怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

森林飽和

2012-11-17 08:42:46 | 
ファクトファインディングが満載で一般書なんですが漠然と常識と思っていたことが覆され知的刺激に満ちた本です。

現在の日本の森林はかつてないほど豊かです。江戸時代以降の里山は人間に収奪され尽くされたほとんど木の生えていないような禿山でした。
それは広重などの浮世絵を見てもわかります。そこに描かれているのは山中もまばらな木があるだけではげやまも多い。明治に入ってもさらに木は刈り出され、山は荒廃していく。治山と砂防は一体のものだが、疲弊した山は土砂崩れをもたらし川に土砂を流していった。海にたどり着いたそれは海岸の飛砂となって人々を苦しめた。そのため江戸時代から海岸に松を植え防風林として行った。砂地の海岸には松が適合していて白砂青松の風景が出来てきたのです。
戦後は荒廃した森に植林をすすめ、治山砂防事業が進展して行ったのだが、60年代から化学肥料、化石燃料が大量に使われるようになると、木材需要が減少して林業は衰退していった。しかし植林した木は育っていき、現在の日本は400年ぶりに豊かな森となっている。
その結果表層崩壊は大幅に減っているし、海岸での飛砂も減って砂浜が後退している。
表層崩壊は広葉林でも人工林でも成長した木は風化土壌層の崩壊を防ぐことが出来、その効果はほとんど変わらない。自然林が優れているわけでもないみたいです。
森林の水源涵養機能についていうと森林が伐採されても健全な森林土壌が育っていれば水源発揮機能は生きている。間伐されずに放置されていた人工林や下草が鹿に食われた広葉樹林では地表流が起きる。水源涵養機能についても必ずしも天然林が優れているわけではないのです。
森林は水を貯める自然のダムといわれるけど、実は森は水を使う。森に降った水は樹木の蒸散作用で一部は地表に届かない。森林を伐採すると水の流出量は増加する。う~ん、考えてみると分かるけど思い込みで森があると水が増えるような感覚でいました。
森林が洪水を緩和することはあるのですが渇水期に森が水を供給するわけではないんです。
豊かな森になることによって表層崩壊の山崩れが大幅に減り河川への流出土砂量は減少している。その結果河床低下を引き起こしているし、海岸侵食が大規模に起こっている。これは自然破壊の結果ではなくて森林が飽和してきたから・・・
それでも豊かな森林といっても人工林は荒廃し、天然林は放置されている。新しい森林の原理に基づく保全利用が必要ということです。
NHKブックなので読みやすく写真や図も多く250ページは一気とはいかなくてもすぐに読み終えることが出来ました。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする