浅田次郎著
「天国までの百マイル 」を読みました。
主人公の城所(きどころ)安男は、自らの会社を倒産させて妻子とは別れ、今は知り合いの会社で働かせてもらっている。
いまや別れた妻子への仕送りもままならぬほど落ちぶれた中年男。
バーで働くフィリピン人ホステスのマリと一緒に生活している。
ある日、心臓病で入院する母を見舞った安男は、主治医から病状の深刻さを告げられ愕然とする。
子ども4人を女手一人で育て上げた母。
そのまま治療を続けても母の余命はごくわずか。
兄弟達はこのままで、と言う。
末っ子の安男は納得できず、借金して母を退院させ、謎の天才外科医にバイパス手術を施してもらう為に、千葉の鴨浦にあるサンマルク病院までの輸送に踏み切る。
衰弱した母をワゴン車に乗せた安男は
あらゆる過去と対峙し、今と対峙し、そして未来への希望を乗せて
100マイル(160km)の道のりをひた走る。
はたしてその先に奇跡は待っているのか――。
泣かせる作家・浅田次郎の作品です。
この本、昔から読みたいと思っていたのですが、いままで手に入らず読み逃していました。
先日、たまたま覗いた古本屋でゲットし、早速、読みました。
どん底に突き落とされた男が再び「幸福」を取り戻してゆく物語です。
病気の母を車に乗せて、100マイル離れた病院まで向かう道中でラジオから流れてきたのは昔懐かしいフォーク・ソング・・・
ピーター・ポール&マリーの「五百マイルも離れて」
If you miss the train I'm on
You will know that I am gone
You can hear the whistle blow
A hundred miles
A hundred miles, A hundred miles
A hundred miles, A hundred miles
You can hear the whistle blow
A hundred miles
この詩が出た時点でもうホロリです!
詩を見てメロディーが浮かんだ方は私と同世代以上ですね。
私が中学生の頃、深夜放送でよく流れていた曲。
「オールナイトニッポン」、「セイ!ヤング」懐かしいですね!
「オールナイトニッポン」のキャスターは当時のニッポン放送アナウンサーである糸居五郎、斉藤安弘、今仁哲夫、高岡寮一郎、常木健夫、高崎一郎の時代です。
「セイ!ヤング」はもちろん”レモンちゃん”でした。
「走れ歌謡曲」と云うのもありました!!
早めに寝て、夜中に起きては雑音まじりのラジオを朝まで聞いていました。
話がだいぶ脇道にそれてしまいました・・・。
バブル時代に一旗あげた男が、会社をつぶし、妻と別れ何もかもなくしてしまう。
何もかもなくしてしまったと本人が思っている時でも生きている限り誰かが支えてくれています。
お金がある頃には気がつかなかった他人の情けにお金がなくなって気がつきます。
お金があってもなくても変わらない母の愛情。
こんな自分を雇ってくれている昔の友人。
お金がある頃は見向きもしなかったデブのホステス。
離婚してからも母を慕う元妻。
この100マイルの旅を終えたとき主人公は生まれ変わります。
そして読者も主人公と共に感動的な旅をすることになります。
この本、お勧めです。
ちなみに、「五百マイルも離れて」の歌詞は・・・
もしもあんたが汽車に乗り遅れたら
私は行ってしまったと思って
汽笛が聞こえるでしょう
百マイルの彼方から
百マイル、百マイル、百マイル、百マイル
ほら、汽笛が聞こえるでしょう
百マイルの彼方から・・・
2番以降はこの本を読んでください。