KAZASHI TREKKING CLUB

四国の山を中心に毎週楽しく歩いています。

『線で繋ぐ石鎚山~剣山』 立川越~野鹿池山

2022年08月29日 | 四国の山
何だかね~。今月に入って山行予定の週中の天気が毎週パッとしない。そして今週はと云うと、

秋雨前線・台風11号と、テレビの中で気象予報士がみんなこぞってその単語を並べている。

さらに還暦を前に、今年に入って体調もそんなに良くない。天候不順と体調不良が相まって

このところモチベーションがさっぱり上がらない。

先日テレビを見ていると、歌番組に出ている藤井フミヤが同い年だと判った。

以前と変わらない歌声の藤井フミヤを見て奥さんが『へぇ~同い年なんや・・・・!』と仰った。

『その・・・・・・はどういう意味!』『ハイハイ、どうせ皺くちゃな私です。比べんとって

くれるか!』と言ったものの、モチベーションが下がっている所に追い打ちをかけられた。

まぁ~それでも何とか『線で繋ぐ~』は完歩しないとと今週の計画を練る。


剣山系の天狗塚~三嶺は、やっぱり好天の日に歩きたい。そしてどうせなら三嶺でフィナーレを

迎えたいということで、イマイチの天気の今週は四国中央部の野鹿池山から西を繋ぐ事にした。

今日は大歩危から県道272号線(通称:妖怪街道)を西に進んで、徳島と高知の県境の

立川越からスタートして野鹿池山まで繋ぐ計画にした。

先に野鹿池山の登山口に一台をデポして、その後林道のスタート地点まで移動する。

このコース、プチファーマさんの活動日記とルート図を参考にさせてもらったが、

プチファーマさんは単独なのでこの区間を往復している。

片道だけだと5.5km。4時間弱の区間となるので、お昼から天気が下り坂となっても、

早めに到着して雨は避けられそうだ。県道272号線も先月までは時間通行止めのヶ所が

あったのだが、その工事も終わったようなので、あとは奥様たちが運転する車が無事に

野鹿池山の駐車場まで来られるかどうかだ。奥様たちはデポするときは運転を交代制に

しているらしいが、今回はあっちゃんが運転する番だそうだ。細い道の運転は心配だが、

自身で運転する場合は車酔いをしないので、あっちゃんにとっては良さそうだ。




そんな心配をしていたが、集合場所へ向かう途中の大歩危のコンビニで二人にバッタリ。

そこからは二台で野鹿池山の駐車場へと向かって行く。県道272号線から藤川谷川に

架かる橋のガードレールに、野鹿池山とい書かれた案内板を左折。最終民家を過ぎると

杉林の中の道になる。(林道沢谷線)駐車場まではアスファルトの道が続いているが、

前回野鹿池山に来た時に比べて、随分と枯れ枝や石が転がっていて荒れている感じがした。

くねくねと曲がった道を登って行くと駐車場に着いた。天気予報に反して空は青空。

東から北にかけての山々が見渡せた。











駐車場からは私の車に乗り込み、スタート地点になる場所まで林道を移動。(林道下名栗山線)

路面の状態は先程より随分といい状態だったが、ただこの時期、道の両側から雑草が伸び放題で

道路に覆いかぶさっていた。

スタート地点はプチファーマさんがYAMAPにアップしていた二又になった場所。

危うく通り過ぎそうになったが、事前に奥様たちにもプチファーマさんの活動日記をチェック

するように言っていたので、アップしていた写真の見覚えのある二又の場所で、二人が

同時に『ここや!』と声を上げた。一旦Uターンして道の脇に車を停めてスタートする。

土佐岩原駅から黒滝山の時もそうだったが、この区間はさしたる見所もなく、ただただ

線を繋ぐための消化試合だ。なんて思っていたら野鹿池神社の蛇王大権現のバチが当たった

のか、このあとここ最近になく最悪の苦行となってしまった。







二又は右に行くと三傍示山への取りつきに続いている。左上に地道を歩いて行くとカーブの

先は土捨て場の様な広場になっていた。右上には県境尾根が見えるが取りつきが判らない。

少し奥に歩いてみるが、尾根との高度差がどんどん開くばかりで、茂みも深くなるばかり。

一旦カーブの場所まで戻ると、これもプチファーマさんが載せていた写真のグレーチングがあった。

引き返す途中では正面に三傍示山が見えた。グレーチングの奥は籔いていたが、掻き分けて

進んで行くと小さな木の枝に赤テープが巻いてあった。















赤テープの取付きから尾根へと登り、左に尾根に沿って登って行くが道は無く少し藪いていた。

途中で大きな滑車が転がっていたが周りは植栽地でもなく、何に使っていたのだろうか?

尾根筋には木々が密集しているので、少し下をとにかく尾根から外れないようにと登って行く。













プチファーマさんが『始めの内は雑木の籔、「こんなのがずーっと続くのか?」と瞬間心が

折れそうになります。』と書かれていた。たしかに何も知らずに歩いていたらそう思って

しまうだろうな~なんて思って進んで行くと、これもアップされていた大崩壊地が現れた。

YAMAPでの事前学習をしていなければ、ここでも一瞬顔が青ざめていただろう。










百メートル以上に渡って尾根に沿って見事に崩れている。この辺りの山域は雨量が多いのか、

その土質によるものなのか、とにかくこの近辺はそこらじゅうで山の斜面が崩れている。

その中でも航空写真で見てみるとこの崩壊地は最大規模の様で、かなり下の林道までも

到達していた。(旧立川番所書院からの林道は、この崩壊地の土砂崩れの場所は復旧していたが、

さらに上の県境近くで、土砂崩れで道は跡形もなくなっていた。かなりの規模で崩れていたのと、

その道が県道でもないので、作業車は入っていたが、復旧はかなり先になるだろう)










