万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

寝耳に水の”緑の協力隊構想”

2012年06月22日 11時24分25秒 | 日本政治
途上国へ環境専門家1万人派遣 リオ+20で外相表明(朝日新聞) - goo ニュース
 ブラジルのリオ・デ・ジャネイロで開催されている「国連持続可能開発会議」において、日本国の玄場外相が、環境専門家1万人を途上国に派遣するという”緑の協力隊構想”を打ち出したと報じられています。国民には秘密にしておきながら、国際社会の場で、突如構想を発表するという手法は、いい加減、止めていただきたいものです。

 最初に海外で発表して外堀を埋めようとする手法は、鳩山元首相や菅首相、そして野田首相も頻繁に使っており、国民が、後から聞かされて驚くことも、一度や二度のことではありません。今回の”緑の協力隊構想”も、人員が1万人、予算が4200億円程もかかるため、国会での立法化を要するでしょうから、簡単には実現しないはずです。また、詳細を詰めれば、問題も山積しています。環境専門家1万人は地方自治体からも集めるそうですが、日本国に、そのような人材の余裕はあるのでしょうか。途上国は150か国ほどを数えますが、専門家1万人を単純に均等に割っただけでも、一国に対して66名以上の大所帯の専門家チームが派遣されることになります。各国の実情や要望に合わせてチームを結成し、派遣先国と交渉し、現地の受け入れ態勢を整えるだけでも、相当の労力と組織力を要します。しかも、現地で環境改善の仕事を実際に実施するとなりますと、大規模な装置や機材も必要となります(環境事業に日本企業が関わるのでしょうか?)。

 東日本大震災による被災地では、政府の怠慢により復興が遅々として進まず、国内に災害の爪痕や要除染地帯が残る中で、政府が、海外の環境にだけは熱心に取り組む姿勢を見せれば、国民感情も納得しないはずです。しかも、何らの国内的な議論も合意もなく、”寝耳に水”では、なおさらのことです。国内での反対が強いほど、こうした”構想”は、後々潰される可能性が高いのですから、日本国の信頼をも傷つけることになります。民主党政権は、国際社会で非現実的な構想を打ち上げる手法は、国民に対する”騙し打ち”に近いと肝に銘ずるべきではないでしょうか。

 よろしければ、クリックをお願い申し上げます。


にほんブログ村 政治ブログへ
にほんブログ村
コメント (6)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする