航空自衛隊に入りパイロットになって憧れのブルーインパルスに配属が決まった時に交通事故に遭いパイロットを諦めなくてはいけなかった主人公空井大祐。航空幕僚監部広報室に配属になり広報のイロハを学びつつ、敵役というか狂言回しにテレビ局の報道記者から不本意にもディレクターに配転となった稲葉リカと掛け合いながら成長していく物語。
自衛隊の性格上、世間からはマイナスの視線を浴び、当然マスコミの報道姿勢にも厳しいものがある。そんな中、専守防衛しつつ、いかにマスコミに自衛隊を売り込んでいくか、結構面白い話になっています。こういう設定の小説では自衛隊の提灯小説かと言われるかもしれませんが、そこはさすが有川浩。小説として十分読みごたえあるものになっています。
取材で有川浩自身が半年航空幕僚監部広報室に通いつめ、この点はまさに稲葉リカのモデル?ひょっとすると徐々に自衛隊に対して理解を深めていく稲葉リカの感覚というのは有川自身が感じていたことか。それくらい自然な説得力がありました。
ここに書かれてあるマスコミの内幕というのは、特に報道姿勢については、自分が公務員として散々同じようなことを経験してきたので、深く納得できます。視聴率を取るためなら相手の感情も事情も無視してよりセンセーショナルなものに、より揚げ足を取り悪役として印象つけれるように、都合のいいところだけを編集して強調する。当時の相手したディレクターたちはそれが正義と思っていたかもしれませんが、その方が視聴率が取れるからとも思っていたのではないでしょうか。一見公正中立を装いながら編集権は彼らにありそこには大きな恣意が入り込んでいます。今思い出しても腹立たしいことばかりです。
民間と違って相手が役所なら絶対に攻撃されないという立場を利用して正義の仮面をかぶりひたすらセンセーショナルに叩く。メ~テレのあのディレクターは絶対に許せない気分です。いかん、いかん、思い出すたびにこちらが感情を制御できなくなる。
そんな理不尽ともいえる扱いを専守防衛でうまくかわしつつ、こちらの印象をよくするように広報していく。陸自、海自と張り合いながら、取り上げられそうな企画を考え、マスコミに売り込んでいく。う~ん、残念ながらわが社にはこんな広報室はなかったかな。防衛ばかりの報道対応でこちらからうまく売り込んだ経験はなかったんだけど、私の経験不足かな…カメラの前で頭を下げたことは何回もあるんですけどね。
さすがに半年間密着取材しただけあって、自衛隊に対するトリビアな(とばかりは言えない基本的なものも含めて)知識満載で、それはそれで面白い。
志と違い挫折した思いを今の仕事の中でうまく昇華して、新たな使命感に羽ばたいていく成長物語としても読めますし、空井と稲葉の恋愛物語としても読めます。でも二人の恋愛はあまり進展がなくてちょっとまどろっこしい。これ以上進展しないのかよ、ちゃんと決着つけてよと思っているうちに読み終わってしまいます。代わりにと言っては何ですが、たぶんアラフォーのけんか相手のような独身自衛官二人がくっついてしまうのですが、それもちゃんと結婚するわけではないのでこれまたちょっと不完全燃焼。
まあ、そんなことも含めて十分楽しめ、400ページを超える分厚い本でしたが引き込まれて一気に読み終えることができました。
ところでこの小説、当初は2011年夏に刊行の予定でしたが、東日本大震災を踏まえて新たに最後の1章「あの日の松島」を書き加えて刊行しています。あの時の自衛隊の働きを抜きにはできないという判断でした。稲葉リカにそのリポーターになってもらうのですが、胸が詰まります。
ところで今の自衛官は安保法制をどう思っているのでしょうか。専守防衛に徹して人を殺さないために訓練し、抑止力を高めているのですが、そうとばかり言えなくなってきそうな時代の雰囲気では…
自衛隊の性格上、世間からはマイナスの視線を浴び、当然マスコミの報道姿勢にも厳しいものがある。そんな中、専守防衛しつつ、いかにマスコミに自衛隊を売り込んでいくか、結構面白い話になっています。こういう設定の小説では自衛隊の提灯小説かと言われるかもしれませんが、そこはさすが有川浩。小説として十分読みごたえあるものになっています。
取材で有川浩自身が半年航空幕僚監部広報室に通いつめ、この点はまさに稲葉リカのモデル?ひょっとすると徐々に自衛隊に対して理解を深めていく稲葉リカの感覚というのは有川自身が感じていたことか。それくらい自然な説得力がありました。
ここに書かれてあるマスコミの内幕というのは、特に報道姿勢については、自分が公務員として散々同じようなことを経験してきたので、深く納得できます。視聴率を取るためなら相手の感情も事情も無視してよりセンセーショナルなものに、より揚げ足を取り悪役として印象つけれるように、都合のいいところだけを編集して強調する。当時の相手したディレクターたちはそれが正義と思っていたかもしれませんが、その方が視聴率が取れるからとも思っていたのではないでしょうか。一見公正中立を装いながら編集権は彼らにありそこには大きな恣意が入り込んでいます。今思い出しても腹立たしいことばかりです。
民間と違って相手が役所なら絶対に攻撃されないという立場を利用して正義の仮面をかぶりひたすらセンセーショナルに叩く。メ~テレのあのディレクターは絶対に許せない気分です。いかん、いかん、思い出すたびにこちらが感情を制御できなくなる。
そんな理不尽ともいえる扱いを専守防衛でうまくかわしつつ、こちらの印象をよくするように広報していく。陸自、海自と張り合いながら、取り上げられそうな企画を考え、マスコミに売り込んでいく。う~ん、残念ながらわが社にはこんな広報室はなかったかな。防衛ばかりの報道対応でこちらからうまく売り込んだ経験はなかったんだけど、私の経験不足かな…カメラの前で頭を下げたことは何回もあるんですけどね。
さすがに半年間密着取材しただけあって、自衛隊に対するトリビアな(とばかりは言えない基本的なものも含めて)知識満載で、それはそれで面白い。
志と違い挫折した思いを今の仕事の中でうまく昇華して、新たな使命感に羽ばたいていく成長物語としても読めますし、空井と稲葉の恋愛物語としても読めます。でも二人の恋愛はあまり進展がなくてちょっとまどろっこしい。これ以上進展しないのかよ、ちゃんと決着つけてよと思っているうちに読み終わってしまいます。代わりにと言っては何ですが、たぶんアラフォーのけんか相手のような独身自衛官二人がくっついてしまうのですが、それもちゃんと結婚するわけではないのでこれまたちょっと不完全燃焼。
まあ、そんなことも含めて十分楽しめ、400ページを超える分厚い本でしたが引き込まれて一気に読み終えることができました。
ところでこの小説、当初は2011年夏に刊行の予定でしたが、東日本大震災を踏まえて新たに最後の1章「あの日の松島」を書き加えて刊行しています。あの時の自衛隊の働きを抜きにはできないという判断でした。稲葉リカにそのリポーターになってもらうのですが、胸が詰まります。
ところで今の自衛官は安保法制をどう思っているのでしょうか。専守防衛に徹して人を殺さないために訓練し、抑止力を高めているのですが、そうとばかり言えなくなってきそうな時代の雰囲気では…