先週の工石山のアケボノツツジが見ごたえがあったので、まだほとんど情報が
挙がっていない西赤石山とは別に、どこか他に景勝地はないかと探していたら、
YAMAPで佐々連尾山に『アケボノ尾根・アケボノ広場』といわれる場所が
ある事が分った。標高的には工石山より佐々連尾山の方が高いので、他の山では
すでに散り始めているアケボノちゃんもまだ間に合うかもしれない。そう思って
奥様たちをお誘いした。ルリちゃんはそうでもなかったが、あっちゃんは
『線で繋ぐ引地山~石鎚山』を早めに済ませたそうな雰囲気だったが、やはり
先週の工石山のアケボノツツジが予想以上に良かったので、アケボノ広場の言葉に
あっちゃんの気持ちも揺れ動いていた。
ただYAMAPの活動日記を見るが限りでは、アケボノ広場のアケボノツツジは
今まで見てきた尾根の登山道に咲いているのとはまた違った、とても開放感のある
場所で、あの可愛らしい薄ピンク色の花が咲き誇っていた。
これは線で繋ぐを後回しにしてでも是非見ておきたい!そう思って奥様たちにも
了承してもらって、さっそく出かけてきたが、ただひとつ前日の雨と強風に、
アケボノちゃんは散っていないかが気がかりだった。
金砂湖に架かるひらのはしはきれいに塗り直されていて、その周りが圧倒的な
緑一色の中、鏡のような湖面にその橋が写り込み、その赤い色がなお一層際立っていた。
その橋の奥には佐々連尾山から大森山への稜線が続いている。
いつもの様に白髪隧道の南側に車を停めて8時55分スタートする。
隧道の右手横から林道跡を歩いて行く。荒れた林道跡は前日の雨で直ぐ下に流れる沢の
水の音も大きく、所々で軽く渡渉する場所もあった。
白髪隧道から400mほど進んだところで、道の脇に小さな道標。字は消えて
判読できないが、ここから左手に杉林の中を登って行く。取付くと直ぐに佐々連尾山の
道標。道は少しだけ急登になるが、そのうち石畳の跡のような平らな石が足元に続いて行く。
道の脇にはミツバツツジの花が目についてくる。スタートして25分ほどで猿田峠に
着いた。峠には独特な形をした住友共同電力の鉄塔が立ち、北には正面に赤星山
から二ツ岳に続く、法皇山脈・赤石山系の山並みが見渡せる。その山並みを眺めながら
山座同定に『あ~でもない、こうでもない』と三人で話が弾む。
車を停めた場所からもそうだったが、この峠からでも大森山は意外と急峻な山容を
している。ピークの下には黒く大きな岩も見えている。あそこまで登るのか。
峠から少し上がった場所では更に北側の眺望が広がっていた。ここでもその山並みを
見ながら同定していたが、どうも意見が分かれて決定しない。すると下からおじさんが
上がって来た。『地元の方ですか、この辺りにはお詳しいですか?』と聞くと、
この山には何度も来ているという。『それじゃあの山は?』と赤星山らしき山を指さし聞くと
『赤星山や!』と答えてくれた。一つ山が確定すればそこから続く山々の名前は同定できる。
そのおじさんは何度も来ているが、今日は初めてアケボノ尾根に行ってみようと思うと言う。
『私たちも同じです!』と話をする。
大森山への道は猿田峠から見えていた通り、徐々に勾配が急になってくる。地元だ
という男性は先頭をいいペースで登って行く。やっぱりヘッポコリーダーは今日も最後尾。
最初の方は大きな露岩は巻いて道は続いている。すると道の脇に今日お初のアケボノツツジ。
先週の工石山では曇り空だったが、やっぱりアケボノツツジは青空が似合うし映える。
最初のロープ場には何本ものロープがかかっていて、前回無かったアブミもあった。
岩に引っ付いたアブミは手で握る事は出来ても、足を差し込める隙間がない。
慣れない人間にとっては逆に登りにくく、足を置くスペースも少なくなっている。
次のロープ場には岩肌に立つ木の根とロープを握って登って行く。
昨日の雨で濡れた地面は滑りやすい。
すると露岩の近くにはアケボノツツジ徐々に増えてきた。その色も濃いピンクから
淡いピンクと木によってまちまちだ。
岩の尾根が終わると展望岩に出た。ここからは南西から南東にかけての眺望が
素晴らしい!南西には猿田峠から玉取山・兵庫山そして登岐山に続く稜線。
その稜線を辿り、一番奥に見えるちち山までも三人で歩いて線を繋いできた。
『よく歩いたもんだ!』と感心する。そこから左に視線を移すと奥工石山と奥白髪山。
そして麓にはスタート地点に停めた車を見下ろせた。
するとルリちゃんがザックから新しく買った地図を取り出した。大岩の上に広げて
この山域と、ここから続く稜線上の山々のお勉強。
その展望岩から真新しいロープ場を登ると、もうひとつの展望岩。沓掛山の南斜面と
ちち山の背に笹ケ峰の笹原が顔を出している。
