く~にゃん雑記帳

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<上野彦馬賞フォトコンテスト> 身を賭してシリア内戦を激写 一般部門の大賞

2013年05月27日 | 美術

【尼崎市総合文化センターで6月2日まで】 

 「第13回上野彦馬賞―九州産業大学フォトコンテスト受賞作品展」が兵庫県の尼崎市総合文化センター(あましんアルカイックホール)で開かれている。同時に「新井卓銀板写真展」や明治初期の古写真展も開催中で、写真の珍しい技法など過去の世界を覗くこともできる。尼崎での開催は昨秋から東京や北海道、九州各地で開いてきた巡回展の締めくくり。会期は6月2日まで。

   

 上野彦馬(1838~1904)は幕末から明治にかけて活躍した職業写真家で、わが国の「写真の祖」ともいわれる。1862年、故郷長崎に日本初の写真館「上野撮影局」を開き、坂本龍馬や高杉晋作、伊藤博文ら歴史上の人物を多く撮影した。上野彦馬賞は若手写真家の発掘と育成を目的に、九州産業大学が2000年の建学40周年を記念し毎日新聞社とともに創設した。

 コンテストは39歳以下の一般と高校・中学生を対象にした2部門。内外から773点の応募があった一般部門では「シリア内戦、アレッポ攻防」(八尋伸氏)が大賞の上野彦馬賞に選ばれた。政府軍と戦う自由シリア軍の若者の姿を間近からとらえた緊迫感に満ちた5枚組(上の写真はうち2枚)。「独裁政権を拒絶した彼らに選択肢はなかった。戦わねば殺される。だから戦う。しかし、彼らは先の見えない不安さを感じさせない強さがあった」と八尋氏はコメントを寄せている。

 

 毎日新聞社賞の「Lost Place~One Year On,Tsunami JAPAN」(平井茂氏)は東日本大震災被災地の1年後をほぼ同じ場所で撮った5枚組の白黒写真。上下に1年前と1年後の写真を並べることで復興には程遠い現状を訴える。高校・中学生部門のジュニア大賞には2611点の応募作の中から、カラフルな防波堤と青い海・白い雲をバックに2人の若い女性を撮った「Teens」(杉田友里さん)が選ばれた(上の写真㊧)。

 銀板写真を出展した新井卓氏は1978年生まれで、現在、京都造形芸術大学の非常勤講師を務める。銀板写真はフィルムの代わりに鏡のように磨かれた銀板に直接画像を定着させる古典的な撮影手法。複製や引き伸ばしはできない。各作品の前に近づくと電球が点灯して画面が浮かび上がる。一般の写真とは異なる不思議な世界で、福島原発事故で放射能を浴びたヤマユリにはドキッとさせられる美しさが漂っていた(写真㊨は「2012年1月12日、検問所、川内村」)。

 古写真展では上野彦馬と同時代に日本に滞在したマンスフェルトというオランダ人医学教師が所有していた明治初期の風景や風俗写真50点余が展示されている。いずれも初公開で「上野撮影局」で撮った知人たちの写真も含まれている。京都の風景写真の中に金閣寺があった。金閣は昭和25年(1950年)の放火で全焼するが、写真の金閣は再建された今の金閣と違って、各層の外回りに多くの柱が立って屋根を支えている。

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