池袋ウエストゲートパーク「ＰＲＩＤＥ]

ご存知石田衣良の人気シリーズ「池袋ウエストゲートパーク」の１０作目です。
池袋のトラブルバスター真島誠とゴールデンボーイズの帝王安藤崇。マコトに飛び込んでくる数々のトラブルとタカシとの絡み。スピード感のあるテンポのいい文章で小気味良く展開していく。確か以前にもこのシリーズをレビューしていたと思います。
マコトに飛び込んでくるトラブルは時代を映し出したもの。凡百の報道よりも問題を分かりやすく示してくれる。都会にはいろいろの問題があり、その裏で甘い汁を吸っている奴や弱いものを虐げている奴が何と多いものか。水戸のご老公にはなれないけど、マコトが走り回り「タカシ」の力を借りながら、それなりに解決していく。胸のすく展開です。といってもガキの帝王「タカシ」がブランド物の服に身を固め、ド高い車に乗って、手下を引き連れていく姿は、ガキを束ねるカシラと言えばありそうな都市伝説。どうやって金を工面してどうやって組織を維持しているのか突っ込みどころ満載ですが、ありそうな都市伝説と思うと気にせず読めます。

今回の１０作目で取り上げられている問題は、携帯電話の個人情報、地下アイドル、ピクト自転車、貧困ビジネス、いずれもビビッドな現代社会を映し出している。
年齢を重ねても売れないアイドルを辞めれず地下劇場で歌い踊ってアルバイトしながら暮らしている。そんな地下アイドルにもおたくファンはいる。お互いにいい加減に目を覚ませよと言いたくなります。それでもアイドルを辞めれずいつかメジャーになるのを夢見ている。マコトはそんな姿に密かに頑張れよと暖かい声をかけている。
時折話題になる貧困ビジネス、ホームレスを囲い込み、保護費をピンはねするビジネスをこうやって楽しみながら誰にでも分かるように描写するのは小説という場でしか出来ないかもしれません。現実にはこんなに分かりやすい悪といえないことが多いのでなかなか解決できないのですけど、多分そういう新聞記事など読んだこともないような人たち（この本の読者の多くもそうだというと失礼なのでしょうが）にも問題の所在をきちんと示している。
読みやすいのでページがどんどん進むスピード感で、すぐに読み終えれるのが玉に瑕？気分転換には一番ですね。