日々雑感「点ノ記」

備忘録(心の軌跡)

新しい知識(遺跡調査における水準儀の据え方)

2012年06月26日 | インポート
今日、自分にとっては新しい知識である、遺跡調査における水準儀(レベル)の据え付け方を教わった。

大村市竹松遺跡の発掘調査に、アルバイト作業員として使ってもらっているのだが、測量経験があるということで、時々測量作業の一部をやらせてもらっている。

測量作業と言っても、私の方は測量人夫役で、反射プリズム(ミラー)を持って移動する、最も楽な役目ではある。

ピンポールに取り付けた反射プリズム(ミラー)の高さを、決められた高さに設定し、、反射プリズム付属の円形気泡管にてピンポールを鉛直にして目標とする測定地点に立てるという、とてもシンプルな作業である。

そのようにして立てられたピンポールの反射プリズムの中心位置を、測距、測角一体型の測量器械であるトータルステーションの望遠鏡で視準し、それらの目標地点の三次元座標値(X座標値、Y座標値、標高値)を求めるための観測を行なう。

本日の朝には、水準儀(レベル)を設置するように指示を受けた。

測量屋にとっては、水準儀(レベル)の設置というのは、最も簡単な作業ではある。

最近、一般的によく使用されている水準儀(レベル)は、自動レベルと呼ばれている物で、そのレベルに付属している円形気泡管のほぼ中心位置に気泡を誘導すると、器械内部の仕組みによって自動的に器械の視準軸が水平になるように作られている。

三脚に自動レベルを取り付けて、三脚を任意の場所に固定し、3個ある自動レベルの整準ネジを使って円形気泡管の中央に気泡を導く。
水準儀の高さは任意の高さで良い。

それにて水準儀の据え付けは完了となる。

この時の要領として大事な事は、円形気泡管の気泡は、レベルに正対した時に、隣接する2個の整準ネジを左右の手の親指で逆方向に同時に回転させて気泡を誘導するということ。

左手の親指が動く方向に気泡は動くようになっているので、左手の親指で操作する整準ネジを左側に動かす場合、要するにレベルの上方から見て整準ネジを右回転させる場合には、同時に、隣接する別の整準ネジを右手の親指にて右側に動かす、要するにレベルの上方から見て整準ネジを左回転させると、円形気泡管の気泡を左側に移動させる事が出来る。

以上は、一般的な測量作業における水準儀(レベル)の据え付け方であるが、遺跡調査の場合の水準儀(レベル)の据え付け方は特殊な据え付け方になっているとの説明を受けた。

要するに、設置した水準儀(レベル)の水平視準線が、ある一定のキリのよい標高値となるようにして据え付けるのだという。

このようになってくると水準儀(レベル)の据え付け方が、少し面倒ではある。

後視として視準する、標高が既知の基準点に立てた標尺の水平視準の読みが、ある数値になるように水準儀(レベル)の高さを調節しなければならない。

例えば後視点(標高の基準となる基準点)の標高値が、10.967mだったとする。

その、標高が既知な基準点を用いて、水準儀(レベル)の水平視準線を標高11.500mになるようにするには、標高10.967mの基準点に鉛直に立てた標尺の読みが、0.533mとなるように水準儀(レベル)を据え付けなければならない。

すなわち、10.967+0.533=11.500ということだから、そういうことになる。

まず、通常の据え付け方にて水準儀(レベル)を据え付けて、その時の後視点(標高の基準となる基準点)に鉛直に立てた標尺の水平視準の数値を読み取る。

仮に、0.533mより小さい数字であれば、三本の三脚を伸ばしてから水準儀(レベル)を整準(水平に設置すること)し直し、その時の標尺の水平視準の数値を読み取る。

そのような調整をしながら、水平視準の数値が、0.533mとなるように調整していく。

最終的に水平視準の数値が2~3mmの程度まで近付いたならば、水準儀(レベル)の3本の整準ネジを、3本同時に上下させる事によって微調整をする。

水準儀(レベル)の整準ネジの調整幅が数mm程度はあるので、そのような事が出来る。

そのようにして据え付けられた水準儀(レベル)の水平視準線は、標高11.500mを常に示している事になる。

ひとつのエリアにおいては、常にそのような水平視準線の数値(標高11.500m)となるような据え付け方で統一するという事が、遺跡調査での水準儀(レベル)の据え付け方の特殊性だという事である。

例えば、その水準儀(レベル)の水平視準によって、任意の地点の地面に鉛直に立てた標尺の読みが1.500mであったとすれば、11.500m-1.500m=10.000mであるから、その地点の地面の標高は10.000mという事になる。

遺跡調査の水準儀(レベル)の水平視準線を、このようにキリのよい標高値となるような据え付け方法にする理由は、誰が水準儀(レベル)で標尺をを読んでも、最終成果の図面等の標高値に間違いが生じないようにという事のようだ。

遺跡調査における水準儀の据え方という新しい知識を得る事ができた日だったが、この歳になっても、新しい知識を得ることが出来ると、何か得をした気持ちになれる。


豊田一喜