尾根に出ると緩やかで快適な道になる。背の低い笹の間に続く道。そして背の低い
コバイケソウの緑がその道にアクセントをつけてくれている。登山道の北側には緩やかに
広がる笹原。その開放感あふれる笹原にブナの巨木が遠慮し合うようにして間隔を
開けて立っている。
大森山は小さなピーク。まだ芽吹いたばかりの木々の上に赤星山から二ツ岳の稜線。
大森山からは最初は下りになる。その途中の見晴らしの良い場所からは、
これから行く佐々連尾山への稜線が見えた。尾根の北側はシャクナゲの斜面。
開花の時期にはシャクナゲの尾根になるのだろう。それにしてもこの大森山から
佐々連尾山への稜線は、ブナやシャクナゲと、季節季節によって色々な表情を
見せてくれる変化のある楽しい道だ。
途中で二つほどの見えたピークの最初のピークも見晴らし台。奥工石山が目の前に
近づいて来た。稜線から南側の斜面にはアケボノツツジがあちらこちらで咲いている。
短いロープが掛った岩を登ると二つ目のピーク?そこからはまたブナの巨木が
点在する笹原の道。その道の先には佐々連尾山への最後のスロープになる。
前回歩いた時もこのスロープの下り坂と登坂は気持ちのいい道だった。尾根の
両側で植生が異なり、南側は笹原そして北側は樹林帯とくっきりと色が分れる。
南西に見える一番高い山が登岐山。そしてこの笹原の中腹は汐見川の源流域のひとつ。
両側に折り重なるようにして続く谷あいはを流れる川は、やがて吉野川へと注いでいく。
スロープをひと登りすると佐々連尾山に着いた。時間は12時前。ここでお弁当を
広げてお昼ご飯。今日は冷やしうどんにカップ麺、巻きずしと三者三様のお昼。
お昼ご飯を食べたら、今日の本命のアケボノ広場へ。山頂からさらに東に進むと
山頂手前と同じような笹原の稜線が続いている。一番先で登山道が分岐に
なっているのが見えるが、その分岐を左に折れると大ブナの駄馬になる。
秋になればブナの黄葉で、ここからの景色も更に見ごたえのあるものになるのだろう。
尾根の途中から1289mの標高点へと、北東への道を鞍部へと下って行くと
稜線上にはなかったアケボノツツジがポツポツと現れ始めた。これがアケボノ尾根?
などと思いながらさらに下って行くと支尾根の真ん中に立つ2本のブナの巨木。
しばらくすると地形図には載っていない林道へと降り立った。すると猿田峠で
お話をしたおじさんが腰かけてお昼ご飯を食べていた。どうやら大森山から稜線を歩かず、
尾根を一旦下ってこの林道をここまで歩いてきたようだ。『アケボノ尾根へはここから、
下ってまたここまで登り返さないといけないので、途中までで帰って来た』と言う。
正面に見えるピークが1289mの標高点。山肌にはピンクの色が散りばめられている。
鞍部にはそのアケボノツツジを見る前に、見事な色をしたミツバツツジが咲いていた。
鞍部からピークへと登るにつれ、アケボノの密集度が高くなってきた。その蜜集度と
同じように期待感もドンドン高まってきた。
大岩を巻いて登るとピークへの斜面は噂通りのアケボノ広場。枯れた色の笹原と対照的な
青空の下にピンクの色のパレード。昨日の雨の影響か花弁はあまり開いていないが、
それでも見応えのあるアケボノちゃん。どうにか散らずに待っていてくれた。
西赤石山の群生も素晴らしいが、開放感のあるこの場所で見るアケボノツツジは特別だ。
比較的背の低い木が多く、手を伸ばせば花弁に手が届く。
ピークから東の斜面も、ずっと下の方までアケボノのピンクとミツバツツジの
赤紫の色で染まっている。
広場というよりは丘のようなこの場所。登山道の脇に咲くアケボノは今まで何度も
見てきたが、このアケボノの丘は兎に角素晴らしくて、あちらこちらとうろつく
奥様たち。『どうですか、今日来て良かったでしょう!』と自慢げに話しかけると、
『いや~ほんとに!』と二人とも納得した様子。内心散ってなくてほんと良かったと。
これで花がもっと開いていたら、どんなに凄い事になるなるだろう、なんて思いながら
名残惜しみながらアケボノの丘をあとにする。
大岩を回り込み、次第に疎らにはなってくるが、アケボノを眺めながらの登り返しは
苦にならない。『せっかくならさっきの方、ここまで降りてきたら良かったのに』と
あっちゃん。丘からだと時間にして20分ほどの登りだったのに。
林道に登り着く。振り返ると遠くに翠波高原の展望台が小さく見えた。
『アップダウンは少ないが距離はあるよ』とおじさんが言っていた通り、林道はほぼ
等高線に沿った形で支尾根を回り込んで続いている。所々で斜面が崩れた場所があるが、
地道の林道はおおむね歩きやすい。
林道にもコバイケソウの群生が斜面の上から下まで続いていた。先ほど見えた翠波峰の
稜線の奥の尾根に建物が見えるのは雲辺寺かな?
