日頃から山歩きの行先を考えるのに、YAMAPを利用している方はかなりの数になる
のではないだろうか。フォローしている人の活動日記は次々とアップされていくし、そ
れでもまだ行く先が定まらなければ、地域や季節を絞って検索もできて、とにかく便利
だ。そんな中で5月の連休が終わっての週末にアップされた活動日記の写真に目が留ま
った。それは山頂からの雄大な景色でもなく、貴重な花の写真でもなく、一人の女性が
背負子を背負った写真だった。ヤーメンさんとソーヤさんがアップした写真の女性は、
実店舗は持たずに手作りお菓子を行商で売り歩いている『お菓子売りのてくてく』さん。
背負子に付けたケースの中には動物や山の形をした色々なお菓子がぶら下がっていた。
さっそく奥様たちにその写真を送ったら、『まぁなんて素敵な笑顔の女性なの!』とあ
っちゃんから返信があった。『是非会ってみたいわね!』とも。
ただ『てくてく』さん、普段は街中で週末に山に行商に出かけているようなので、週
末はなかなか休みが取れない私は、会いに行く機会がないかと思っていたら、なんと
今週は水曜日に鷲尾山に出かけますとYAMAPにアップされていた。
これを見逃す手はないと奥様たちにメッセージを送ると、もちろん即OK。ルリちゃ
んはWOC登山部で一緒に歩いたことのある南嶺だけれど、あっちゃんは初めて。筆山
から歩けば、4座ゲットできるので、それも楽しみだと返事が来た。
集合場所の豊浜から筆山の駐車場まではGoogleMapでは1時間となっていたが、てく
てくさんのスタート時間が8時30分となっていたので、市内は通勤ラッシュの時間帯。
少し早めに待ち合わせをして高知市内へ向かうと、予想通り高速を降りると車は渋滞
していて、果たして間に合うかな?と思いながら筆山へと向かって行く。
筆山第二駐車場にギリギリに到着したが、てくてくさんはまだの様子。近くの東屋の下
には、登山着姿の男女がいた。『あの方たちも多分てくてくさん待ちかな?』と言いな
がら身支度をしていると一台の車が着いて、車からはてくてくさんが降りてきた。
さっそくてくてくさんを前に事情聴取をする奥様たち。
すると先ほどの東屋の男女も含めて、次々とお菓子を買い求める人が現れた。SNSを
見た人は、山には登らずわざわざお菓子を買うためだけに来ていたりする。私たちもさ
っそく美味しそうなクッキーを買い求めた。
駐車場から色づき始めたアジサイを眺めながら、登山口へと向かう。皿ケ峰・鷲尾山の
登山口は墓地の中への道。道の両脇に建つ墓石の中を歩いて行く。
しばらくすると南側の景色が開けてきた。浦戸湾と宇津野山から続く稜線。少し違った
場所からは、東に五台山が見えた。
墓地の中の道は昨日かなり強く降った雨の影響か、場所によっては水が道の上を流れて
いる。墓地を抜けると皿ケ峰山頂への道とトラバース道との分岐。右側の道を進むと皿
ケ峰山頂に続く道だったが、気づかずにトラバース道を進んで行く。
皿ケ峰山頂を回り込んだあたりから景色が良くなり、このコースで有名なライオン岩が
見えた。するとそのライオン岩の周りで何やら撮影をしている人たちの姿があった。
通り過ぎる際に『何の撮影ですか?』と聞くと、『テレビのCM様です!』との事。おそ
らく地元の会社のCM用の撮影なんだろうな?と思いながら横を通って下って行く。
前回も思ったけれどこのライオン岩。どう見たらライオンに見えるのだろう?
ライオン岩を過ぎるとまた道の両側に墓石が現れる。真っ赤に錆びついた道標を過ぎる
と今度は半分炭になった道標。この辺り一帯は山火事あった場所で前回秋に来た時はそ
の雰囲気を見ることができたけれど、今日は草木が伸び放題で周りの景色は様変わりし
ていた。
山火事のあと高木がまだ育っていない鞍部辺りは日差しが届いていたが、そこから先は
森の中の道。気温は上がってきているが湿度が低いせいか日陰になった途端涼しくなっ
てきた。朝一番で鷲尾山に登っていた人たちだろうか、何組かの人たちとすれ違う。
道は緩やかな登り坂から短い距離だが急登になると目の前に見覚えのある建物が見えた。
中・高一貫校の土佐塾の『大志寮』だ。この建物は高知市内からも山中にあってけっこ
う目に付く建物だ。いったんその土佐塾への舗装路を横断して大志寮に向かって階段を
登って行く。寮の脇を通りさらに歩いて行くと貯水池のようなコンクリート壁に苔が生
えて、色々と落書きがしてあった。その中で『助けて!』と書いてある落書きを見なが
ら、奥様たちと『寮生が逃げ出せずにいるのかしら?』と。
落書きのコンクリート壁の先からは一旦下り坂になる。鞍部まで降りると四差路になっ
ていて深谷・吉野と書かれた東西の道は街中に続いているようだ。この南嶺は高松市で
云えばさしずめ峰山みたいで、市内から色々な道があってアプローチできるようになっ
ている『市民の憩いの里山』だ。
四差路を過ぎると鷲尾山への最後の登りになる。坂の途中で二股になった場所では丁寧
な案内板。当然楽そうな右の道を登って行く。しかしそう思って選んだ右の登坂もけっ
こう急な坂。九十九折れの道が続いていく。
尾根を右に左に巻きながら続いている道。要所要所にはしっかりとした道標が建ってい
る。すると高木の下の木陰にベンチとテーブルが並んだ場所があり、その横を通って一
段登るといっぺんに眺望が広がり鷲尾山に着いた。
山頂ではすでに到着していたてくてくさんが、何人かの人たちと談笑していた。その様
子を見ながら声をかけると、『けっこう売れたんですよ!』と満面の笑み!
