怪しい中年だったテニスクラブ

いつも半分酔っ払っていながらテニスをするという不健康なテニスクラブの活動日誌

田原総一朗「殺されても聞く」

2021-03-26 07:16:06 | 
老いても情熱を失わずに元気な田原総一朗さん。1934年生まれなので私より20歳年上。
この本を書いている時には84歳。
田原さんは50年を超えるジャーナリスト活動の中で各界様々な人と議論して「日本というこの国を、この先いったい、どうするのか」という質問をしてきた。

でもやっぱり老いてきたのか、この本では人生を振り返っていて、特に印象に残ったやり取りを回想したもの。すでにあちこちで発表されていて何回も聞いた、読んだという部分もあるのですが、それはそれで改めて興味深く読むことができました。
何と言ってもハイライトは1993年5月の宮沢喜一首相とのインタビューで、結果としてここから紆余曲折を経て内閣不信任が可決され、衆議院解散、自民党の下野という天下大乱の政変をもたらしたものです。
それはそれとして田中角栄をはじめとする歴代の総理大臣(岸信介はやめてからかなりたってですが)のインタビューを読んでいくと政治家としての人間力と言うか器が自然にあぶりだされていて、ある意味田原総一朗の見た政治家の通知表になっています。
逆にここに出てこない総理大臣は語る価値もないということ?
例えば森喜朗とか海部俊樹とか…
野党の政治家も出てくるのですが、その顔触れは小沢一郎、仙谷由人、鳩山由紀夫、不破哲三の4人。総理大臣だった菅直人も野田佳彦も語るべき内容がなくここに載せる価値なし…
ところで歴代総理大臣の中で格別に魅力的なのはやっぱり田中角栄。大変な勉強家で日本列島改造論にあるように構想力もすごい。でも金権体質は異常で田原もインタビューをしたら分厚い封筒に入ったお金をもらったが、すぐに返している。実はこういう場合お金を返すのは難しくて嫌われて二度と話が出来なくなるみたいだが、なぜか田原は無事返すことが出来ている。それがジャーナリストとしての田原が今に至っても信頼をされている所以だと自負している。田中からもお金をもらわなかったということが、その後誰からも受け取らない言い訳としては納得してもらったと。
ロッキード事件については田原の見立ては政治献金としてお金を受け取っていたが、収賄というようなものではないだろうと。収賄の本命は中曽根のP3Cだと思われるのだが中曽根はそこはずるく逃げのびている。官房長官だった藤波孝生をはじめ周りを弾除けにしつつ、風見鶏よろしく強い方になびき、やめる時も醜悪に居座ろうとした姿には個人的には好きになれません。
安倍については素直なおぼっちゃまという評価か。右翼的な取り巻きのお友達の言うことを素直に聞いて実行している。安倍本人にどれだけの構想力があるのだろう。お友達優先で何をやってもいいという政治は森友、加計、さらには桜を見る会でも顕かだ。
それにしても田原さん、年齢を感じさせないバイタリティです。
因みに一緒に写っている今野敏「神々の遺品」は、一時話題になったグラハム・ハンコックの「神の刻印」とか「神々の指紋」をうまく取り込んでミステリー仕立てにしたもの。今野敏の小説は気分転換には最適。楽しみながらすいすいと読めます。
前後して同じ今野敏の同じ探偵の出てくる「海に消えた神々」も読みましたが、こちらは琉球大学の木村教授の海底古代遺跡論を取り込んだもの。

さらに今野敏でもう1冊、警視庁強行班係樋口顕シリーズの「回帰」です。
今野敏の小説は謎解きとしては物足りなく、たいていは分かりやすい見立てに沿って走る本流の捜査陣に対して違和感を感じる主人公が事件の真相に迫る捜査過程の組織と人間関係の葛藤が面白くて、最後の事件解決はあっという間に展開するのですが、それがテレビドラマの刑事ものの原作に多く使われているところでしょう。


コメント
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