乾いた花崗土は崩れやすく、出来るだけ際を避け尾根の反対側を歩いて行くが、根元から

ひっくり返った倒木に遮られて、なかなか前へ進んで行かない。一度だけ興味本位で

崩れた際まで近づいてみるが、その高さに股間がゾクゾクとした。










結局この崩壊地を通過するまでに、スタートから40分近くかかってしまった。

今まで散々色々なところを歩いてきた奥様たちにとっては、ここでも普段と変わらないと

いった感じで歩いてきているが、家にいるご主人たちは、まさか我が家のお淑やかな奥さんが、

藪やこんな場所をわざわざ歩いているなんてつゆ知らず、なんだろうな~と思ってしまう。

崩壊地を過ぎると最初の三角点に着いた。四等三角点 浦ノ谷 958.7m













三角点からは一旦下って登り返しになる。踏み跡はほとんどないが、樹脂製の県境杭を目印に

短い距離の間で何度かのアップダウン。この辺りまでは二人に先行して調子も良かった。
















途中で道の真ん中に立つブナの木。身体が柔らかくのけぞった感じで見とれていたら、

後ろからあっちゃんが同じように思ったのか『随分と色っぽい木ね~』と。その先で

『今日は登りのコースだと思っていたのに、意外と下りがあるわね』とルリちゃん。








スタート地点が810m。野鹿池山西峰が1,303mなので500m程登ることになるのだが、

たしかにけっこう下る場面も多い。そう思っていると、地形図で尾根と南北の破線が交差する辺りから

急登が始まった。そしてこの急登の辺りからまずお腹の調子が悪くなってきた。破線が交差する

鞍部で二人に前を譲ったら、案の定この急登で見る見るうちに離されていく。

どこまでも続く急登にとうとう二人の姿も見えなくなってしまった。

















喘ぎ喘ぎ登って行くと少し平らになった場所で二人が待っていてくれた。ここであっちゃんは

おにぎりを頬張りながら、『前みたいにシャリバテになったらいかんから、何か口に入れた方が

いいよ!』と言ってくれたが、お腹の具合からそんな気分にはなれない。








ひとまず水分だけ取って先へと歩いて行くと、1029mの標高点の手前から笹が現れた。











樹林帯の中の尾根の右側が開けてきた。少し覗いて見ると笹の向こうに崩壊地が見えた。

ただこちらは上の方の植生が回復しているので、けっこう崩れてから年数が経っているようだ。

そうこうしている内に1029mの標高点に着いた。












1029mと1075mの三角点のほぼ中間地点で、道の脇奥から初めて南側の景色が見えた。

二人が見える山々を指さしながらしきりに山座同定をしているが、それを聞きながらも一緒に

同定する余裕が全くなくなって、脂汗が流れて来た。お腹の調子はマシになってきたが、

今度は反対にシャリバテだろうか?身体がとにかく重たい。それでも展望の場所まで行くと、

南西から南にかけての眺望が広がっていた。





右奥の緩やかな三角形が白髪山



植栽地の一番奥の山並みが高知の国見山辺り



その展望場所から少し先にも岩場の展望所があった。奥様たちは気づかずに先に行ってしまったが、

岩の上に立つと東にこんもりとしたピークが見えた。『え~あれが西峰?まだけっこう

距離があるな~』と不安になる。とにかく前に足が進んで行かない。




四等三角点 鎌の谷 1075.2mでも奥様たちを随分と待たせてしまった。

ここで少し行動食を口にするが、直ぐには効果は現れない。尾根には踏み跡もなく雑木の中を

右に左に歩きやすい方向をめがけて歩いて行く。














するとまた急登が始まった。もう奥様たちの姿は全く見えない。この急登、写真では

分からないがかなりの斜度で、油断すると足を滑らせてひっくり返りそうになる。

上の木の根元をめがけて登って行くがストックは役に立たない。木の枝を掴みながら

身体を持ち上げ、木の根元に足を置いて一息入れながらの繰り返し。

先ほど行動食を口にしたが、体調はほとんど変わらない。これはひょっとしたら熱中症?

かもと思い始めた。ほとんど樹林帯の中のコースだったので、まず思いもつかなかった。

急登の始まりからだと登りきるのに20分近くも掛かってしまった。とにかくもう身体が

動かない。奥様たちには申し訳ないが、このまま北の下にある林道に降りてしまおうかと

弱気な考えが頭に浮かんでくる。











息も絶え絶え何とか急登を登りきると、西峰手前で周りは笹に覆われ始めた。

ここでも奥様たちは待っていてくれていた。熱中症かもと話すと、ルリちゃんが熱中症予防の

ゼリーを譲ってくれ、一気に口の中に入れる。








初めは膝ぐらいの高さだった笹も、次第に背が高くなり顔がやっと出る位の高さになった。

ただここの笹は前回歩いた綱附森の笹に比べると密集度が違っていた。まるで最近特に

薄くなってきた私の頭の毛の様だ。綱附森の笹が20代の頭部だとしたら、60歳を前に

やはり髪質?柔らかくなり、密集度も違うので随分と歩きやすい。

と自ギャグネタが頭をよぎった。











野鹿池山西峰は足元は笹、周りは木々に囲まれたピークだった。以前にあっちゃんと

二人で野鹿池山と黒滝山を歩いた時は、この西峰まで来ていないので、ここから東に

野鹿池山の方まで歩けば、天狗塚までが一気に繋がることになる。(ルリちゃんは

WOC登山部ですでに西峰から東を繋いでいた)








西峰からは駐車場まではほぼ下るだけ。体調は最悪だが何とかもちそうだ。

ブナと笹の尾根道だが、こちら側は先ほどと違ってちゃんと笹の中に道はある。

野鹿池山の途中で線が繋がった場所で駐車場へと折れて行く。











駐車場への下りは野鹿池神社への参道になっているので、下草もきれいに刈られていた。











沿面距離6.6km。行動時間は予定より大幅にオーバーして5時間近くも掛かってしまった。

これも体調不良で奥様たちを待たせてしまった私のせいだ。参道横の水場で顔を洗うと生き返った。

休憩室の建屋の横でお昼ご飯にする。普段はあまり口にしないフルーツだが、ルリちゃんが

持ってきて来た梨を頂くと、瑞々しさに一気に身体がクールダウンしたような気がした。




お昼ご飯を食べ終えて、スタート地点のデポした場所まで車を取りに行く。その後県道

272号線を戻る途中の藤の里公園の東屋でコーヒータイム。ただバーナーのボンベを

買い換えたら何度やっても火が付かず、コーヒーは諦めおやつタイムに。

談笑している内にYAMAPを見ながらルリちゃんが『あれ、黒滝山の所が繋がっていない!』

と言い出した。それを聞いたあっちゃが『え~ほんと。他にも繋がっていないところがあるん

じゃない』と茶化している。するとあっちゃんも心配になって自身のYAMAPを確認して

見ると、あっちゃんも繋がっていない。ガ~~ン!




YAMAPのトラック


スーパー地形図(カシミール)のトラック




ここで奥様たちの性格が出た。この繋がっていないのが許せない。もう一度歩かねばと

言う方と、まぁ~いいんじゃない!と言う方。果たしてどちらがどっち?(笑)

この四国中央部も残すところ2区画となった。三傍示山~笹ケ峰は今日のスタート地点から

往復すれば歩いて行けるが、その先のカガマシ山~笹ケ峰の区間は、愛媛側も高知側も

県道5号線が土砂崩れの復旧作業で通行止めになっている。情報によると工事が終わって

通行できるようになるのは11月だとか。そうなってくるとフィナーレにしたい三嶺周回が

時間的に難しくなってくる。(日が短くなってくるので)なかなか頭が痛いといいつつ、

どう歩こうかと嬉しい楽しい悩み事だ。

残りの区間



今日のトラック

今日はのんびり花散歩!

2022年08月24日 | 四国の山
今週は週半ば辺りから天気が下り気味なので、火曜日に出かけようと奥様たちと

話をしていた。『線で繋ぐ石鎚山~剣山』もカガマシ山から野鹿池山間と、

剣山系は天狗塚から三嶺、そして丸石分岐までが残すところとなった。

今週は丸石分岐から三嶺を予定していたが、火曜日も山間部の天気が怪しくなってきた。

ピーカンの稜線歩きもまだこの暑さだと厳しいが、遮るもののない尾根で雷雨になったら

もっと怖い。もう少し安定した天気の日に歩く事にして、線で繋ぐはお休みする事にした。

代りに少々天気が悪くなっても歩ける場所をと探していたら、ネットにちょこちょこと

黒沢湿原のサギソウの写真があがっているのが目についた。

さっそく奥様たちに提案。せっかくなら以前から気になっていた松尾川温泉からの遊歩道を

登ってみたいと連絡すると、快諾を頂いた。このコースならのんびり歩いても3~4時間。

お昼はお弁当ではなく、どこかでランチにする事にした。これも以前から気になっいていた

松尾川温泉に行く途中にあるハレとケ珈琲を第一候補にしたが、ネットで調べてみると、

水曜日が定休日だったのが最近は火曜日もお休みになっていた。奥様たちには『どこか他に

お店をチェックしておいてください』と前日に伝えて、いつもの道の駅たからだの里に集合した。

このたからだの里。前回の天狗峠に出かけた時に奥様たちがトイレの前で待ち合わせをして

一台に乗り合わせをしようとしたら、職員らしき男性に、『あなたたちのように一日中

停めて置く人が居るから他の人が迷惑する』とこっぴどく叱られたそうだ。いつもはトイレの

前ではなく、奥の池の前に停めるのを、横着をしたら散々な目にあったという。

貞光の道の駅でも以前に張り紙をされた事があった。(ガラガラの第二駐車場に停めていたのに)

段々集合場所にも気を遣うようになってきたが、今日はその職員さんが『第二駐車場なら

停めてもいい』と教えてくれた入り口の交差点にある第二駐車場に二台の車を置いてきた。


道の駅から32号線を南下。JR祖谷口を過ぎ、祖谷橋を渡って県道32号線を祖谷方面に。

途中から松尾川温泉の案内板に従って走って行くと、祖谷橋を渡ってから15分ほどで、

松尾川温泉に着いた。今日はこの松尾川温泉も定休日で、駐車場には一台も車が停まって

いなかったが、それでも少し遠慮気味に端のほうに停めて身支度を整える。








温泉の湯治用の宿泊施設のしらさぎ荘の横に宮石集落へ行く橋が架かっている。この橋を

渡り集落へと道なりに登って行くと、住人らしき女性が道の脇の雑草を抜いていた。

挨拶をすると『黒沢へ?』『虫が多いから気を付けてね』と話をしてくれた。

アスファルト道をそのまま進んで行こうとしたら、後ろからその女性が『黒沢は右よ!』と

教えてくれたが、コンクリートの道はかなりの急登。山間部の集落にあって立派な蔵が

建っている中を登って行く。











集落を抜け、消えかかった遊歩道と書かれた道標を左に折れるが、ここからもかなりの急登。

北に向かっての九十九折れの道から、東へ向きが変わってもしばらくは急登が続いて行く。











スタートから30分ほどで展望所の東屋に着いた。まだそれほど歩いてもいないのに、

気温よりも湿度が高いせいか、とにかく流れる汗が酷い。ロングスリーブのシャツを

めくって扇いでいるとあっちゃんが正面から写真を撮った。『私のシックスパック。

お見せしましょうか!』と言う間もなく、今度は横からパシャ!『いかんいかん、横から

写したらいかん、あっちゃん!』。ト・ホ・ホ~何とも情けないお腹・・・・!











