弾力性が血流支える「當瀬規嗣解説」
血圧には2つの数値があります。最高血圧と最低血圧です。最低血 圧は、心臓の拡張期に測られるので、拡張期血圧といいます。拡張 期には、心臓と血液が全身へと送られる動脈との間の弁が閉じてい て、心臓が拡張するときの圧力は動脈に伝わりません。でも、動脈 内には動脈の弾力性、つまりしなやかさによって圧力が生じていま す。これを、拡張期血圧として測っているのです。動脈には、平滑筋 と呼ぶ筋肉が取り巻いています。常に緊張して血管の壁に張りを持 たせるのが役割です。自ら積極的に収縮や拡張することはなく、平 滑筋だけでは血液は流れません。血液が流れるには、心臓が必要 なのです。心臓が収縮して弁を開いて血液を動脈内に押し出したとき、 動脈は弾力性があるためにある程度膨らみます。次に心臓が拡張に 転じて弁が閉まり、心臓の力が及ばなくなると、それまで膨らんでい た動脈が元に戻ろうとする力で押されるので、血液は流れ続け、その 圧力が拡張期血圧として測られるのです。つまり、動脈の弾力性のお かげで、血液は絶えず体の中を流れ続けているのです。拡張期血圧 は、動脈が膨らむのに要した力が強いほど高まります。ですから、動 脈がしなやかで柔らかいと、膨らむのに少ない力で済みますので、拡 張期血圧が低くなります。だか、もし動脈硬化が硬くなってしなやかさ を失うと、膨らむために強い力が必要となり、拡張期血圧も高くなるわ けです。「下」の血圧が高めの方、「上」の血圧が低いからといっても 油断しないで、病院へいらしてください。 (とうせ・のりつぐ=札医大医学部長)