万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

第二回米朝首脳会談は‘物別れ’になるのでは?

2018年10月04日 14時02分18秒 | 国際政治
韓国外相「終戦宣言と核施設廃棄を交換条件に」 北への核申告要求は先送り提案
ニューヨークの国連本部では、毎年、9月末頃に国連総会が開かれており、各国の代表が国際社会に向けて自らの政府の政策方針を発表する、あるいは、‘もの申す場’となっております。核・ミサイル開発問題により安保理決議に基づく経済制裁の対象国となっているものの、北朝鮮の代表にも演説のチャンスだけは等しく与えられているようです。

 今般の国連総会における李容浩外相の演説において注目すべきは、自国の核放棄について明確な条件を付けていることです。その条件とは、朝鮮戦争終結を宣言し、米朝平和条約締結への道筋を付けることです。この北朝鮮側の主張は、同国の核開発の動機の一つでもあり、かつ、以前から繰り返されてきたものですが、今年6月12日の第一回米朝首脳会談では、北朝鮮の核放棄には大筋では合意したものの、その時期、手段、並びに手順等については曖昧のままに残されていました。しかしながら、本国連総会における北朝鮮側の演説は、北朝鮮は、第一回米朝首脳会談では何一つ妥協しておらず、あくまでも、核・ミサイル開発をアメリカに自らの要求を実行させるための脅迫手段として使う姿勢に変わりはないことを鮮明にしたのです。

 加えて、北朝鮮の朝鮮中央通信は、今月2日に、“朝鮮戦争の終結宣言は、核放棄の前提条件でもない”といった趣旨の論評を載せています。つまり、たとえアメリカが‘相応の措置’として北朝鮮の要求に沿って同宣言を行ったとしても、必ずしも北朝鮮は核を放棄するとは限らないと述べているのです。しかも、核放棄とは言わず、限定的に寧辺核施設と表現していることから、他の核施設については不問にふされた形となっており、完全なる核放棄に至るのかも不明ですアメリカに対して‘無条件の終戦宣言’の実行を求めたに等しく、この立場は、アメリカの基本的立場であった‘無条件の核放棄’の裏返しとも解されるのです。もっとも、この点に関しては、韓国は、翌3日に朝鮮戦争の終結宣言と寧辺核施設の廃棄との交換条件化を提案していますので、北朝鮮側は、韓国を介して第2回米朝首脳会談での‘落としどころ’を示したのかもしれません。

 かくして、第一回米朝種の会談で取り残した北朝鮮の核・ミサイル放棄に関する不透明な部分は、今般の総会演説と上記の論評を以って半ばその像を結ぶものとなりました。それは、‘北朝鮮は、核放棄に応じる意思はあるけれども、その実行は、アメリカが無条件に朝鮮戦争の終結を宣言した後のことであり、しかも、実際の核放棄は金正恩委員長の決断に専ら任されている(しかも、現段階では寧辺核施設以外は放棄の対象外…)’という北朝鮮側のスタンスです。今や、決断のボールは北朝鮮側からアメリカ側に投げられ、これを受取ったトランプ大統領の決断が待たれることになったのですが、果たして、トランプ大統領は、この‘虫の良い’北朝鮮側からの要求を快く受け入れるのでしょうか。

報道に拠りますと、年内にも、開催地はスイスのジュネーブとも噂される第2回米朝首脳会談が設けられるそうです。これに先立って、ポンペオ米国務長官の訪朝が今月7日に予定されていますが、最終決断は首脳同士の合意に委ねられるものの、このテーブルでは少なくとも北朝鮮側の要求の詳細が確認されることでしょう。しかしながら、北朝鮮側の要求がはっきりしている以上、トランプ大統領は、中間選挙を控えた時期なだけに、韓国案に沿った妥協であっても、北朝鮮に逃げ道を残すような合意ではむしろ有権者の失望を買うリスクがあります(逆効果…)。北朝鮮の検証可能な形での完全非核化は、アメリカとしては譲れない線なのでしょうから、第2回米朝首脳会談では、対立点が明確になったが故に、お互いの要求が咬みあわず、物別れとなる可能性は極めて高いように思えるのです。

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コメント (2)
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