万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

再生エネ法の行く末―失敗の悲劇は繰り返されるのか

2012年04月06日 15時24分43秒 | 日本政治
独メーカー破綻 買い取り価格引き下げ 太陽光、日本にも影(産経新聞) - goo ニュース
 菅前首相が、自らの辞任の条件としたために、充分な議論も制度設計もなく、国会で可決されてしまった再生エネ法。7月からの施行を前にして、諸外国での失敗の報告もあり、その行く先が危ぶまれています。

 菅前首相の”条件闘争”の結果なのですが、この制度、始めから様々な問題が懸念されていました。特に太陽光発電については、通常の電力価格の数倍という高値であることに加えて、一旦、設置されますと数十年に亘って使用されるため、技術革新の効果が及びにくいという難点があります。初期に設置されたパネルほど発電効率が低くなるのですが、劣位の施設を、競争を通して淘汰する仕組みが欠如しているのです。結局、技術革新を促すためには、政府側が、買い取り価格を意図的に下げることで、発電効率の悪い事業者を強引に撤退させるしかなありません。また、諸外国の事例ですと(スペイン?)、コスト高を抑制するために、新規参入者を制限するという方法も採られているそうです。この方法でも、新規参入を閉すのですから、なおさら発電効率の低い施設ばかりが残ることになります。つまり、最初にこの分野に投資した事業者だけが、高値買い取りの特権を享受できることになるのです。何れにしましても、企業や国民は、電気料金の値上がりというコストだけを背負わされることになります(しかも、電力供給が不安定化…)。同じコストをかけるならば、技術革新に振り向けた方が、よほど”まし”です。

 最近、『失敗の本質』という本が関心を集めているそうですが、この本では、敗戦の失敗の教訓の一つとして、危機や緊急事態に弱く、既定路線を変えられないことが、組織的な敗因として分析されているそうです。現在の日本国の状況を見てみますと、企業や国民が再生エネの負担に耐えられるとも思えず、このまま、再生エネの路線を突き進むことが、悲劇的な失敗の繰り返しにならないとも限りらないと思うのです。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする