
彼女について
よしもとばなな
新聞の書評を読んで、あっ、読みたいな、と思った作品です。
ただ、その書評の中にストーリーの結末が書いてあって、
その結末を知ったからこそ読みたい!と思ったものの、
結末を知ってしまったがゆえにそれを意識してしまい、
何も知らずに素直に読んでみたかったなあ、とも思いました。
いつ来るか、とどきどきしながら、読む進むにつれて、
あれ?そんなことあり得ないよね?と思い始め、
ああ、そういうことだったのか・・・と納得。
持って回った言い方ですみません(笑)
ただ、こういう読み方だったので少し重く感じられ、
長い話ではなかったのに時間がかかりました。
何も考えず、この不思議な世界を満喫したかっなあ。
ということで、あまり詳しくは書きませんが・・・
双子の母親を持つ、由美子といとこの昇一。
凄惨な事件で家族を失った由美子は、昇一とともに
失われた過去を取り戻す旅に出ます。
とてもシンプルに書くと、そういうストーリーです。
魔女、降霊会、殺人など、どろどろしたおぞましい出来事がでてきますが、
それらが沈殿したできた上澄液のような透明感と、
どこか死の影が漂う、ひんやりとした冷気を感じさせる独特な世界です。
登場する人たちがみんな優しくて、由美子でなくても
癒され、包み込まれるような感じがします。
ラストは衝撃的であるとともにせつなく、
じんわりと温かい気持ちになります。
日々、家族や友人と過ごす、何気ない日常の大切さ、
人々のぬくもり、ささやかな幸せを感じずにはいられません。
今、生きていることの素晴らしさ。
お風呂の温かさ、ごはんのおいしさ、空や風の具合・・・
人生って、そんな些細なものの積み重ねなんですね。
そして、いつか大切な人を失ったとき、
もう一度この本を手に取るかもしれません。
ひっそりと喪に服すために・・・。