万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

北朝鮮には賠償の準備はあるのか?―報復暴発シナリオ

2017年12月15日 10時34分18秒 | 国際政治
【文在寅氏訪中】習近平氏と会談「半島の戦乱は絶対に許さない」トランプ政権の軍事行動に“ノー”
 北朝鮮問題については、12月14日に北京で会談した中韓首脳は、“朝鮮半島での戦争は絶対に容認できない”との見解で一致したと報じられております。

しかしながら、両国は、“北朝鮮の核保有は容認できない”とする立場も表明しており、この二つが両立しない場合、一体、どこに解を求めるのでしょうか。話し合いによる解決は、既に、隘路に陥っているとの見方もあり、アメリカは、軍事制裁による解決を視野に入れた圧力を継続しております。その際、予測される最大のリスクは、日本国や韓国といった周辺諸国に対する北朝鮮による‘破れかぶれ’の攻撃です。米軍の対北攻撃の時期は北朝鮮によるICBMの配備完了以前と想定されますので、報復の対象は、周辺諸国とならざるを得ないからです。となりますと、日本国は、甚大な被害を蒙る可能性が高く、Jアラートの整備や核シェルターの設置検討などは、日本国政府の危機感の表れとも理解されます。

 この暴発シナリオのリスクに関連して疑問に思うのは、北朝鮮には、被害国に対する賠償の準備はあるのか、ということです。ティラーソン米国務長官は、先日、対北無条件対話の提案に際して、北朝鮮の“投資”、即ち、核・ミサイル開発に投じてきた多額の投資に配慮する旨を示唆しておりましたが、北朝鮮から攻撃を受けた側の“投資損害”は北朝鮮の核・ミサイル開発投資の比ではありません(北朝鮮側は、相手国の”投資”など全く眼中にない…)。第一次世界大戦において、敗戦国であるドイツが天文学的な額の賠償請求を受けたのも、連合国側、特に西部戦線となったフランスの被害が甚大であったからです(例えば、ソンム等の国境の地帯の村落は廃墟と化した…)。対日核攻撃ともなれば、都市が丸ごと破壊されるわけですから、北朝鮮に対する日本国側の官民による賠償請求は、北朝鮮が、数百年かけても返済不能なほどの額に上るかもしれません。金正恩体制が崩壊したとしても、後継の北朝鮮政権は賠償責任を負いますし、韓国が同地域を吸収合併した場合にも、韓国の対北請求権が消滅しても、日本国は、朝鮮半島の統一政府に対して、賠償を請求する権利を保持することとなりましょう(因みに、第二次世界大戦では、日本国は、統治時代の35年に亘って朝鮮半島に財政支援(公的投資)を実施し、しかも、インフラや家屋等の破壊行為を行っていないにも拘わらず、戦後、韓国に対して一切の請求権を放棄すると共に、多額の経済支援をも支払っている…)。

 金正恩委員長による報復暴発は、将来に亘って北朝鮮に多大なる債務を残すこととなりますので、北朝鮮国民にとっても望ましいシナリオではないはずです。アメリカによる軍事制裁のタイムリミットが迫る中、北朝鮮は、将来的な負の遺産をも考慮し、即刻、白旗を上げるべきなのではないでしょうか。

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コメント (2)
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