万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

「大阪都構想」―日本を分解したい人々

2012年06月30日 15時35分54秒 | 日本政治
橋下氏、「大阪都」法案「名前すべてなのに…」(読売新聞) - goo ニュース
 与野党5党の間で、大阪都構想に関する大筋の合意が成立し、政令指定都市を含めて、人口が200万人以上になる市町村に対して、東京都と同様に、特別区を設けることを認めるそうです。一方、”都”の名称使用は見送られたため、”大阪都”構想の実現を目指す橋下大阪市長は、不満を漏らしているそうです。

 大阪を含め、同条件の市町村に”都”の名称が使用されることになれば、憲法や法律において首都を明記していない日本国では、首都の所在地が曖昧になるといった問題もあります。この点、5党合意による”都”の名称使用の否定は理由があるのですが、橋下市長は、せめて”州”の名称を使えるようにし、道州制導入への道筋を付けたいと訴えているようです。道州制については、大阪維新の会の登場以前から、政治課題として提起はされてきたのですが、単一民族国家である日本国には、敢えて州という単位を創設し、連邦制を導入する必要はあるのでしょうか。アメリカのように、旧植民地を州の枠組みとしている国もありますが、連邦制を採用している国の多くは多民族国家であり、各州は、民族を基本単位としています。日本国と同じく単一民族国家でありながら、連邦制を採用している国としてドイツがありますが、ドイツにも、州の単位が、およそ神聖ローマ帝国時代の領邦国家に遡るという歴史的な背景があります。もし、ドイツ式を採用するならば、州の単位は、江戸時代の藩と一致させた方が自然です。何れの国でも、連邦制導入には、歴史的な根拠があるのです。

 中央と地方との権限を整理し、より効率的な行政が実現できるように、両者の間や地方間の関係を見直すことは重要ですが(部分的には広域行政区の設置は有効かもしれない…)、”州”といった、一つの主権的な単位を設けることには、日本国の解体というリスクが伴います。明治維新では、近代国家建設のための国家統合が最重要課題の一つでしたが、平成の維新の会は、逆に、日本解体こそ、自らの使命と任じているかのようです。江戸時代には幕領であり、地方的な独立性が薄かった大阪が、地方分権、あるいは、国家解体に熱心である背景には、一体、何があるのでしょうか。この構想、日本国のためでも、日本国民のためのものでもないように思えるのです。

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コメント (2)
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