く~にゃん雑記帳

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<京都市美術館> リヒテンシュタイン家の膨大なコレクションから珠玉の88点!

2013年05月22日 | 美術

【ルーベンスをはじめラファエロ、レンブラント、ヴァン・ダイク…】

 スイスとオーストリアに挟まれた小国リヒテンシュタイン。国家元首でもあるリヒテンシュタイン家は膨大な美術・工芸品のコレクションでも知られる。その数およそ3万点。京都市美術館で開催中の「リヒテンシュタイン 華麗なる公爵家の秘宝展」(6月9日まで)には、その中からルーベンスやラファエロ、レンブラント、アンソニー・ヴァン・ダイクの作品など88点が出展されている。ルネサンス期から19世紀前半までのヨーロッパ絵画史をたどる構成。絵画とともに家具や彫刻、タペストリーなども配置し、作品を公開しているウィーン郊外の「夏の離宮」の雰囲気を体感できるように展示を工夫している。

  

 リヒテンシュタイン家はオーストリアの名門貴族で、パプスブルク家の重臣として活躍し、1719年に神聖ローマ皇帝から自治権を授与された。美術・工芸品の収集は5世紀にも及び、英国王室に継ぐ世界最大級の個人コレクションといわれる。3万点のうち絵画が1600点余。特に収集に力を入れてきた画家の1人がバロック期に活躍したルーベンス(1577~1640)で、今回の秘宝展には所蔵する36点のうち油彩8点が出展されている。

 その1つ「マルスとレア・シルヴィア」(上の写真)は縦2m、横2.7mの大作。軍神マルスが就寝中の巫女シルヴィアに忍び寄り、シルヴィアが驚いて身を引く場面を躍動的に描いている。愛の神キューピッドがマルスの左手を取ってシルヴィアへ導く。ローマの建国神話によると、この時に宿った双子の兄弟ロムルスとレムスが長じてローマの建国者になった。

  

 レンブラントはこうした神話や宗教的題材の歴史画を多く描いたが肖像画にも名品が多い。「クララ・セレーナ・ルーベンスの肖像」(写真㊧)は5歳の頃の長女を描いた作品。赤いほっぺが印象的で、かすかに微笑みながら父親の方をまっすぐ見つめる。レンブラントの娘への深い愛情が画面いっぱいにあふれる。だが、その愛娘も7年後、12歳という若さで短い生涯を閉じた。レンブラントの悲しみはいかばかりだったことか。

 レンブラントの肖像画は弟子たちにも大きな影響を与えた。とりわけフランドル地方出身のアンソニー・ヴァン・ダイク(1599~1641)は肖像画の第一人者と称えられ、上流階級の間で人気を集めた。「マリア・デ・タシスの肖像」(上の写真㊨)は気品のある女性の表情とともに絹の衣装の質感に目を奪われる。「ナッサウ=ジーゲン伯ヨハン8世の肖像」も実に生き生きと描かれ、今にも画面から飛び出してきそうな気配すら感じた。ヴァン・ダイクは後にイングランドに渡って宮廷画家として活躍、イングランド絵画界に多大な影響を与えた。

  

 ルネサンス期を代表するラファエロ(1483~1520)の「男の肖像」(写真㊧)は20歳前後の頃に描いた作品。男性の目力に意思の強さが表れる。レンブラント(1606~69)の「キューピッドとしゃぼん玉」(写真㊨、部分)は28歳の時の作品。しゃぼん玉は愛のはかなさの象徴だろうか。18世紀前半の新古典主義の作品や、身近な人物や静物画を優美に描き「ビーダーマイヤー様式」と呼ばれた19世紀後半の画家たちの作品も並ぶ。

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