今日は目指す山頂もなく、湿原のお散歩。先を急ぐ理由もないので、のんびりと展望所で

他愛もない話に花を咲かせる。展望所から今度は北東にコンクリート道は続いている。

急登は尚も続いている。これは遊歩道ではないな~なんて思いながら汗を掻き掻き登って行く。











標高が上がってくると、南側に五軒や黒川の集落が松尾川を挟んで向かいに見え始めた。

先月、中津山に登った時に中津神社で夏祭りの準備をしていた人たちがいたが、その中の

おじさんが、自分たちは黒川から来ていると確か言っていたような気がする。







さらにその先では正面に船山。ちょこっと三角の頭を出している中津山。屋島の様な台形の

山の右側には小さく寒峰の頭が見えている。







道の山側に岩壁が現れるとそろそろたびの尻滝が近い。谷側には水の流れる音も聞こえてきた。




黒沢湿原の南端に当たるたびの尻滝は落差5mほどの小滝。角張った造瀑岩の形が特徴的な

この滝は湿原の水を集め、この先で松尾川に注いでいる。ここでルリちゃんは滝の下に。

あっちゃんは滝の上に。やはり高所の苦手なルリちゃんと高所大好きのあっちゃんの

性格が現れている。










あっちゃんが滝を見ながら、『川床や水の色が薄い褐色なの」どうしてだろう?』と

頻りに聞いてくる。帰って調べてみると、どこでも湿原の水は水中の植物のタンニンが融け

込んで、同じような褐色の色になっているようだ。




たびの尻滝でしばらくの間涼んだ後、湿原の東側の遊歩道を歩いて行く。









しばらく歩いて行くと湿原の池になった場所に白い花が散らばっているのが見えた。

遊歩道から湿原へと降りて行くと水面に白い花が咲き誇っていた。この黒沢湿原では

ヒツジグサが有名だが、今目の前に咲いている花はどうやらヒツジグサではなく

ほとんどがスイレンのようだ。ヒツジグサもスイレンも同じようなものだが、スイレンは

明治以降に観賞用に入って来た外来種がほとんどで、日本原産はヒツジグサ1種のみだという。

私には見た目では全く区別がつかないが、ヒツジグサハは白い花のみで直径3~4センチほどで

花弁も少ないという。ということは所々で薄いピンクに色づいている花はスイレンと言う事か。

また目の前で大量に咲いている花も、花弁の枚数が多く花も大きいのでほとんどがスイレン?
















となるとこれだけの数の中からヒツジグサを見つけるのは至難の業だ!














池のスイレンを堪能した後は、ログハウスの横の東屋でコーヒータイムにする事に。

寒い季節には定例だったコーヒータイムも、ここ最近は時間的に余裕がなくなったのが

原因で久しぶりとなる。何と言っても今日は花散歩なのだから!ゆっくりしよう。

ベンチに腰掛話し込んでいる内に何故か“腹筋”の話になった。すると突然ルリちゃんが

ベンチの上で横になって腹筋を始めた。このところ家でも腹筋運動をしているという

ルリちゃんは軽々と何回でも。その横で今度はあっちゃんが『私腹筋は苦手なのよ』と

言いながら試みると、何とか一回、二回。それなら私が挑戦とばかりに横になって

始めてみるも、見る影もないシックスパック。『ん~ん。ウ~ン!』と声は出れども

身体が起き上がらない。慢性腰痛になってから、腹筋運動は怖くて一度もやったことが

なかった。ガ~~ン!ショック!奥様たちには散々笑われた。








そうこうしているうちに東屋の下の湿原で写真を撮っている人の姿が見えた。

その人が構えたカメラ前には白い小さな花が咲いている。『あっ、サギソウだ!』

コーヒーを飲み終え東屋から下の湿原に降りてみると、湿原の際のあちらこちらに

サギソウが咲いていた。名前の通り確かにサギが羽を広げたような可愛らしい花びらだ。









サギソウを一通り観察した後、湿原の北端の駐車場へと向かう。この黒沢湿原は標高

550mほどに位置し、北・東・西は標高600mほどの山に囲まれている。

南北2kmの長さで、幅は100~300m程の湿原で、昭和40年に湿原植物群落が

徳島県の天然記念物に指定され、環境省の国の重要湿地500にも選定されている。

サギソウを始めとする植物だけでなく、貴重な水中生物やトンボも数多く生息している。

指定から50年が過ぎ、ヨシやススキの侵入と乾燥化、オオミズコケの堆積などで荒廃が

進んでいるが、徳島県RDB掲載種(レッド・データー・ブック)は50種類を超え、

里ではほとんど見ることのできなくなったドジョウやメダカが池に生息するなど、

多彩な生き物のすみかとなっている。










北端の駐車場から今度は湿原の西側の遊歩道へと歩いて行く。ここからは木道が続いている。

ロープで囲われた場所にはサギソウが咲いている。

スケールこそ違えど、四国の尾瀬と言われる所以はこの木道と湿原の景色にあるのだろう。

木道の脇には様々な小さな草花が咲いている。




















木道は経年のせいで所々で踏み板が痛んでいて、気を付けないと踏み抜きそうになる

ヶ所がある。後ろから来る奥様たちは度々立ち止まっては何やら写真を撮っている。














たびの尻滝からぐるっと一周してコーヒータイムも入れると、2時間弱かけて戻って来た。

あとは遊歩道を下って行くだけだ。前を行く奥様たちは相変わらず世間話に花を咲かせている。











展望台の手前では、往路では気が付かなかったが、山側の斜面には段々に石積みが残っている。

この辺りまで集落の畑があったのだろうか?













たびの尻滝からは40分弱ほどで宮石の集落が見えてきた。駐車場に着いた時には、また

たっぷりと汗を掻いてシャツも汗でびっしょり。しらさぎ荘の建屋の陰でシャツを脱ぎ、

ズボンの下のタイツも脱ぐと随分とスッキリとした。

今日本来は歩く予定だった奥二重かずら橋から三嶺は16km、10時間ほどのコースタイム。

今までで最長に近い距離と時間に、少し二の足を踏んでいる。かずら橋を7時にスタートしても

名頃登山口に降りるのは17時。日増しに日中の時間が短くなっているのを気にしながら。

一番の問題は朝起きられないあっちゃんが、果たして名頃に6時30分にたどり着けるのか?

歩行距離や行動時間以上に問題なのだ。出来れば今年中には完歩したい『線で繋ぐ~』。

さぁ、そろそろ気合を入れていかなければ・・・・!!


着替えを済ませて楽しみにしていたランチ。あっちゃんがお蕎麦が食べたいと言うので、

本人がチェックしていた蕎麦屋へ。だが向かう途中でそのお店も週末のみの営業と判り、

仕方がないので国道32号線沿いの“あめご亭”で祖谷そばを頂いてみる。つなぎを使って

いない祖谷そばは切れ切れで、特にこのお店は長くても5センチもないくらいに短い。

私は天ぷらそば。ルリちゃんはざるそば。そしてあっちゃんはかけそばの大。

少し甘めの出汁で美味しくいただいた。店を出て直ぐ横のお店で私がソフトクリームを

注文していると、その横であっちゃんがたこ焼きを注文した。痩せた体のどこに入って

いくのだろうか。店内で食べていると店のおじさんは色々と気を利かせてくれた。

特別愛想が良いというわけではないが、さきほどのあめご亭の不愛想な女性店員と

比べると、随分と親切に感じてしまった。

甘いものは別腹とよく言うが、ルリちゃんの大判焼き、私のソフトクリームまでは

理解ができるが、かけそばの大を食べた後にたこ焼きとは・・・・・?これで太らないのが

不思議なあっちゃん。私のお腹の脂肪を是非分けてあげたい!










今日のトラック




『線で繋ぐ石鎚山~剣山』 綱附森北~天狗峠

2022年08月11日 | 四国の山
先週の綱附森。笹の勢いが一番ある時期に歩いたせいか、足元の見えない笹道に

体力を消耗して、距離や標高差の割には疲労度“大”だった。帰宅後FBに写真をアップ

したら、流れ星さんから『ダニは大丈夫でしたか?』とコメントを頂いた。そういえば

昨年も岩黒山の笹海をよじ登った時も、帰ってからダニは?と気が付いた。笹の中を

この時期に歩くのに、少し不用意だったと反省。ダニは大丈夫だったが、駐車場で

アブの集中砲火を浴びて、帰宅後数日間は刺されたほっぺたのかゆみが取れなかった。

登山のルートや時間ばかりに気が入って、他にも色々とあるリスクに対して準備を

怠らないようにしなければと思ったばかりなのに、今週も・・・・・・?。


今日は先週歩いた綱附森の北、1552mのピークと天狗峠を繋ぐ計画。距離にして

2.7kmを繋ぐために、西山登山口から天狗峠まで登り、地蔵の頭を通って、一旦

下って、また折り返して天狗峠へと登らなければならない。笹は綱附森ほどではない

ようだが、地蔵の頭からの下りと登りが、さてさてどうなるか・・・・?


自宅を出て、貞光国道438号線を南下。いつもは見ノ越に向かって車を走らせるが

途中から菅生の標識に沿って小島峠へと向かう。途中で時間通行止めのヶ所があったが

幸い今日は解除されていた。菅生の標識を右折してから約1時間強で西山林道天狗塚

登山口に到着した。西山林道もコンクリートの継ぎ目に雑草が生え、途中落石があったりで

スピードが出せず、いやしの温泉郷からも意外と時間がかかった。

登山口には先行して一台の車が停まっていた。車を降りて準備をしていると、あっちゃん

ルリちゃんが反対の三嶺タクシー側から走って来た。


三人で準備をしていると県外ナンバーの車が一台やってきた。支度が終わり8時過ぎに

登山口の鉄製の階段を登って行く。登山口からしばらくは杉林の中の九十九折れの道。










右に左に折れながら登っているとそれ程には感じないが、実際横を見てみると結構な斜度だ。

相変わらず奥様たちはいいペースで登って行く。YAMAPのコースタイムでは第一ピーク

までが1時間10分になっているが、私の今までの記録では45分位でしたと言っているのに

一向に信じてもらえず、スマホを度々確認する奥様たち。










第一ピークが近づいてくると尾根の幅が広くなり、足元も柔らかい土で歩きやすくなる。

とうせんぼの木が目の前に現れると、第一ピークはすぐそこだ。








予想通り第一ピークには登山口から40分ほどで着いた。

『あら、ほんとだわ!』とあっちゃん。ここで水分補給と行動食を口にする。











第一ピークから少し下ると広い鞍部になる。ここからは稜線まで登り一辺倒。しばらくは

また九十九折れの道が続いて行く。木の根や石交じりの急登を登って行くと、足元に背の

低いミヤマクマザサが現れる。








しばらくすると樹林帯を抜けミヤマクマザサの中の掘れた道になる。振り返ると祖谷山系の

稜線が見えるが、少し雲がかかって霞んでいる。














横を見ると牛の背にも雲がかかっている。南側から雲が流れてきているように見える。

これだと天狗塚にもガスがかかっているだろうな~?







