけないので、

奥様たちには黙っておこう。










自然石そのままの石段とその脇に『立山に石段築く八町を大師一夜に設けしとなり』書かれた句碑。







石段を登りきると岩壁を背にお堂があり、石仏がたくさん並んでいた。

お堂は岩壁に食い込んで建てられていて、これが天行山窟大師堂だろうか?







斜面に並ぶ石仏の間を通って、山頂へと登って行く。

山頂までの距離は短いが、なかなかの急登だ。











天行山山頂は樹木に囲まれていて眺望はない。阿波史談では頂上には雨行大権現が

祀られていたとの事だが、今は石積みが残るだけだった。








山頂で一息入れた後、尾根続きの東宮山へと一旦下って行く。

葉を落とした木々の間から、その東宮山の三角の山頂が見えた。










自然林と人工林の混在する道を歩いて行くと、川井峠へ降りる分岐。

『帰りはここから下って行きます!』と奥様たちに声を掛ける。










そのうちに植林地の幅の広い作業道に飛び出した。所々立つ東宮山の道標を見ながら歩いて行く。










作業道の途中に、右に東宮神社、真ん中が東宮山と書かれた道標。

その道標に従って真ん中の尾根を登って行く。途中に『中内』と書かれた木が何本もあった。

この林は中内さんの所有の林なのだろうか?







尾根の道は直ぐに急登が始まった。前回WOC登山部で来た時は、かしまし娘の三人が

息を切らせながら登っていたのを思い出す。










急登を登ると次は痩せ尾根。そしてその痩せた背中を渡ると山頂直下の最後の急登。











東宮山山頂には二つの祠があった。この山頂から少し下がった場所にある

東宮神社の奥宮になる。1つは神山町のもので東宮神社と称し、天照皇大神・

国常立命を祀っている。もう1つは木屋平のもので、春宮神社と称して

土御門天皇・後嵯峨天皇を祀っている。この祠はもとは1つであったが、その所属を巡って

宝暦4年に両村の間に流血騒ぎがありのち、別々に社殿を建立したと伝えられている。

かつては東宮神社には、旧5月1日の祭礼には神輿や屋台まで出てにぎわい、

両村から約1000人の人が集まったそうだ。三角点は木屋平側の奥宮の裏手にあった。










神山側の奥宮の正面からは、南側の眺望が開けていた。直ぐに山座の同定が出来たのは

雨量観測所が見える高城山。その手前の稜線が砥石権現

そして高城山の左側に見えるのが雲早山だろうか?











