先週、塩塚高原を歩いたあとの駐車場で『来週は雨予想なので、取りあえずお休みにし
ましょう!』と奥様たちに伝えた。天気予報が回復すればと思っていたが、予想通りの
高松は曇りのマーク。山間部では?の予報。山に出かけないとなればいつになくゆっく
りと朝寝して、その後朝食を食べながらスマホを見ているとSNSに『時の納屋が6月
30日にオープン』の写真が上がってきた。
以前から地元の大串自然公園の芝生広場に建築されていたのは知っていたが、実際に完
成した写真に目が留まった。このまま家でじっとしているのも・・・と思い、建物見学
と大串自然公園を散策してみる事にした。
公園内の駐車場に車を停めて、新しくできたアプローチを歩いて行くと直ぐに写真で見
た建物が目に飛び込んでくる。アプローチの両側は芝生と木々の苗木が植えられたばか
りで、歩みを進めていくと建物の横に小豆島の島影が見え始め、建物まで来ると瀬戸内
の海が目の前に広がってくる。
我が家の子供たちが小さいころからよく遊びに来ていたこの場所。目の前には小豆島。
その間を船が行き交い、海風にのってトンビが気持ちよさそうに飛んでいる。いつ来て
も瀬戸内の素晴らしい景色だと思っていた場所だったが、以前あった温泉施設や宿泊施
設も閉鎖してイマイチこのロケーションを生かせていない気がしていたので、今回の取
り組みが活性化につながればと思った。
建物の南側の大きな掃き出し窓から中を覗いてみると、ガラス越しにカフェスペースが
見えた。無垢のテーブルと椅子の奥には開放感のある窓の向こうに瀬戸内海の景色が広
がっていた。オープンすればランチの時間に女性たちの賑やかな声が聞こえてきそうだ。
『時の納屋』の北側には以前からあった双眼鏡の置かれた展望台。そこからさらに北側
にある野外音楽広場のテアトロンへ下りていく道が続いている。春には桜並木が瀬戸内
海へと続く景色を見ることができる。ここ最近、歩き始めは必ず膝が痛む。それもしば
らく歩くとマシになってくるが、いきなりの下り坂は結構キツイ。
円形の野外ステージは客席から見るとステージのバックに瀬戸内が広がっている。過去
のコンサートもけっこう有名なアーティストが開催していて、地元民としては自慢の施
設だ。ただ駐車場を含めてアクセスが悪いのが難点だ。
テアトロンからさらに下って行くと『長ぞわい観音』の案内版があったので左に折れて
下って行くと、ここでも瀬戸内海を背にして立派な観世音菩薩像が建っていた。
海上交通の安全と大漁を願って作られた庵治石の観世音菩薩だが、元々はこの像の北側
から更に急斜面を下った岩礁の上に、地元の漁師が建てた像があるらしいが今日はパス。
この観世音菩薩像の手前に東へ道が続いていた。おそらく大串岬への道だろうと思い歩
いて行ってみる。道の脇の草花を眺めながら歩いているといつのまにかテアトロンの施
設の下側に出た。あわててスマホを見てみると、岬への取り付きを通り過ぎていたので
後戻りして岬への降り口を探すが、GPSの地形図の破線のある辺りになっても、それ
らしい道が見当たらない。行ったり来たりしながら探していると草むらの奥に階段らし
きものが見えた。足を踏み外さないように草をかき分け降りていくと、岬に向かって階
段が続いていた。
途中道の脇にはベンチがあり、この公園を開発した当初は遊歩道として整備されていた
のだろう。この大串岬はさぬき市の最北端になるので、管理をしていればちゃんとした
訪れる人もいるのにな~なんて思いながら歩いていると、道の半分が崩れて消失してい
た。かなりの規模で崩れていたので復旧するにはけっこう予算がかかるので放置されて
いるのだろう。この場所には限らないが造ったのはいいけれど、ランニングコストを考
えずに造って、結局管理できていないモノがあちらこちらで同じように放置されたまま
