第293話. 気になった音楽(67)&(68) Elvis Costello『Alison』&『shipbuilding』

2019-08-11 15:04:06 | 気になった音楽
湖畔人です。

さて、今回もコステロの楽曲紹介の二回目です。後二回か三回コステロ特集をするつもりです。今回は、暗め、渋めの曲を二つご紹介します。
 
一つ目は『Alison』と言う曲です。コステロのデビュー後二曲目の曲ですかね。コステロと言うとパンクとかニューウェーブのカテゴリーで見られる事が多くて、先日紹介した『Oliver's Army』とか『Pump It Up』とかPopだけど尖がった反骨精神が表現された曲がイメージだったのですが、この『Alison』と言う曲は、落ち着いた曲調で、カントリーのようでもあり、R&Bのようでもある、何とも言えない、でも魅力的な曲なのです。歌詞は、嘗て好きだった女性、でももう嫁いでしまった女性に再会して自分の中に未だに恋心が燻っている状態である事を自分で認識して、自分の方がもっと君の事を大切に出来るのになんで君が選んだのは自分じゃないの?的な鬱屈した気持ちをつづったUKの曇り空の様な楽曲です。このさえない気持ちをうまく表現した曲調は、日々の今一つさえない日常にスゴクマッチしていると自分は思っていて、何かとても気になる曲なのです。実際一度もヒットチャートには入ったことが無いけどコステロの代表曲の一つとも数えられていて、カバーも結構されていますね。リンダロンシュタットとか今後ご紹介予定のETBG(エブリシングバットザガール)とかにカバーされていますね。この曲のバックの演奏は、以前このブログで紹介したヒューイルイスアンドザニュースの前身のクローバーと言うバンドが担当しています。またこのクローバーでギターを弾いていたのは、ドゥービーブラザーズでも活躍し、永ちゃんこと矢沢永吉さんのバンドでも活躍したジョン・マクフィーと言うギタリストが担当しています。またコステロを介して好きなアーティストが繋がりましたね。ホント、コステロと言う人は自分の好きなアーティスト達の輪の中心に常にいるのです。ホント不思議な人です。
 
今日二つ目の曲は、『shipbuilding』と言う曲です。政治に翻弄される底辺に生きる人々の悲しみや、やるせなさを歌った名曲です。元々ロバートワイアットに向けてコステロが提供した曲でして、ロバートワイアット名義でUKではそこそこヒットした曲なのですが、自分はコステロ自身がセルフカバーしたこのバージョンが大変好きなのです。フォークランド紛争で寂れた造船の町が復興し景気が良くなるかもしれない事への期待と、一方でこの町の子供達が徴兵されて戦地におもむき帰ってこないかもしれない現実が一方ではそこにあって、この状態は喜ぶべき事なのかどうなのか、一体どう考えればよいのだ?もっと良い目的の為の仕事は無いのか?我々一般人は何と非力で何と業が深い存在なのだ、と嘆く反戦歌なのです。
 
80年代はUKで数多くの名曲が生まれた時代ですが、その多くが敬愛するサッチャー元首相を批判した曲ばかりと言う矛盾もそこにはあって、そうした矛盾を抱えながら、何とも言えない気分でこれらのUKの名曲達を聴いている次第なのです。
 
しかし、政治が作り出す大きな流れに翻弄される一般人の悲哀を歌った曲は、今の我々の心にも染み入って来ますね。バブル以降、特に安倍政権下で長らく浮上できず、地方に多数のシャッター街を抱え、緩く荒廃した今の元気のない日本と、そこに住む我々日本人の少し陰った心にも何かとても染み入って来る曲調なのです。そろそろこうした停滞からは卒業しないといけないですね。スカッとしたいです。
 
次回もまたコステロをやります。
では。
 
湖畔人

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