いや~、相変わらずの森見ワールド。笑ってしまいます。
走れメロスを始めとした山月記、藪の中、桜の森の満開の下、百物語という古典的名作を、背景を森見ワールドに置き換えて書いてみるとこうなったという連作。
読んで一番よかったのは「山月記」ですか。桜の森の満開の下と百物語は読んだ記憶がなく、何となくあらすじを売ろ覚えているぐらいなので、ちょっと評価しづらかったですけど、機会があれば読んでみようかとも思いました。まあ、いずれも確たる評価がある古典と言っていいものなので、どれだけおちゃらけても怒る人はいないのでしょう。
で「山月記」ですけど、何やら常人には理解できない底知れぬ大物ぽい孤高の学生、斎藤秀太郎。文学にすべてをかけ、ドストエフスキー的大長編の完成を目指して一心不乱に文章を書いている。ただし、何時まで経っても完成することなく読んだものもいないのだが、そんなことには歯牙にもかけず同期の仲間が卒業して社会人になっていくのを「社会の歯車」になるだけの凡人とみなし、自分は才能にふさわしい名誉を得て死後100年斎藤秀太郎の名を遺すと嘯く。
しかし、モラトリアムは永遠には続かない。
才能への自負はどんどん肥大しても小説は一向に書けない。言葉は繋がろうとせずてんで勝手に散らばり、書くことを諦めざるを得ない時が来る。
認めたくないそのことを認めざるを得ない時に大文字山へ駆けのぼって行き、そこで住みつき、ついには天狗となって登ってくる人を脅かす存在になり果てている。
何となく超俗世間で文学なりにのめり込む人って学生の頃にどこかにいたような。というか自らの才能を過信して何者かになるという自意識過剰な面は自分の中にもどこかに潜んでいた気がする。まあ、私は俗物の集まりのような経済学部だったので、実際にのめり込んでいくのは周りにもいなかったのですけど、心の中の片隅で自分は斎藤秀太郎になりたい思っていた人は結構いたかも。
もう一つ紹介すると「走れメロス」。原作を全くひっくり返してしまい、誰も信頼しない主人公詭弁論部の芽野と親友が約束を守るとは全く信じない芹名。大学を牛耳る図書館警察の恐怖支配と王たる最高権力者の図書館警察長官。罰ゲームは大学祭のステージでの桃色ブリーフの踊り。あの感動的な「走れメロス」をこんな風に書き換えてしまっていいのか。神をも許されない所業です。でもバカバカしくて面白い。森見ワールドではおなじみの詭弁論部をはじめとしたメンバーが京都の街を縦横無尽にかけ回ります。
読んでいると愚かでバカバカしくも何の花もない鬱々とした、それでも根拠なき自信だけは肥大していた学生時代がふつふつと思い浮かんできます。こと志と違って残念ながら今は堅気の生活を全うして静かな隠居生活を送っています。
一緒に写っているのは高田郁の「花だより」。副題が「みをつくし料理帖特別巻」とあるように、NHKのドラマにもなった「みをつくし料理帖」のその後です。
澪は永田源斉と結ばれ大阪で自身の店「みをつくし」を持ち料理の腕を振るっている。あさひ大夫だった野江も大阪高麗橋で「淡路屋」を再建して店を切りまわしている。江戸と大阪を舞台にそれぞれ順風満帆のようで問題もあり奮闘しつつ懸命に生きている。もっとも続編なのでドラマを見ているとか本編を読んでいないと登場人物の機微が分かりにくいというか面白みが分からなくて興味半減かも。もちろん特別巻だけでもそれなりに面白く読めますが、本編は文庫本で10巻、ちょこちょことはいきませんが読みだすと途中で止め難くすいすい読めますのでぜひ挑戦してみてください。出てくる料理を一つでも作ってみたくなること必定。巻末に簡単なレシピも出ています。
走れメロスを始めとした山月記、藪の中、桜の森の満開の下、百物語という古典的名作を、背景を森見ワールドに置き換えて書いてみるとこうなったという連作。
読んで一番よかったのは「山月記」ですか。桜の森の満開の下と百物語は読んだ記憶がなく、何となくあらすじを売ろ覚えているぐらいなので、ちょっと評価しづらかったですけど、機会があれば読んでみようかとも思いました。まあ、いずれも確たる評価がある古典と言っていいものなので、どれだけおちゃらけても怒る人はいないのでしょう。
で「山月記」ですけど、何やら常人には理解できない底知れぬ大物ぽい孤高の学生、斎藤秀太郎。文学にすべてをかけ、ドストエフスキー的大長編の完成を目指して一心不乱に文章を書いている。ただし、何時まで経っても完成することなく読んだものもいないのだが、そんなことには歯牙にもかけず同期の仲間が卒業して社会人になっていくのを「社会の歯車」になるだけの凡人とみなし、自分は才能にふさわしい名誉を得て死後100年斎藤秀太郎の名を遺すと嘯く。
しかし、モラトリアムは永遠には続かない。
才能への自負はどんどん肥大しても小説は一向に書けない。言葉は繋がろうとせずてんで勝手に散らばり、書くことを諦めざるを得ない時が来る。
認めたくないそのことを認めざるを得ない時に大文字山へ駆けのぼって行き、そこで住みつき、ついには天狗となって登ってくる人を脅かす存在になり果てている。
何となく超俗世間で文学なりにのめり込む人って学生の頃にどこかにいたような。というか自らの才能を過信して何者かになるという自意識過剰な面は自分の中にもどこかに潜んでいた気がする。まあ、私は俗物の集まりのような経済学部だったので、実際にのめり込んでいくのは周りにもいなかったのですけど、心の中の片隅で自分は斎藤秀太郎になりたい思っていた人は結構いたかも。
もう一つ紹介すると「走れメロス」。原作を全くひっくり返してしまい、誰も信頼しない主人公詭弁論部の芽野と親友が約束を守るとは全く信じない芹名。大学を牛耳る図書館警察の恐怖支配と王たる最高権力者の図書館警察長官。罰ゲームは大学祭のステージでの桃色ブリーフの踊り。あの感動的な「走れメロス」をこんな風に書き換えてしまっていいのか。神をも許されない所業です。でもバカバカしくて面白い。森見ワールドではおなじみの詭弁論部をはじめとしたメンバーが京都の街を縦横無尽にかけ回ります。
読んでいると愚かでバカバカしくも何の花もない鬱々とした、それでも根拠なき自信だけは肥大していた学生時代がふつふつと思い浮かんできます。こと志と違って残念ながら今は堅気の生活を全うして静かな隠居生活を送っています。
一緒に写っているのは高田郁の「花だより」。副題が「みをつくし料理帖特別巻」とあるように、NHKのドラマにもなった「みをつくし料理帖」のその後です。
澪は永田源斉と結ばれ大阪で自身の店「みをつくし」を持ち料理の腕を振るっている。あさひ大夫だった野江も大阪高麗橋で「淡路屋」を再建して店を切りまわしている。江戸と大阪を舞台にそれぞれ順風満帆のようで問題もあり奮闘しつつ懸命に生きている。もっとも続編なのでドラマを見ているとか本編を読んでいないと登場人物の機微が分かりにくいというか面白みが分からなくて興味半減かも。もちろん特別巻だけでもそれなりに面白く読めますが、本編は文庫本で10巻、ちょこちょことはいきませんが読みだすと途中で止め難くすいすい読めますのでぜひ挑戦してみてください。出てくる料理を一つでも作ってみたくなること必定。巻末に簡単なレシピも出ています。