【乾燥・大気汚染に強いため路側帯などに植栽】
バラ科シャリンバイ属の常緑低木。東北以西の海岸などに自生する。乾燥や大気汚染に強く、刈り込みにもよく耐えるため、道路脇の路側帯などに植栽されることが多い。比較的地味な植物で普段はあまり見向きもされないが、4~6月ごろ、梅に似た白い小花をいっぱい付けて存在をアピールする。花の形や放射状の葉や小枝が車軸のように見えることから、この名が付いた。ツバキ科のモッコク(木斛)の花に似ていることから「ハマモッコク」「ハナモッコク」の別名を持つ。
葉の先端が丸いものをマルバ(丸葉)シャリンバイと呼ぶことがある。北限といわれる山形県鶴岡市や福島県南相馬市のマルバシャリンバイ自生地は県指定天然記念物。新潟県佐渡市小川の自生地も市の天然記念物になっている。南相馬市海老浜の自生地は一昨年の東日本大震災で大津波に襲われた。一帯は瓦礫で覆われるなど大きな被害を受けたが、一部は生き残って昨年6月再び開花、地元住民を「地域復興のシンボル」と喜ばせた。
樹皮や根はタンニンを多く含み奄美大島の特産、大島紬の染料になっている。チップ状にして長時間煮沸し、その液に絹糸を漬け泥水で洗う。これを繰り返すうちにタンニンと泥の鉄分が反応して特有の渋い黒い色と光沢が出てくる。シャリンバイは〝泥染め大島紬〟という伝統産業を支えてきたわけだ。だから奄美市の「市花」もシャリンバイ。奄美市は2006年、名瀬・笠利・住用の3市町村が合併し誕生したが、合併を機にハイビスカスとともに市花に定められた。
ただ各地の自生地は危機的な状況に追い込まれている。秋田や山形、福島、石川の各県では絶滅危惧種、鹿児島県でも準絶滅危惧種に指定されているという。最近では園芸品種として花も葉も小さい矮性や花がピンクのものなどが流通している。3年前には和歌山県紀の川市の生産者が育成した新品種が「ベニバナ(紅花)シャリンバイ・ペリドット」の名前で新しく登録された。県も優良県産品として販売を後押ししている。