チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

逢えない

2011年08月01日 16時53分56秒 | 日記
養蚕農家の土間に飛べない蛾が白い羽根をハラハラ震わせて
土間をくるくる回っていた
その二階にはフローリングの上に
これまた飛べない蛾が
無精卵をパラパラ産み落としながら
とぼとぼ歩き回って居た

がらんとした養蚕所に上下に分かれた
二羽の蛾が相手の存在も知らず
自分の命の耐えるのを待っていた

この二羽がもう少し早くあっていたら
自分達の子孫を増やす作業が出来たはずだ

多分繭の出荷の折
1階の土間に1個繭がころりと転がり
2階の板の間にコレも1個繭が転がった

そしてそれぞれの繭から孵化した蛾が
飛び立つことも出来ないから
本能のお相手探しも相手が居ず
上と下に分れたまま逢うこともなく
ただただ時が来るのをひたすら待つているのだ

1階の蛾はオス
2階はメス

この二羽が出合って交尾をすれば
確実に500個の卵が産まれる
その500個はまた次なる卵を生める状態であれば
更に子孫は増えていく

寂しく卵を産むという行為だけを全うして消えていくのと
500頭の蚕が誕生するのでは大いなる違いがある

蚕の蛾を飛べなくしたのは誰
真っ白の美しい二羽の蛾が
なすすべもなく羽を動かしている姿を見て
暫く言葉を失った

そして東京に戻ったいまも
あの白い羽根を震わす様子が目に浮かぶ

誰も手を貸せないことがこの世にある

1人では何事も成就させることが出来ない

目的に向かって動くことが出来るのを幸せに思う
打ち捨てられた二羽の蛾
彼ら自身は何も作り上げるとは出来なかったが
チャコちゃん先生はしっかりあなた方からのメッセージを受け取った

「誰も1人では生きていけない」
協力し合う生き方が尊いーーーと


コメント
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