く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<バラ(薔薇)> 〝花の女王〟色・形、変化に富む豪華な花姿から

2013年05月14日 | 花の四季

【次々に新品種、世界でおよそ2万種とも】

 バラほど古くから広く愛され栽培されてきた植物は他にないだろう。美しい花容や多彩な色、芳香から「花の女王」と呼ばれる。北半球の温帯から亜熱帯にかけて百数十種が分布し、日本にはそのうち約15種が自生する。19世紀初頭からこれらの野生種をもとに盛んに品種改良が繰り返されてきた。今では世界におよそ2万品種があるといわれる。(下の写真=ピエール・ドゥ・ロンサール)

 バラの名は棘(とげ)のある草の総称「茨(いばら)」が転訛したもの。漢字「薔薇」の音読みから「そうび」「しょうび」ともいわれる。古くは「うまら」「うはら」とも呼ばれた。日本原産のバラにはノイバラ(野茨)、テリハ(照葉)ノイバラ、タカネ(高嶺)バラ、サンショウ(山椒)バラ、ツクシ(筑紫)イバラ、オオフジ(大富士)イバラ、ヤブ(藪)イバラなどがある。このうちノイバラやテリハノイバラは接ぎ木の台木としてよく使われる。

 「綺麗な花には棘がある」「薔薇に棘あり」。だが、棘のないバラもある。中国原産のモッコウ(木香)バラ。花の色は白と黄の2種類で、江戸時代には渡来し栽培されていた。中国原産では他に四季咲き性のコウシン(庚申)バラやナニワイバラ(難波茨)などがある。ナニワイバラの名は大阪の商人が輸入したことにちなむ。西洋バラは日本のノイバラやテリハノイバラ、中国のコウシンバラ、アジア西部~ヨーロッパ原産のダマスクバラなどをもとに、交配を繰り返す中で生まれた。コウシンバラは「長春花」の別名を持ち、四季咲き性のバラはほぼ全て、このバラの性質を受け継いでいるといわれる。

 

(㊧アンクル・ウォーター、㊨ジャクリーヌ・デュプレ) 

 西洋バラは1867年に発表された新品種「ラ・フランス」を境に、それ以前の品種を「オールドローズ」、それ以降を「モダンローズ」と呼ぶ。オールドローズは花姿が優雅で香りが豊か。対してモダンローズは四季咲き性が多く、色の変化に富む。モダンローズはさらに大輪の「ハイブリッド・ティー系」、中輪の「フロリバンダ系」などに分かれる。「ラ・フランス」はハイブリッド・ティー系の第1号というわけだ。つるバラは「クライミングローズ」と呼ばれ、日本のノイバラなどをもとに作られた。

 ローマ皇帝ネロは暴君として有名だが、バラの愛好家としても知られる。バラに巨万の富を注ぎ、宴の広間にはバラを敷き詰め、天井から花びらが降り注ぐ演出などもした。クレオパトラは毎日バラの香水風呂に入浴し、ナポレオンの最初の妻ジョセフィーヌもバラをこよなく愛した。日本では政治家の吉田茂や鳩山一郎。吉田は日本バラの会会長を務め、バラづくりを趣味とした。鳩山は「ピース(平和)」という品種が特にお気に入りで、私邸(現鳩山会館)の庭に大量に植えさせた。

 

 

(上段㊧つるピース、㊨つるブルームーン、下段㊧荒城の月、㊨テディ・ベア)

 バラは多くの詩歌にも取り上げられた。ゲーテの詩「野ばら」にはシューベルトやウェルナーら多くの作曲家によってメロディーが付けられた。その数、150曲以上ともいわれる。「ラビアン・ローズ」はフランスのシャンソン歌手、エディット・ピアフの代表曲。日本では「バラ色の人生」(岩谷時子作詞)の題名で越路吹雪の持ち歌の1つになった。このほかにもバラをテーマにした歌は多い。「百万本のバラ」(加藤登紀子)、「バラが咲いた」(マイク真木)、「君は薔薇より美しい」(布施明)……。

 英国では15世紀、王位継承を巡って「バラ戦争」が繰り広げられた。赤バラをシンボルに掲げるランカスター家と白バラのヨーク家の戦いは、ランカスター家のヘンリー・チュードルがヘンリー7世となり、ヨーク家のエリザベスを妻に迎えることで決着する。以来、バラは王室の紋章となり国花にもなった。国花と定めた国は英国のほかポルトガル、ルーマニア、ブルガリアなどヨーロッパに多いが、イラン、イラク、サウジアラビアなど中東諸国にも目立つ。

 国内では茨城県がその地名にちなんで約50年前にバラを県花に選んだ。市の花になっている自治体は大阪府の茨木、豊中、寝屋川、岸和田、松原の各市、横浜市、広島県福山市、愛知県西尾市、静岡県島田、富士両市、千葉県市川市、群馬県前橋市など。バラの盛期を迎え、これから各地でバラまつりが開かれる。「バラの香か今行き過ぎし人の香か」(星野立子)。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする