北大チ-ム ウイルスが細胞破壊 治療方法の確率に期待
新型インフルエンザ感染によるウイルス性肺炎について、北大医学部腫瘍病理学の田中伸哉教授(45)らの研究チ-ムが、人間での発症メンにズムを世界で初めて解明した。研究チ-ムは、新型ウイルスが肺の細胞を直接破壊することを確認。今後の治療方法の確立につながると期待される。チ-ムは研究内容を国内の感染症専門誌のインタ-ネット版で発表する。
研究チ-ムは、田中教授と、国立感染症研究所(東京)の佐多徹太郎感染病理部長らがメンバ-。同チ-ムは、新型インフルに感染し、昨年8月末に急死した宗谷保健師事務所利尻支所の40代の女性保健師について、保険師の脳や心臓、肺など全臓器の状況を調べた。その中で、両肺が炎症などで通常の3倍の600㌘まで重くなっていたほか、肺胞の表面にある上皮細胞内に新型ウイルスが存在していることを確認。肺胞上皮細胞の中でも、肺胞の収縮を滑らかする表面活性剤をつくる細胞が多数壊れていることも発見した。研究チ-ムは保健師の死因をウイルス性肺炎と特定。表面活性剤を失った細胞が収縮を繰り返す内に崩壊する状況が急激に進行し、結果的に呼吸不全に陥った-との発症メカニズムを突き止めた。田中教授らによると、このを研究を元に、中国地方の病院が昨年11月、新型感染による肺炎で意識不明となった女児(11)に対し、分泌液成分の直接吸入などを実施。その結果、女児は一命を取り留めたという。季節性インフルエンザの場合、ウイルス感染が直接肺内部ではなく、気道上の細胞に限られる。このため、肺炎を起こす場合は、ウイルス感染で弱った肺への細菌感染が主原因になるという。田中教授は「新型ウイルスは、季節性とは明らかに異なる性質を持っており、肺内部を直接攻撃するため、劇症肺炎となる可能性もある。このため、呼吸器疾患を持つ患者や乳幼児などは特に気を付けて」と説明している。
日本小児科学会新型インフルエンザ対策室長の森島恒雄・岡山大医学部教授(小児科学)の話 新型インフルエンザウイルスが肺内部で増殖することは動物実験で確認されていたが、ヒトで実証したのは田中教授らが初めて。今後、新型感染による重症肺炎の治療を的確に行う上でも、大きな意味を持つ画期的な研究だ。