副作用の危険が大
医師が日常診療で患者に処方する薬のうち、65歳以上の高齢者に は避けた方が望ましい薬の一覧表を、国立保健医療科学院(埼玉 県和光市)の疫学部長、今井博久さん(49)=札幌市出身=らの研 究グル-プが作った。国内初の試みで、医師や薬剤師だけでなく、 高齢者本人や家族、施設の職員にも参考になる。
保健医療科学院が一覧
高齢になると、いくつかの病気で、何種類もの薬 を服用する人が多くなる。一方で、体の中で薬の 成分を分解、排せつする機能も低下してくるので、 同じ薬でも若い人に比べ、副作用などが起きやす い。今井さんは「お年寄りが薬のせいでふらついて 転び、骨折して寝たきりになつたり、最悪の場合 は心臓が止まったりする例か゛ある」と警告する。
米国では1991年に、高齢者が避けた方がいい基 準となる薬のリストが完成。何度か改訂され普及し ているという。国内では、研究グ-ルプが3年前か ら、日本版づくりに取り組んできた。日本版は、米 国の最新リストと、国内外で高齢者に適切でなかった処方例の報告約 4000の論文をみとに、9人の医師と薬剤師が薬を選んだ。選考基準 は「患者にとって有益か有害かを比べ、益より害が大きく、他に代わり となる薬があるならば、その薬は不適切とする考え方」(今井さん)だ。 4月に公表した日本版は、65歳以上が「常に使用を避けることが望ま しい薬」と「特定の病状がある場合に、使用を避けることが望ましい薬」 の一覧表。薬は合わせて約70種。薬剤名と、避けた方がいい理由が 記されている=表参照=。
主治医と相談
今井さんは「これまで見過ごしてきた高齢者への不適切な薬剤処方を 防ぎ、安全な医療を受けられる一つの指針として、医療現場で役立てて ほしい」と話してている。だが、現場では掲載した薬を使わざるを得ない 場面も予想される。高齢者の知らないうちに、一覧表の薬が処方されて いることもあるかもしれない。「医師はやむを得ず処方するのであれば、 患者や家族に十分に説明し、同意を得てから慎重に投与してほしい。患 者側も慌てて過剰に反応せず、分かった時点で、まず主治医とよく相談 し、気になる症状があれば伝えてもらいたい」と、今井さんは助言してい る。
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一覧表は、国立保健医療科学院疫学部H・Pへ。一覧表に載せた薬の 代替薬のガイドブックが、今年秋ごろまでにできる予定。