笹原の中にコメツツジが現れると稜線は近い。










登山口から約2時間で稜線に出た。前回WOC登山部で秋に来た時に稜線は霧氷で、寒さに

凍えながら笹の陰で風が当たらないように昼食を摂った分岐の広場に着いた。

広場からひょいっとコメツツジの間を南に抜けると稜線の小さなケルンのある広場。

その稜線に立った途端に南から冷たい風が吹きあがって来た。たっぷりと汗をかいた

身体はすぐに汗が冷えて、奥様たちが『寒い、寒い!』と声を上げる。記念撮影に

三脚を取り出そうすると『寒いから~』と奥様たちに言われて仕舞いこむ。










じっとしていられないので、三人で写真を撮る間もなく天狗峠へと歩いて行く。

天狗峠でルリちゃんが薄い上着を一枚取り出す。天狗峠は以前はイザリ峠と呼ばれていたが

不適切だと言う事で、平成11年からの国土地理院の地図では天狗峠となっている。
















四国で最も高位置にある天狗峠は,生活道よりも煙草や焼酎の闇ル-トとして,地元の

人々の記憶に残っている。天狗峠に立つ道標の綱附森と書かれた南に向かって灌木の中を

登って行くと地蔵の頭と書かれた道標のあるピークに立った。













地蔵の頭からは尾根を左に回り込むようにして下って行くと、ロープの掛った場所に出た。

途中からは四本近くロープがかかっているが、足元がぬかるんでいて滑りやすく、腕の力で

何とかずり落ちないようにして下って行く。











何十メートルあるだろうか、けっこう長く感じるロープ場のさらに先には、反対から

登ってくる人が地蔵の頭によく間違える偽ピークが見える。このピークに今度は岩場が

あるようだ。雲が次から次と流れて周りの景色を変えていく。







最初のロープ場が終わると尾根はテンニンソウの群生地になる。その群生地の先に

短いが二つ目のロープ場があり、ここには岩陰に小さなお花畑があった。


























地蔵の頭を下りきり次のピークに向かって歩いて行く。ピークを越えるとYAMAPで

よく見かけた岩場があった。ただ思ったより短い距離で、奥様たちも難なく下りて来た。










岩場を降りると痩せ尾根の白骨樹の横を抜ける。足元は笹に埋まっているが、先週の

綱附森では一歩一歩足を持ち上げないと前に進めなかったが、このミヤマクマザサは

背も低く、摺り足で歩いて行けるので随分と楽だ。









尾根は次第に広くなってきて、ブナやモミやトチの木の天然林の中の素敵な道が続いて行く。

















天狗峠から1時間20分で、堂床への分岐に着いた。コースタイムより少々遅れ気味。







分岐から前回折り返した1552mのピークまでは1km弱。そして折り返し地点で

前回はお昼ご飯にしたので、『今日も折り返し地点でお昼にしましょう!』と提案する。

距離からして12時前には付くだろうから丁度いい時間だろう。分岐からも

歩きやすい道が続いて行く。大きなキノコや広いヌタ場だろうか、池の様な水たまり、

そして時折姿を現す天狗塚を見ながら歩いて行く。













登山口から3時間50分で前回の折り返し地点に着いた。見覚えのあるモミの木の白骨樹の

横のモミの木の木陰で腰を降ろしてお昼ご飯にする。











お昼を食べ終えてお花摘みにあっちゃんが出かけた。その後1552mのピークから

天狗塚と牛の背の稜線を眺めて戻ってくる途中で『痛い!』とあっちゃんが叫んだ。

どうやら何かに太腿を刺されたようだが、払おうとした手も刺されたという。

刺されてしばらくは痛みが続いて様だが、痛みはまだ多少我慢すればいいけれど、

心配なのはアナフィラキシー。こんな山の中でアレルギー症状がでてしまったらと

考えると・・・・。自身は一度アナフィラキシーが出て、呼吸が苦しくなり、病院で

点滴を打った経験がある。ただその時は山の中ではなかったので、直ぐに車で病院に

連れて行ってもらえたので難を逃れることができた。




ピークから戻って折り返して歩いて行く。すると前を歩くあっちゃんがモゾモゾしている。

立ち止まって刺された太腿の辺りを触って見ると、『ズボンの中に何かいる!』と叫んだ。

ルリちゃんと二人で何やらゴゾゴゾ始めたらズボンとタイツの間からアブが出てきた。

犯人はこいつだった。そしてさっきのお花摘みの時にズボンの中に入ったようだ。私が

後ろに向いている間にルリちゃんが虫刺されの薬を塗って少し落ち着いた。










堂床の分岐から少し歩くと、いよいよ地蔵の頭への登り返しになる。

標高が上がってくると往路ではガスで見えなかった綱附森も見えてくる。東には

カヤハゲの左右に剣山と次郎笈が少しだけ頭を出している。










往路でルリちゃんがどんどん下って行きながら、『これまた登らんといかんのよね~』と

心配していた通り、登り返しの急登は続いて行く。息切れが酷い。








ニセ地蔵の頭の岩場を越えると、本物の地蔵の頭が目の前に姿を現した。奥様たちは

『ほらあそこにロープがあるのが見えるわ!』と言っているが、私には全く見えない。














右手に鹿避けのネットを見ながらテンニンソウの斜面を登ると、最後のロープ場。

足元はまだぬかるんでいるので、腕の力で登るしかない。左手に天狗塚が見えるが

その手前の斜面を見ると、やはりかなりの斜度なのが判る。ただ急な斜面は下るより

登る方が意外と簡単だ。ロープ場は思ったより短時間で登りきることができた。