この林道は兎に角北側の眺望が開けていて気持ちがいい。銅山川を挟んで法皇山系と
対峙するように続く道。そんな稜線を眺めながら『いつか西赤石山から翠波峰を
繋いでみたいね』と奥様たちと話をする。
バイケソウの群生地の次は苔の斜面。いつもは単調になりがちな林道歩きも、
この道は周りの景色と言い次々変わる植生の変化に、全く飽きる事がない。
すると今度は赤石山系、笹ヶ峰が見え始めた。・・・と言う事はと思いYAMAPを
みて見ると、ほとんどの人がこの林道から大森山の西側へと登っていたが、
その取付き辺りを通り過ぎていた。ここで思ったのがこの林道、猿田峠まで続いて
いるのではという事。『たぶん!』という憶測の元そのまま歩いて行くことにする。
しばらく歩くと先頭を歩くルリちゃんから『あら!』と声が上がった。
そう林道はいきなり行止りになっていたのだ。慌ててスマホを見るルリちゃん。
YAMAPにはこの場所に赤いびっくりマークがついていた。そこには
『ここで林道の終点になります。慌てず此処から少し進んで尾根筋をひたすら登ると
登山道に合流します』と報告・注意が書かれてあった。
その報告どおりに杉林の斜面を、斜め上に見える明るい尾根らしい場所まで登って行く。
すると薄暗い杉林から明るい笹の斜面の支尾根に飛び出した。報告通りに尾根を
登って行く奥様たち。その後ろを続けとばかりについて行くへっぽこリーダー。
林道からも見えた北側の山々が全て見渡せる絶景の支尾根。
景色はいいがけっこうな急登。途中の展望岩まで辿り着いたが『ひたすら登ると』と
書いていたように、この支尾根が派生する大森山の西端まではまだまだの様だ。
展望岩で支尾根の先から少し横に視線を移すと猿田峠から登って来た尾根が見えた。
目視でも地形図を見てもその尾根までの距離はさほどではない。このまま急登を
登るより、トラバースして登山道の尾根へ行ければといういらぬ考えが浮かんできた。
するとあっちゃんが少し横で『道がありそう!』と踏み跡があると言ってきた。
ただ尾根の手前は谷筋になっているので、そこで向こう側に行けるかどうかが問題だった。
迷っていても時間が経つばかりなので、意を決してトラバースをする事に。
踏み跡は最初の方は明瞭だったが次第に怪しくなる。谷筋をなんとか横切り、
尾根に向かってその尾根を見失わないようにして登って行く。
日当たりの悪い斜面はまだぬかるんでいて足が滑る。更には掴んだ木がけっこう
枯れていて、掴む木が無くなかなか上へと登って行けずに前の二人も苦戦をしている。
それでも何とか足元の悪い斜面を登りきると、展望岩から見えた尾根に着いた。
その場所も展望岩があり、西の眺望が広がっていた。今日最後の眺望だ。
展望岩からひと登りすると大森山への登山道に合流した。ここまで来ればひと安心。
あとはロープ場を注意しながら下って行くだけだ。
ロープ場では新しく付けられたアブミが逆に足の置き場の邪魔をして、ルリちゃんが
降りにくそうにして苦戦している。
登山道沿いに最初に見たアケボノツツジは、今日最後のアケボノツツジに。
苦戦したトラバースからこの登山道に合流しておおよそ40分で猿田峠に着いた。
以前に玉取山から兵庫山へ歩いた時も道を間違えて、登山道から外れて苦戦して
何とか林道までよじ登り、その林道を歩いてこの猿田峠に着いた時はホッとした。
今日も林道終点からは予定外の歩きになった。そして中川峠からカガマシ山に
歩いた時も奥工石山へと間違って歩いてしまって引き返したことがある。
この山域は毎回何かと予定外のハプニングが起こる。
猿田峠からはもう何度も歩いた道。先頭を行くルリちゃんは、先ほどのトラバースでの
苦戦していた姿がウソのようにトントンと調子よくいいスピードで降りている。
峠から25分でスタートした白髪隧道の県道へとたどり着いた。
年数にするとけっこうな年月を歩いてきた私だが、とにかくバカの一つ覚えのように
同じような山ばかり毎年登って来た。アケボノツツジの咲く山もその内のひとつで、
今回のアケボノの丘は初訪問にして一気にベストスリーにランクインしてお気に入り、
ブックマークの山となった。また来年の春が楽しみになって来た。その前に、大ブナの
駄馬の秋の黄葉見物かな?(*´▽`*)