『ミヤマ物語 第一部』
あさの あつこ
以前、新聞の広告欄で見たときから、ずっと気になっていた本です。
毎日小学生新聞に連載されていたというから、
小学生向きなのでしょうが、これがなかなか。
主人公は小学生(あるいは、それくらいの年齢の子ども)です。
でも、彼らの抱える孤独、閉塞感は、大人も子どもも共通のもの。
あさのさんの文章は、けっして「子ども向き」にはなっていません。
年齢に関係なく引き込まれます。
ミヤマというのは<深山>、深い山ですね。
どこもかしこも眩い現代社会において、
いまだに底知れぬ闇が存在するところ。
主人公のひとり、透流(とおる)の父の田舎、
山奥にある雲濡<ウンヌ>という土地が舞台のようです。
そして、もうひとりの主人公、ハギ。
彼が住むのもウンヌ。
しかし、そこは身分制度が厳しく、ハギは履物を履くことも許されない、
最下層の身分です。
そう、この物語、ふたつの世界に住むふたりの主人公が、
それぞれ自分の住む世界から逃れようとするところから
始まるようなのです・・・。
というのは、主人公たちのそれぞれの世界でのできごと
(いじめや身分制度)が描かれ、ふたりがやっと出会ったところで
残念ながら第一部は終わってしまいます。
雲濡とウンヌという異世界の謎、消えた透流の祖母の遺体、
ウンヌの身分制度で一番偉いとされるミドさまとは何者か、など
あちこちに謎がちりばめられていて、それも気になるところ。
「深い山の闇の暗さと魅力について書きたい」と
あさのさんが書かれていたようですが、
私がこの本に興味を持ったのもその<闇>なんですね。
これから、どんな展開になるのか、ものすごーく楽しみ。
そうそう、このふたりの主人公。
透流は少年ですが、ハギのほうは途中まで
てっきり少女だと思ってたんです。
少年とわかって、やっぱりあさのさんだなあ、と(笑)
『バッテリー』や『NO.6』同様、少年たちの物語のようです。
それにしても、図書館の(児童書でない)棚に、
あさのあつこさんの本がずらーっと並んでいるのを見てびっくりします。
ここ数年の間に、たくさん書かれていますよね。
それも児童書から時代小説まで。
『NO.6』は子どもたちが好きなので、私もずっと読んでいますが、
7巻までいってもまだ終わりません。
この『ミヤマ物語』の第二部も、毎日小学生新聞に連載されるそうだから、
そんなに連載かかえてごっちゃにならないのか、
一読者としていらぬ心配をしてしまいます(笑)
あさのさんの作品は、児童書なのにどこか突き放した結末で、
森絵都さんの作品のように「最後は暖かい気持ちになれる結末」が
好きな私としては「子どもの本としてはどうかなあ」と思っていました。
でも、子どもだからといってごまかさない、容赦ないリアル感が、
子どもたちの胸を打つのでしょうね。
そして、だからこそ大人が読んでも読み応え充分なのだと思います。