ロープ場を登りきると木の枝に木の札が掛けられていたが、字が消えかかって見えない。

するとその木の札の後ろの岩の陰に小さなお地蔵さんが佇んでいた。

奉納地蔵と刻まれた無年紀の地蔵尊はが京柱峠の方角に向いて立っている。一説では

この地蔵尊は一揆の首謀者の一人ある円之助を供養するために立てられたといわれている。








地蔵の頭から天狗峠へと下って行く。天狗峠では往路では気づかなかったが、このところ

三嶺周辺で問題になっている落書きがここにも書いてあった。











天狗峠から稜線を歩き天狗塚への分岐まで戻ってくる。往路は寒さであまり余裕がなかったが

気温も上がり風も止んだのでゆっくりして三人で写真を撮ってみる。




朝は少し曇っていたが、北側には矢筈山・落合峠そして寒峰へと続く稜線が見える。

今日は登る余裕がないが、あっちゃんがとても気に入ったという天狗塚も、牛の背と

一緒に『またおいでよ!』と言っている。そしてここから見る地蔵の頭は、南側から

見る山容とは全く違う形に見える。










さぁ~それでは登山口へと降りて行こう。ミヤマクマザサとコメツツジノ間を歩いて行くと、

祖谷系の山々が目の前に広がっている。麓には落合集落がいつもと違う高さから見える。














正面に矢筈山。左手に見える牛の背もこれが最後の見納め。










モミやツガ、ダケカンバが混在する尾根の道を九十九折れに降りて行く。下りで膝が

心配だったあっちゃんが、『今日は痛み止めが効いているのか、スピードが

落ちずに降りられる』と、結構いい感じで下っている。











稜線から下り始めて40分弱で第一ピークを通過。思った以上に二人が早いので、付いて

行こうとスピードを上げて、濡れた岩に足を乗せてしまい滑って尻もちを付いた。










結局第一ピークからも30分ほどで登山口へと帰って来た。今日は岩場があるのが

分っていたので、グリップの効かないシリオPF302ではなく、以前に履いていた

PF46に履き替えてみた。ソールはすり減ってはいるが302よりも随分マシだった

ような気がする。比較的柔らかいソールの302より、少し硬めの46の方が長時間に

なると、足の裏の疲れ方も違うような気がした。いずれにしても靴紐をほどき熱を

帯びた足が解放される瞬間が好きだ。

今日は立ち寄れなかったが、あっちゃんがその形にとても気に入ったという天狗塚。

コメツツジが赤く染まる頃に天狗塚と牛の背の笹原を散歩に訪れてみたいと思う。











今日のトラック

『線で繋ぐ石鎚山~剣山』矢筈峠~綱附森

2022年08月04日 | 四国の山
体調や天候の具合でなかなか進まなかった『線で繋ぐ~』を、おおよそ1ヶ月ぶりに

再開。土佐岩原駅から土佐矢筈山までが繋がっているので、今回は矢筈峠から綱附森

までを繋いできた。といっても前回土佐矢筈山を歩いた時、下見気分で山頂から矢筈峠

へと少し下ってみて折り返したので、折り返し地点から、矢筈峠までが実は繋がって

いない。その間1km弱だが、往復すると1時間程度。今回綱附森から往復して、余力

があれば繋げてみようと言う事にした。但し、今日は綱附森で往復したのでは、次の

天狗塚からの往復がかなり厳しくなるので、出来るだけ綱附森から先まで歩いて、次回

の天狗塚からの距離を短くしたい。そうなると土佐矢筈山へは厳しいかもしれない。


色々と考えながら取りあえずいつもの様に豊浜SAで奥様たちをピックアップ。南国IC

で高速を降り、土佐山田の市街地を抜けて195号線を東に走る。大栃の奥物部美術館

を左に折れ、さらに田中神社の手前で左下に降りて行く。そのまま直進すれば、光石

の道になる。県道49号線(大豊物部線)は笹川に沿って北へと続いて行く。道幅は

次第に狭くなり離合も難しい道になる。GooglMapに載っている八幡宮からはくねくね

道が8km以上続いて行く。案の定後ろの座席であっちゃんが口数が無くなり静かになって来た。

いつもの車酔い。『窓を開けてもいいですか?』と言うので窓を全開にして走る。


矢筈峠には既に高知ナンバーの車が2台停まっていた。準備をしてトイレを済まして

9時過ぎにスタートする。矢筈峠からは東笹林道を登山口に向かって歩いて行く。











林道にゲートがかかり通行止めになった場所の左手に登山口があった。取付きには

高知県側の登山口で時々見かける『熊注意!』の看板。










登山道は登山口から直ぐに樹林帯の中の急登で始まる。短い時間だがその急登をやり過ごすと

小さな水の流れの沢を渡り、しばらくは樹林帯の中の道。










その樹林帯を抜けると笹の色が濃くなってきた。朝露に濡れた笹にズボンの裾は直ぐに

濡れて来た。笹で見えない足元はまだぬかるんでいて、『これは帰りの下りで足を滑らせ

るな~』などと思いながら、その濡れた笹を掴んで登って行く。振り返るとドーム型の

土佐矢筈山の山頂が見えた。








取付きから地形図に載っている最初の小ピークまで登ると。1421mに続く尾根道になる。

笹の背も低く、笹の小道と言った感じだ。その小道に沿ってブナが点在し、所々で見ごたえ

のあるブナの巨木が現れる。











前を歩く奥様たちは相変わらず元気だ。遅れて来るへっぽこリーダーを時々待ってくれている。

成長する途中で、そのまま上に延びると枝葉がぶつかってしまうと気づいたのか、途中から

お互いに避け合って伸びているブナの木!







最初の小ピークから南東に続いていた尾根は、ブナの道が終わると1421mに向かって

北東へと向きを変える。笹の小道から次第に笹の背丈が高くなってくる。










1421mの標高点の手前から笹は身長近くの高さになる。さすがの奥様たちのスピードも

落ちてくる。足元の踏み跡らしい道筋を確認しながら、笹を掻き分け掻き分け進んで行く。








樹林帯の中から目の前が開けると、正面にで~んと横たわった綱附森が見えた。

『ひょっとしてあれが綱附森?』とあっちゃん。たしかに綱附森がまだ随分と遠くに見える。








愚痴を言っても仕方がない。今日は綱附森からまだ先が折り返し地点。先を急いで歩いて行く。










この辺りは笹の背は低く。まだまだ歩きやすい。

少しづつだが綱附森も近づいて来ている。







小さなピークを2回程過ぎると前方にコキアのようなもっこりとした植物が点在していた。

下って近づいて行くと、それはコキアではなくただの萱だった。秋になればコキアの

広場から、ススキの広場になるのだろう。










笹の道は萱交じりの道になる。足元が見えない場所で段差などがあると、とっさに

脇の笹を掴もうとするが、それが萱だったりするのと手のひらを切ったりする。

1460mの標高点の手前からはそんな感じで笹の色が濃くなってくる。

萱原の向こうにはゆったりとした牛の背と三角形の天狗塚が見える。










1460mの標高点を過ぎると、綱附森山頂への最後の登りになる。途中で男性4人の

グループとすれ違う。『どこまで行くの?』と聞かれ『今日は綱附森よりさらに先まで

予定しています!』と言うと、『元気やな~我々は山頂までで、もうへとへとや~』と

笑って答えてくれた。














山頂が近づいてくるにつれ、笹の勢いはさらに増してくる。笹の茎は斜面の下に向かって

伸びているので、下りはそのまま足で踏みつければいいのだけれど、登りの時は足を持ち

あげないと、茎に絡まってしまう。一歩一歩踏み出すたびに茎や葉の負荷がかかりながら

足を持ち上げるので必要以上に体力を消耗する。振り返ると土佐矢筈山に向かって、歩いて

来た稜線が続いている。











山頂直下まで来ると左手正面に天狗塚。そしてそこから東に三嶺への稜線が続いている。

天狗塚の南斜面の土砂崩れで痛んだ山肌が痛々しい。







山頂手前では笹の下の踏み跡も判らない。ただただ笹の中、空に向かって登って行く。




駐車場から2時間45分。ほぼコースタイムだったが、笹原歩きでかなり疲れた。

山頂に着いた途端にザックを降ろして腰を降ろした。そして熱中症対策ゼリーを

直ぐに口に入れる。歩き始めてからずっと額からの汗は流れぱなっしだ。

『お昼ご飯はどこで?』といつものように聞いてくるあっちゃん。ルリちゃんと私が

同時に『折り返しの地点で!』と答えると、『え~~!』とあっちゃん。

山頂からは360度の眺望。前回の登った中津山から始まり祖谷系の山々。

そして高知でもっとも厳しいと言われる石立山。更には梶が森も見える。
















今日の折り返し地点は本来なら堂床の分岐まで行けたら、次の天狗塚からの往復が楽になるが

1552mの標高点辺りでと考えていた。それでも今日のこの天気と笹の勢いからして、結構

時間がかかるかもしれない。山頂で10分ほど休憩した後、1552mに向かって下って行く。

山頂からは正面に三嶺を見ながら稜線は続いている。











相変わらず笹の勢いは強く、踏み跡はほとんど分からない。こうなってくると両手の

ストックは邪魔になる。ストック二つを片手に持ちながら、笹を握って下って行く。











祖谷側からだと落合峠辺りからこの稜線は眺めることができるが、やはりいつもと違う

高知側から見る山々は最高の景色だ。進んで行くたびに正面に見える山並みが変わって行く。

振り返ると綱附森が『また戻っておいでよ!』と手招きしているが、あの笹の海の斜面を

登り返すと思うと、少し気分が落ち込む。


右端の白髪山から三嶺への稜線


左端の天狗塚から西熊山への稜線






1552mの標高点との間にある小ピークあたりで、急に体が重くなってきた。今まで

水分は取って来たので、完全にシャリバテだ。前を歩く奥様たちに『ここらへんで引き返し

ませんか!』と、喉まで出かかった言葉を飲み込んだ。そして振り返るとまた登り返す

綱附森は益々遠くなっていく。『ふう~!』







次に見える小高い場所が1552mか?。あと少し我慢をして歩いて行く。





奥様たちは脇目もふらずどんどん先を行く。『お~い!そろそろ折返し地点やで!』と

大きな声で叫ぶとやっと立ち止まった。白骨樹の先の木陰でやっとお昼にする。

お腹が空き過ぎて逆にもう食欲が出ない。コンビニで買った冷麺を残してしまい、

いつもは食べないドライフルーツをルリちゃんに貰って口にする。ほどよい甘さが

丁度いい。やはり綱附森の山頂辺りで行動食を食べるべきだったが、その行動食も

今日は持ってくるのを忘れていた。(反省)














30分ほどで昼食を済ませて折り返して行く。次回、天狗塚からの折り返しの目印は

立ち枯れたモミの木。地蔵の頭からの下りと登り返しが気になるが、険しい上り下りと

今日の様な笹原地獄とどっちがしんどいだろうか?







綱附森との中間地点の小ピークではルリちゃんは尾根筋を、あっちゃんは小ピークを巻く

ようにして続いている踏み跡を辿って行っている。当然私は楽そうな巻き道のあっちゃんに

付いて行く。小ピークを巻いて綱附森の大きな図体が姿を現した。尾根を歩いてきている

はずのルリちゃんの姿が見えない。呼べど叫べど返事がない。あっちゃんが電話をかけると

何とか電波が届いて話が出来て、逆に姿が見えない私たちを山頂で探していたようだ。








山頂からの尾根の肩にある樹林帯を抜けると、もう日差しを遮るのもが無い。













山頂が近づいてくるにつれ、笹の勢いは益々強くなってくる。笹の斜面に走る筋は、

もう踏み跡なのか獣道なのかは分からない。足元が全く見えない状態で笹を掴んで登って行く。

笹を掻き分ける度に、とても小さな虫と白い埃が舞い上がる。

足を持ち上げて進むが笹の茎に絡まって度々転びそうになる。さすがのあっちゃんんも立ち

止まって『ふう~~』とため息。














それにしてもルリちゃんは馬力がある。止まる事無く黙々と登って行く。一番斜度のある

場所を乗越すと綱附森の山頂標が見えた。








山頂に着いてたっぷりと水分補給をする。熱中症対策のゼリーと500mlのスポーツ飲料を

もう3本飲んでいる。いつもならこの3本だけしか持ってこないが、今日は土佐山田の

コンビニでもう1本買い足したのが良かった。後は下り、この1本でなんとかもつだろう。

矢筈峠への稜線には南側からガスが登り始めた。このままガスがかかって日差しを遮って

くれればと思いながら下って行く。








山頂直下の背の高い笹道を抜けると笹の背は低くなり、少しは歩きやすくなる。

今度はルリちゃんが足が攣りそうになり、漢方薬を飲む。その内に私もいつもの左足の

太腿と指先が怪しくなってきた。











コキヤもどきの萱原を抜け、1421mの標高点辺りからは道にもガスがかかり始めた。










笹に埋もれた最後の急坂では往路で思っていた通り、笹の下のぬかるんだ斜面で尻もちを付いた。

その急坂を下りきると樹林帯の暗がりの先に、登山口の林道が見えてホッとする。

登山口から駐車場までの東笹林道の先には土佐矢筈山が顔を覗かせていた。

今日の歩行距離は沿面距離で13km。標高差も950m程度で、距離も標高差もさほどでも

なかったのに、とにかく足元の見えない笹の登りで足を持ち上げながら歩くのが堪えた。

もうすぐ立秋とはいえ、まだまだ暑さはこれから本番の様子。熱中症にだけは十分に気を付けて

いかなければ。必要以上に飲み物を持って行くのも忘れずにと思った。








今日のトラック