チャコちゃん先生のつれづれ日記

きものエッセイスト 中谷比佐子の私的日記

着物が繋ぐもの 303

2020年03月16日 15時48分01秒 | 日記
春の着物の展示会が中止される中、それでもしっかりやろうという人たちの心意気の会に昨日顔を出した
着物好きに見てもらおうと思い、何か月もかけて作品作りをした。作り上げたものの評価を知りたい。また購入してきていただくとさらにうれしい。ご自分が自腹を切って会場費を払い、チラシを印刷し飾りつけをして着物たちの晴れ舞台を作り上げる

そこに拍手で迎える人がいてはじめて作った人は安堵する

たったそれだけのために日夜制作に情熱を傾ける。着物は着ていただいてなんぼの世界。ただ反物のまま置いていても着物は眠ったまま。着る人がいて初めて生き生きと輝く

まだ私若いころ、もうなくなった大染色家(本人がそう思っている)が自分の作品は芸術だから着る人を選別する義務がある。というようなことを言うので
「確かに着物は着る人を選ぶけど、着る人も着物を選ぶんですよ、着物は着てなんぼの世界ですよ、芸術作品だ!というのは後世の人が決めるのであって、製作者が自分の染めたものは芸術だというのは傲慢ですよ」

若いということは言葉を知らない、案の定灰皿が飛んできた!「コノあま」それっきりお付き合いはしていない。この方の着物今古着屋で売られている。世間の目の方が正しい

さて昨日の話
二か所に行ったのだが、二か所とも「色」がテーマだった
「櫻で染める」
桜はいろんな種類がありその種類別の色の出し方を研究して染めていた。総じて薄紅色の柔らかく美しい色だ。グレイが勝ったピンク、青みが勝ったピンク、藤色が勝ったピンク、オレンジが勝ったピンク、それぞれ顔に当ててみると、自分の顔が華やかになったり、あまくなったり、愁いを含んだり、大人びたり、全く別の顔になったりとの変化が面白く、会場での滞留時間が長引く

「絹色をめでる」
二か所目はおびただしい色の洪水の中から、さわやかなそして涼しげな色に染める名人の方で、飾り方にも工夫があり、この着物にどんな顔が付くといいのかなと想像をたくましくして眺めるのが楽しい。特にぼかし染めが美しく、たおやかな女人が着たらどんなに映えるだろうと思った

誰がいいかなあと知り合いの顔を思い浮かべて楽しんだ時間だった

作る人が楽しみ、着る人が喜び、見る人が幸せ。それが着物の醍醐味であることを改めて感じた午後だった
コメント
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