になっています。
遊歩道の終点には東屋がありこの季節、木々が茂ってはいるものの瀬戸内海を見渡せる。
先ほどの芝生広場の展望台とはまた目線の高さが違った景色を見ることができる。
大串岬から遊歩道を登り返し、舗装路にでる。長ぞわい観音の標識から少し下ると今度
は『石切り場』の説明版が道の脇に建っていた。標識に従って歩いてみるが途中で大き
なくぼみに水が溜まって奥に進めそうにないのであきらめて引き返す。
道は更に下り坂。この道の最低部になると道の脇に駐車場があり、GoogleMAPでは海
釣り公園になっている場所に寄り道してみる。以前に子供たちを連れて浜辺で遊んだ場
所にはなんだかとってもおしゃれなゲストハウスぽい建物が建っていた。
その建物の前を通らせてもらって海岸沿いの遊歩道を、先ほどの大串岬から見えた赤い
大串埼沖灯標近くまで北に向かって歩いて行く。コンクリートでできた遊歩道の上を足
を踏み出すたびに無数のフナムシが逃げまどっている。フナムシの大きさと私の身長を
比べると、まるで以前に見た『ゴジラ-1.0』で東京湾から上陸したゴジラを前に必死で
逃げる人間の姿が思い浮かんだ。
遊歩道の脇に咲く小さな草花を眺めながら歩いて行くと、遊歩道は灯標までは続いてい
なくて途中から『長ぞわい観音』の方へ階段が続いていたので、仕方なく引き返す。
防波堤の先ではのんびりと釣り糸を垂れる人の姿があった。
海釣り公園の駐車場まで戻ると舗装路は下り坂から登坂になる。途中にあるオートキャ
ンプ場は今日は休場のようで、手入れの行き届いた緑の芝生が輝いていた。
東の対岸では志度カントリークラブの芝生が見える。
さらに舗装路を登って行く途中で鼻を突く匂いが漂ってきた。『何の匂いだろう?』と思
ったが、すぐにブドウが腐った匂いだと思った。匂いの記憶は半世紀も前の小学生の頃に
地元のブドウ畑で遊んでいた時に嗅いだ思い出を蘇らせた。
そんな匂いが途切れると目の前に大きな建物が現れた。四国で初めてできたワイン工場の
さぬきワイナリーだ。設立されて30年以上も経つが恥ずかしながら一度も訪れたことが
ない。今日も時間の都合でスルーする。
ワイナリーから一旦県道に出て東に苫張漁港に続く道を歩いて行くと、山側に摩崖仏と書
かれた矢印案内板が見えた。案内板に沿っていくと斜面に不動明王の摩崖仏が座っていて、
その脇には如意輪観音像が刻まれていた。
昭和の終わりに長尾町の蓮井一郎さんが毎日通って彫り上げたというこの摩崖仏は、今ま
で見てきた摩崖仏とは少し違って作者の個性だろう、何となく憎めない表情をしている。
その摩崖仏の横から尾根に向かって登って行く。先ほどまでの舗装路は登坂でも緩やかだ
ったので、今日初めての急登ですぐに息が切れる。所々に付いたピンクのテープを目印に
登って行くと程なく尾根に出た。
尾根に出ると右手はヒノキの植林地。一旦下って鞍部から登り返し、少しスズタケをかき
分け歩いて行くと大串山に着いた。
地形図では137mの標高点だけになっているが、YAMAPでは山頂ポイント、そして
山頂標からも判るように、『さぬき市里山チャレンジ30』の一座にもなっている。これ
で『さぬき市里山チャレンジ30』も残り二座。この冬にでもまた歩いてみよう。
大串山からの折り返しは急坂の摩崖仏へは下らずにそのまま尾根を下って行く。こちら
もピンクのテープの沿って歩いて行くが、最後は今は使われていない別荘のような建物
に向かって、背丈ほどの草をかき分け降りていくと県道に飛び出した。
今まで何度も訪れたことのあるこの大串半島だが、車で走ることはあっても今回のように
歩くのは初めての事だった。車では気づかなかった史跡や遺跡があることに気づかされ、
改めて地元のこの場所のすばらしさを再認識したウォーキング+一座となった。