私はと云えば今日はその笑顔を撮りにわざわざ香川からきたので、ストーカーもどきで
写真を撮りまくり。
奥様たちとのやり取りを眺めながら写真を撮っていると、サングラスを掛けた男性から
『KAZASHIさん?』と声をかけられた。『ハイ!』と答えると『ヤーメンです』と。
今回てくてくさんに会いに来た大元の情報源のヤーメンさんだった。『今日は平日だから
ヤーメンさんとソーヤさんは来られないだろうと思っていました』と言うと、『実は転職
して6月からの勤務になって、5月いっぱいは有休消化で仕事をしていないんです』と仰
った。ヤーメンさんの活動日記には山だけでなく、沢に入ってアメゴを釣り、その釣った
アメゴを山頂で食べている写真が時々アップされている。なかなか高尚な趣味をもってい
て普段からうらやましく思っていた。リタイヤしたら習おうかな?
そのヤーメンさんに顔ハメパネル持ってもらって、てくてくさんと一緒に写真を撮る。
この顔出しパネルとわしお山とくりぬかれたパネルは、筆山から一緒になった三人組
の内の男性が作ったそうだ。
今日は昨日の雨のお陰でかなり遠くまで見渡せる。案内板の近くにいた白髭の男性が
『今日は室戸岬も足摺岬も珍しく見えている』と教えてくれる。
やはり昨日の高知でもけっこう雨が降ったので、鏡川や国分川から流れ出た泥水が、
湾をでて太平洋の沖の方まで海の色を変えている。
浦戸湾の奥に室戸岬
宇佐湾の先に足摺岬
てくてくさんと別れた後、一段下のベンチのある木陰でお昼ご飯。同じようにベンチに
腰掛け食事をしている女性が二人。一人は40代の方、もう一人は70歳を過ぎた方。
奥様たちはその女性たちといろいろ井戸端会議。今日お昼ごはんにあっちゃんが持って
きた素麺の話で盛り上がったかと思えば、年配の女性が阿讃縦走の話を始めたりと賑や
かだ。その横で私は独り黙々とぶっかけうどんを口に入れる。
するとその先輩女性が『今まで登った山で一番良かった山はどこですか?』と聞いてき
た。『自分にとって一番の山はどこだろう?』と思い頭の中を巡らせていると、直ぐに
その女性が『私はトムラウシ山よ!』言ったので、思考を中断。『山一面お花畑が凄か
ったの・・・・』と。是非ぜひ行ってみてと。トムラウシ山と云えば、ツアーガイドが
いたにもかかわらず8名が低体温症で亡くなった遭難事故のイメージしかなく、お花畑
と繋がらない。まあでも一度は雄大な大雪山系の山を歩いてみたい。
お話はまだまだ続きそうなので、ベンチから腰を上げて挨拶をして宇津野山へとまずは
登ってきた道を引き返す。
支尾根の途中から有刺鉄線に囲われ、入り口だけが取り除かれている場所から宇津野山
へと向かって行く。多少のアップダウンはあるが基本下り気味の道。
途中からは鉄塔巡視路となり、宇津野山の手前で鉄塔広場に出た。
鉄塔広場を過ぎればまもなく宇津野山山頂に着いた、周りは木々に囲われて見晴らしはな
い。三等三角点 西孕 256.33m
山頂からは来た道を折り返し途中の分岐から支尾根を外れて下って行く。山頂もそうだ
がこの間ほとんど眺望はないが、一カ所だけ道の北側が開けた場所があり、木々の間か
ら土佐塾の校舎が見えた。
支尾根から外れた道はしばらくして往路に歩いた道に出た。鞍部まで下り登り返すと土
佐塾の大志寮。寮の脇を抜け舗装路に出ると下から土佐塾の真っ赤なバスが何台も上が
ってきた。
舗装路から森の中を下って行くと皿ケ峰との鞍部になる。ここからは高木もなく容赦な
くお日様が照り付ける。ライオン岩まで登り、その先の分岐から皿ケ峰山頂への急登が
始まる。登坂も下り坂も着地した左足に重心がかかるとやはり左膝が痛む。出来るだけ
体重が載らないように登って行く。
皿ケ峰山頂は電波塔と平らになった中心にはシンボルツリー。開けた北側を見ると工石
山からの稜線が東西に続いている。ここで今日三つ目の山頂ポイントゲット。残るは筆
山だ。
皿ケ峰山頂から急坂を下り墓地公園の中の道。車を停めた駐車場の上側から筆山へ取り付
く。そして最後の登りそして階段が始まる。何とかその階段を登り切り今日最後の山頂、
そして二つ目の三角点 三等三角点 真如寺山 118.28m
山頂にある展望台からは木々に遮られて、高知城の城壁が何とか見える程度だった。
プラタナスの大木の木陰に入ると爽やかな風が吹き抜ける。新緑の葉の間から、遠慮気
味に木漏れ日がさしている。
SNSに上がったてくてくさんの写真を送って直ぐに、ぜひ会ってみたいとあっちゃん
から返事があったが、こんなにも早くお会いできるとは思わなかった。
『山歩きも好きなんです』と言った彼女の笑顔は、まだ爽やかな風の吹く山にあって、
それ以上の爽やかな笑顔も見せてくれて、大満足の一日だった。
てくてくさんは香川の里山にも出かけたいといったので、飯野山を勧めておいた。興味
のある方は、インスタと、YAMAPをチェックしてお菓子を買いに笑顔に会いに行っ
て見てはどうだろうか。
【お菓子売りのてくてく 四国店】
【alku】
YAMAP
【お菓子売りのてくてく 四国店】