万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

ギリシャの反緊縮派―民主体制下の自滅誘導戦略か

2012年06月16日 15時32分36秒 | ヨーロッパ
ギリシャ再選挙 3つのシナリオ…「楽な道」見当たらず(産経新聞) - goo ニュース
 今月17日に予定されているギリシャの議会選挙の結果は、今後の世界経済をも左右しかねません。何れの陣営が勝利を収めても、安定からは程遠い状況となりそうなのですが、ギリシャの選挙は、民主主義の欠点をも提起しています。

 民主主義の欠点、それは、国民に対する自滅誘導政策が可能であると言うことです。ギリシャの場合、反緊縮派の急進左派連合は、EUからの支援枠組みの合意撤回や全面的な見直しを表明する一方で、ユーロ圏残存をも国民に約束しています。冷静、かつ、合理的に考えれば、両者が同時に成り立つわけはなく、近い将来、財政が破綻することは目に見えています。当然に、財政不足を賄うためにドラクマを発行し、ユーロ離脱を選択せざるを得なくなるのですが、緊縮策に対する不満が鬱積している国民感情を操って、反緊縮派は、バラ色の将来を描いて見せているのです。一種の騙しのテクニックなのですが、反緊縮派が、ユーロ離脱後の混乱を充分に承知しながら、選挙に勝つために非現実的な公約を掲げているとしますと、この行為は、悪魔的でもあります。あるいは、反緊縮派は、EUに対して瀬戸際作戦を仕掛け、EU並びに世界経済を人質にとって、ギリシャへの支援継続やECBによるギリシャ国債の購入を迫るのでしょうか。後者のシナリオもまた、他のEU加盟国からしますと背信的であり、あまりに身勝手です。

 外部の諸国が緊縮派を支持しますと、ギリシャ国民は、感情的な反発から自滅シナリオを自らの手で選択してしまいそうです。そして、世界経済もまた、道連れにされるとしますと、民主主義には、何らかの安全装置を施す必要があるのかもしれません。民主主義発祥の地であるギリシャのアテネは、古代にあっても民主主義の欠点が仇となって衆愚に陥り、衰退する運命を辿りました。21世紀を迎えた今日にあって、民主主義の欠陥が、再びギリシャを混乱の淵に追いやっているとしますと、それは、皮肉な運命の巡り合わせというものなのでしょうか。

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コメント (2)
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