く~にゃん雑記帳

音楽やスポーツの感動、愉快なお話などを綴ります。旅や花の写真、お祭り、ピーターラビットの「く~にゃん物語」などもあるよ。

<エゴノキ> 愛らしい白い小花が枝に鈴なり!

2013年05月21日 | 花の四季

【別名「チサ」「チシャ」「ロクロギ」「セッケンノキ」…】

 エゴノキ科の落葉小高木で、5~6月頃、小枝に白い清楚な小花を下向きに付ける。花は直径3cmほどで星形の5弁花。7分咲きのような控えめな開き方で、下から見上げると清楚で愛らしい。「スティラックス・ジャポニカ」という学名が付いており、日本全土のほか朝鮮半島や中国、フィリピンの一部にも分布する。エゴノキの名前は果皮を口にすると喉を刺激して、えごい(えぐい)味がすることに由来する。園芸品種に花が紅色のベニバナエゴノキやシダレエゴノキなど。

 エゴノキは「チサ」「チシャ」「チサノキ」「チシャノキ」などの別名を持つ。万葉集には大友家持が越中国司時代に詠んだ長歌に「ちさの花」として登場する。遊女との浮気にふける部下の役人を、都に残した妻子の愛らしさをこの花にたとえて諌めた。万葉集には「山ヂサ」を詠んだ歌も2首ある。ただ、これらの花はエゴノキ説のほか、野菜のチシャやイワタバコ、クスノキ科やムラサキ科のチシャノキ説などもあるという。エゴノキは江戸時代の「伊達騒動」を題材にした歌舞伎「伽羅千代萩(めいぼくせんだいはぎ)」の中にも出てくる。

 材は緻密で粘り強い。そのため古くから器、杖、櫛、コケシ、将棋の駒など様々な材料として使われてきた。ろくろ細工や和傘の骨をつなぐろくろ材にも使われることから「ロクロギ」「ロクノノキ」の異名もある。果皮はよく泡立つサポニンを含み、洗濯石鹸の代わりとしても活用された。そこから「セッケンノキ」とも呼ばれる。楕円形で堅い実はお手玉の玉にも代用された。

 かつては魚やウナギなどを獲る漁にもエゴノキの果実や根が利用された。サポニンには麻酔効果があり、すりつぶして川に流し麻痺して浮かび上がってくる魚を獲った。サポニンは水に溶けると30分程度で分解されて毒性はなくなる。ただ、この〝毒流し漁〟は現在では爆発や電気ショックによる漁法とともに「水産資源保護法」などで禁止されている。

 実は野鳥ヤマガラの大好物。両足で押さえ殻を割って実をついばむ。ヤマガラには木の実などを隠し場所に貯める〝貯食〟の習性もある。山形大学農学部がかつてエゴノキとヤマガラの関係を追跡調査した。その結果「ヤマガラの貯蔵行動はエゴノキの種子を散布させるだけでなく、発芽にも大きく貢献している」ことが分かった。エゴノキの突然変異で生まれた岩手県一関市の「ガンボク(雁木)エゴノキ」は県の天然記念物に指定されている。「奈良坂にわが身漂ふえごの花」(山上樹実雄)。

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