どうして枯葉には
いろいろな色がついているのだろう
葡萄酒の色
琥珀の色
モルトのゴールデン・メロンの色
きっと風によっては
飲む酒がちがうのかもしれない
〜 田村隆一「秋の黄金分割」〜
台風一過
この街
の
無事
を
ボク
の
無事
を
キミ
の
無事
を
なぞり
ちょうど
輪郭
を
たしかめる
ように
闊歩する
緑
の
絨毯
を
敷き詰めたような
山道
も
野鹿
が
ツノを
落として行ったかのような
折れ枝
も
たしかに
其処
に
舞い降りた
で
あろう
吹き荒ぶ
猛威
の
余韻
を
伝えてくれた
けれど
いま
此処に在る
シアワセ
の
縁取り
を
より濃く
より深く
噛み締めさせて
くれる
舞台装置
の
ようでも
あった
小さな
水溜
を
フタリして
覗き込む
鮮やかな色
の
落ち葉たち
は
原色の似合う
異国
の
外来種
の
魚たち
の
ようで
まるで
小さな
アクアリウム
だ
うんと
遠く
へ
または
うんと
何処かしら
から
飛ばされたり
飛ばされて来たり
して
その
小さなセカイ
で
彩り
を
寄せ合っている
様
は
他人事
とは
想えないよねぇ
そんな
意味合い
を
込めて
キミ
が
強く
握ってくれた
モールス信号
みたい
な
掌
を
ボク
も
同じ時代
に
生き
何れ
枯れていく
タイミングさえ
似通わせられて
よかったよ
と
そんな
暗号文
を
したためて
いつか
キミ
の
ほねまで
抱きしめてみたい
と
想いながら
強く
握り返す
それぞれ
の
樹
それぞれ
の
彩
それぞれ
の
生
近しく
寄り添い
ながら
朽ちていけたら
イイけれど
それより
も
何より
も
それぞれ
の
色づき
に
見惚れ
それぞれ
に
閉じていく
一生
も
ステキなモノ
だろうね
と
認め
合えたなら
じゅうぶん
シアワセ
なのかも
しれないよ
そう
まだ
少しだけ
強がり
を
懐いた
フタリ
の
頰
を
耳元
を
駆け抜ける
風
の
声
が
甘い
恋
の
詩
を
詠みあげながら
宥める
ように
慰める
ように
駆け抜けて
行った
あの
風
の
色
は
たしか
に
深い
紅
だった