万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原発ゼロで燃料処理費7兆円は安いのか―脱・反原発コストの計算を

2012年04月20日 11時03分00秒 | 日本経済
牧野副大臣を京都、滋賀に派遣=原発再稼働で23日にも―政府(時事通信) - goo ニュース
 核燃料の再処理については、昨日、原発ゼロの場合の試算が初めて公表されたそうです。マスコミ各社は、原発ゼロの場合が、最大で7.1兆円余りであり、最もコストが低いことを強調しています。しかしながら、この報道、あまりにも偏っていると思うのです。

 原発ゼロになれば、わずか7兆円で済む、という論調なのですが、これまでの核燃料リサイクル計画に基づく試算と比較しますと、その差は、およそ1兆から3兆円ほどです。つまり、原発がゼロになっても、1兆から3兆円の違いしか生じないのであり、この側面から見ますと、強調すべきは、原発がゼロでも、それほどのコスト削減にはならないということです。しかも、脱・反原発を実行しますと、年間で3兆円の火力の燃料費が嵩みますし、再生エネの買い取り制度は、普及のために高値に設定するとの情報もあり、さらにコストは上昇します。この額に比べますと、再処理の1兆から3兆円のコスト削減などは、吹き飛んでしまうのです。また、この試算では、仮に、高速増殖炉による核燃料サイクルに成功した場合のメリットについても触れていません(処理費を簡単に上回るかもしれない…)。

 政府もマスコミも、電力の需給問題に国民の関心を集めたいようですが、国民は、脱・反原発のコストにこそ、注目すべきです。何故ならば、それは、そのまま国民負担となるのですから。将来において、電力料金や物価の上昇が待っていることを(産業も衰退…)、政府もマスコミも、国民に正確に伝えるべきと思うのです。

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