く~にゃん雑記帳

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<ボストン美術館至宝展> 「吉備大臣入唐絵巻」など国宝・重文級が里帰り!

2013年05月29日 | 美術

【大阪市美術館で開催中、6月16日まで】

 〝東洋美術の殿堂〟ともいわれるボストン美術館の「日本美術の至宝展」(6月16日まで)が大阪市美術館で開かれている。昨年3月から東京、名古屋、福岡を巡回してきたが、この大阪展が見納め。フェノロサと助手・岡倉天心が中心になって進めたボストン美術館の日本美術コレクションは現在10万点を超えるという。その膨大な量にはただ驚くしかない。今回の里帰り展には「吉備大臣入唐絵巻」や快慶作の弥勒菩薩立像、狩野永納作の「四季花鳥図屏風」などの名品が多く並ぶ。

 

 弥勒菩薩立像(写真㊧)は高さ1m余りで、腰を少し左側に曲げて優しい表情を湛える。金箔で光輝き、衣文の流れるような曲線も印象的。像内の奥書に「仏師快慶」と記され、文治5年(1189年)の作と判明した。もともと奈良・興福寺に伝来していたもので、現存する快慶の作品の中では最も古いという。

 〝海を渡った2大絵巻〟の1つ「吉備大臣入唐絵巻」は4巻合わせて24mにも及ぶ長大な作品。後白河法皇が制作させた絵巻コレクションの1つとみられ、遣唐使・吉備真備の活躍をユーモラスに描く。もう1つ「平治物語絵巻 三条殿夜討巻」(写真㊨、部分)は平治の乱(1159年)の約100年後に描かれたもの。軍勢の動きや騒乱の中で逃げ惑う人々の混乱ぶりがリアルに描かれ、合戦絵巻の最高傑作と評されている。

   

 「四季花鳥図屏風」は右隻に春夏、左隻に秋冬を描く(写真㊧は左隻)。作者の狩野永納は山楽、山雪に続く京狩野家の3代目。その流れを汲み、豪華で迫力に富む構図になっている。ボストン美術館は江戸時代の絵師・曽我蕭白(1730~81)のコレクションでも有名。至宝展には11点が出品されているが、その中で最も注目を集めているのが横幅10mを超える巨大な「雲龍図」(写真㊨、部分)。襖絵としては類例のない大きさで龍の頭などが画面いっぱいに描かれている。襖から剥がされたままだったものをパネルに仕立て直した結果、展示が可能になったという。

 長谷川等伯の「龍虎図屏風」や狩野山雪の「十雪図屏風」、尾形光琳の「松島図屏風」、花鳥図を得意とした伊藤若冲の「鸚鵡図」や「十六羅漢図」なども並ぶ。この他、南北朝時代の春日大社の境内を描いた「春日宮曼荼羅図」や奈良・永久寺(廃仏毀釈で廃寺)の堂内を飾っていた「四天王像」、左下に「高山寺」印が押された白描画「弥勒如来図像」なども。

 出品作の中には国内に現存しておれば国宝や重要文化財指定が間違いないものが少なくない。これらの〝日本の文化財〟が海外に流出したことは、往時の社会情勢を勘案しても極めて残念。だが〝世界の文化財〟として散逸を防ぎ、良好な状態で保存されてきたという点では、ボストン美術館に感謝すべきかもしれない。

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