万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

新日鉄ポスコ訴訟―技術流出の阻止を

2012年04月27日 12時08分41秒 | 国際経済
技術流出 新日鉄がポスコ提訴 忠誠心低下で他業種も危機(産経新聞) - goo ニュース
 新日鉄は、韓国ポスコ社を相手取り、特殊鋼板の製造技術に関する特許侵害の訴訟を起こしたと報じられております。グローバル市場での日本企業の劣勢は、不利な為替相場のみならず、技術流出にも原因がありますので、官民ともに抜本的な対策が必要です。

 今回の事件は、中国企業への技術流出を訴えられたポスコ社員が、裁判所で韓国の”国家機密”ではなく、”日本の技術”を流したと証言したことから発覚したものです(韓国側の方が、技術流出に厳しいという皮肉…)。無罪を勝ち取るために、別の犯罪を認めざるを得なくなったのですから、いわば、韓国側が自らの墓穴を掘る形となりました。この点、新日鉄は、幸運にも韓国国内での訴訟により、技術流出の証拠を得ることができたのですが、退職者を含めた技術流出の監視は難しいとの指摘もあります。新技術の開発費に数百億単位の費用と膨大な時間が費やされるとなりますと、日本人技術者の引き抜きによる人件費は微々たるものです。僅かなコストで莫大な利益がもたらされるのですから、韓国企業にとりましては、楽をして富を得る有効な手段なのです。しかも、日本の技術を流用しながら、エルビータの運命が象徴するように、韓国企業は、市場から日本企業を蹴落とすことに躊躇いはありません(もちろん、市場の競争は過酷なのですが…)。

 日本企業は、巨額の研究・開発費を投じて技術的な優位を保ってきたものの、技術流出により短期間で中国や韓国企業に追いつかれ、価格競争に持ち込まれてしまいますと、日本勢の敗退は必至です。品質や性能が同程度であるならば、価格が安い方が有利であることは言うまでもないからです。新興国の成長により、日本経済の先行きに黄信号が点っていますが、戦略的に自国の技術を守り、育てませんと、近い将来、先進国から脱落する日が訪れるかもしれないと思うのです。

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コメント (2)
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