万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

原発再稼働の拒否権付与提案―少数者が多数者の運命を決定する

2012年04月11日 16時07分04秒 | 日本政治
大飯100キロ圏と安全協定を 大阪府市が再稼働8条件(朝日新聞) - goo ニュース
 大阪市の橋下市長は、大飯原原発の再稼働問題について、原子力安全協定を締結し、100キロ圏内の知事に拒否権を与えるよう、政府などに対して提案を行うそうです。この提案、以下の点を考慮しますと、見送るべきではないかと思うのです。

(1)拒否権を認めるということは、一人でも反対する知事が現れれば、たとえ、政府が再稼働を承認したとしても、原発を止めることができることを意味しています。他の全ての県知事が賛意を示してもです。民主主義の基本原則は多数決なのですが、拒否権の付与は、この原則に反しています。

(2)電力供給が、全ての人々の影響を与えるライフ・ラインであることを考慮しますと、以前にも指摘したことがあるのですが、逆に、止める決定の方のハードルの方を高くすべきでもあります。

(3)加えて、この手続きには、一般の企業や消費者、ならびに、電力事業者の意向は、全く無視されています。国内には多様な利害があるのですから、地方自治体だけ、しかも、知事だけに拒否権を付与することは、不公平でもあります。

(4)地方自治体が拒否権を持つことは、事実上、地方自治体の決定権が、政府のエネルギー政策の決定権に優越することを意味します。これでは、国家としてのエネルギー政策は、立案できないことになります。

(5)さらに、電力供給の安定性から見ますと、知事が交代するするごとに、原発の停止と再開が繰り返されては、電力会社が事業計画を立てることも難しくなります(既存の電力会社も新規参入者も…)。常に、バックアップの電源を用意しなければなりませんし、その度に、電力料金も上下するのでは、企業も国民も混乱します。


 橋下市長は、産業と国民生活は眼中にないらしく、原発停止に向けて猛進しています。果たして、その先には、何が待っているのでしょうか。

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コメント (4)
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