インドの作家アルンダティ・ロイは、歯に衣を着せぬ舌鋒でブッシュ政権を批判してきた。それは根拠のない批判ではなく、ネットや世界中のニュース、研究成果を採取・分析した結果であり、マスメディアが伝えなかった、あるいは伝えたとしてもほんの小さな記事をもないがしろにせずとらまえた真摯な姿勢の証である。イラク戦争に米石油資本の権益 チェイニーがハリバートン出身であることなど明らか でもあるにもかかわらず、イラク戦争は石油争奪戦との見方は安易にすぎるとしたどこぞの国の知ったかぶりを一刀両断する言説は胸のすく思いだ。しかし、インドの貧しく、開発独裁(でないにしてもそれに近い)の犠牲となっている住民の声に耳を傾けつつ、それらを紹介するロイの本質的立場はグローバリズム批判はもちろんだが、郷土愛とも言うべき身近な者らへの不合理な差別、排除に対する怒りである。
「社会学」という新しい学問が跋扈する日本において良心的な学者はもちろんいるのだが、誰が虐げられし近き者への寄り添いを表現し得たか。サイードもデリダも亡くなった。世界には身近な虐げられし者へ眼差しを向け、想像力/反想像力、富めるもの/そうでない者、持てる者/持てない者といった本源的な差別の構造の解釈・理解によって追及してきた知識人がいた。
ロイがそのうちの一人であることは間違いないが、日本では私の浅薄さゆえ思い浮かべることができない。
「社会学」という新しい学問が跋扈する日本において良心的な学者はもちろんいるのだが、誰が虐げられし近き者への寄り添いを表現し得たか。サイードもデリダも亡くなった。世界には身近な虐げられし者へ眼差しを向け、想像力/反想像力、富めるもの/そうでない者、持てる者/持てない者といった本源的な差別の構造の解釈・理解によって追及してきた知識人がいた。
ロイがそのうちの一人であることは間違いないが、日本では私の浅薄さゆえ思い浮かべることができない。