時間は11時。そろそろ、あっちゃんが『お腹が空いた~!』と騒ぎそうだが、

今日はここに来るまでにおにぎり二個を頬張っているので、まだ大丈夫のようだ。

『お昼ご飯は下ってからにしましょう!』と言って山頂を後にする。




急坂を今回は何とか転ばずに下りられた。ここの所転倒ばかりしているのは

考えてみると先頭を行くルリちゃんの下りのスピードが速すぎて、

自分にはオーバースピードになっていたせいかもしれないと思い、

ストックを使いながら慎重に下ったおかげだった。急坂を下り作業道に出ると

気持ちがいいくらいの杉の高木が並び、その間に道が続いている。










途中で往路で話をした分岐から、川井峠へと直接下って行く。







こちらの道は倒木を潜ったり、跨いだりしてのアスレッチクの様相。

そのアスレッチクが終わると小ピークを巻くようにして続く幅の狭いトラバース道










電波塔まで降りてくると、右に峠の神社に降りる道とトンネルを越えて

林道へと続く道の分岐になっていた。下を見ると神社の参道と枝垂れ桜が見えた。

このまま神社に降りると、朝と違って他に観光客が居たりすると、立ち入り禁止と

書かれた中から出るのも気まずいと思い、そのまま直進して林道へと歩いて行く。

間引かれた杉林の道になると眼下に車を停めた駐車場が見えたので、

そのままショートカットでダイレクトに駐車場に降りて行く。










本当なら枝垂れ桜を見ながらのお昼ご飯としたいところだが、

さすがに駐車場にも車が次々と入ってくる。人前でバーナーを出してお湯を沸かすのも

少し人目が気になるので、駐車場でザックを降ろしてお昼ご飯にする。


お昼ご飯を食べた後はここからが『花紀行』。まずはトンネルを潜って神山町へ。

最初に訪れたのは江田の菜の花。恐らく時期的に少し遅いかな~と

思った通り、旬を過ぎた菜の花は疎らで、その代わりいつもよりあちこちに桜の花が目立っていた。













次に向かったのは神山温泉の西側にある四季の里・創造の森

小高い丘の様な大粟山の東麓に、アートの森の散策路があるが、その駐車場の脇が

今回のお目当て。足元は埋め尽くすほどの花びらが散っているが、

上を見るとまだまだ満開の様にも見える枝垂れ桜の公園。










その桜の木の下で、見上げると青空を背にまさに桜色一色。その桜の花が風に吹かれて舞い散る。

桜吹雪とはまさにこの事か!ヒラリヒラリと落ちて流れる花びら。


















過疎化が進む町をなんとか明るくしたいと始まった神山町の植樹。

「神山をしだれ桜で日本一美しい町にしよう」という20年以上に及ぶ一大プロジェクト。

神山さくら会の60代以降の数十人のメンバーが20年掛けて、町内に6,000本以上の桜を

植樹してきたおかげで、これだけの規模で枝垂れ桜を愉しめるのは全国的にも珍しいそうだ。







さらに驚かされるのはその次に向かったゆうかの里。個人で500本近くの枝垂れ桜を植えられた

斜面一面が枝垂れ桜の山肌になっていた。










道路わきの駐車場には次から次と車が出入りし、山の急斜面に続く道では、

家族連れやカップルの姿が平日なのに大勢見られた。
















枝垂れ桜は枝が垂れるほど柔らかく、他の品種よりも生育に手間がかかるのだそうだ。

先ほどのさくらの会から3本の苗木を分けてもらいスタートして、コツコツと

ここまで植えてきたその個人の方には頭が上がる。













そして今日の最後は神山森林公園。前日のFBで徳島のkyoさんが公園の中のソメイヨシノが

見頃とアップしていたのを見ての事だが、ここは桜の花だけでなく、YAMAPの山頂ピークの

西竜王山が目当てだった。奥様たちは天行山と東宮山を登った後、

川井峠の南にある富貴山風宮山のポイントをゲットしたいと予定していたが、

この時期の桜を見逃す手はないと思って、残りの二座を諦めさせて花紀行に変更した。

ただやはり花も水物。山を下りて車を走らせて、ひょっとして花が既に散っていたら、

奥様たちに何て言われるか分からない。そこで二座は諦めても別に一座はゲットできます!

と安全策をとって二人を納得させていたのだ。

ここでも家族ずれで賑わう駐車場から、公園の中を西竜王山らしきピークに向かって歩いて行く。

途中からアスレッチクに沿って登っていたが、山頂へ斜面を直登すると遊歩道に出た。















遊歩道の道標に従って歩いて行く。いつもの事だがルリちゃんは遊歩道を、あっちゃんは

無理やり直登で登って行っている。果たして今回は『急がば回れ!』かどうか?








いつもと違い今回だけは直登をしたあっちゃんが先に山頂に着いていた。

西竜王山の山頂には八大龍王が祀られていた。







これで今日は三座をゲット。奥様たちにはご満足いただけたかと聞いてみると、

今日一日大変満足いただけたようで、ほっと胸をなでおろす。

西竜王山から遊歩道を下り最後に北の展望台へと歩いて行く。小高い丘の上に建つ

木製の巨大な展望台からは、吉野川流域に広がる徳島の市街地が見渡せた。










少し空の色が変わり始めた。北の展望台からぐるっと公園内を歩いて駐車場へと戻って行く。

公園内にはまだ子供たちの声が聞こえているが、そろそろ皆さん帰り支度をしている。

園内で一番広い芝生広場を通り、この春最後の桜を見納め帰路につく。

















今日のトラック