万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

価格急騰はビットコインの弔鐘か?

2017年12月06日 15時43分03秒 | 国際経済
今や仮想通貨ビットコインの取引価格は1万ドルを超え、時価総額は20兆円にも上るそうです。2010年から今年までの7年間で、その価格は100万倍に上昇したと言うのですから驚くばかりです。

 ビットコインの価格急騰については、早、バブル論もある一方で、今後も上昇傾向は止まらないとする見方もあるようです。拡大を続けてきたビットコインの勢いが止まる理由は、バブル崩壊のみではないように思えます。

 ビットコインが終焉を迎えるもう一つの理由は、価格の不安定性が通貨の基本機能―支払い手段、価値尺度、価値貯蔵手段―を著しく損なうからです。仮に、7年間で100万倍も通貨価値が変動する通貨を想定して見れば、それが、如何にリスクに満ちた状況であるのか理解できます。通貨価値が下落するインフレについては、第一次世界大戦後のドイツのハイパーインフレーションがよく知られていますが、その1兆倍のインフレ率に比べればケタに違いはあるものの、ビットコインは、他の一般の通貨と比較して超デフレなのです。このことは、ビットコイン表示で‘もの’やサービス等に価格を付けたり、ビットコイン建で投資や融資を行うことが困難となることを示しています。敗戦後のドイツ経済の未曽有の混乱は、ドイツ・マルクの機能不全による経済活動の破綻に依りますが、今日にあって、ビットコインの使用の拡大は、同通貨の価値下落による経済破綻リスクを背負い込むことになりかねないのです。

 価値尺度としての通貨機能が果たせなくなれば、誰もが、決済手段としてもビットコインの使用を避けるようなります。バブルが崩壊すれば、資産としての価値も激減するのですから、価値貯蔵機能も危うくなります。かくして、ビットコインの市中での流通量も減少することになりましょう。通貨価値の不安定性は、中央銀行が存在せず、マネー供給量の調節機構を持たない‘前近代的貨幣’とも言えるビットコインの宿命とも言えます。

 ビットコインの相場上昇には、一般企業による採用拡大など、ビットコインの一般的な流通性に対する期待も一役買っています。そしてこの期待は、期待したが故の自らの投機行為によって消えるかもしれないのです。ビットコインが投機的マネーゲームと化した結果、通貨としての基本機能を失ったのでは、もはやコインとは言えなくなります。ビットコインの相場急騰は華やかに見えながら、その弔鐘となるのかもしれないと思うのです。

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