万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

あまりに身勝手な韓国の徴用工判決

2018年10月31日 13時51分09秒 | 国際政治
「国際裁判所」カードでけん制=政府、韓国の対応見極め―徴用工判決
昨日10月30日、韓国の最高裁判所は、戦時中の朝鮮半島における戦時動員に関して、今日の日韓関係にも重大な影響が及ぶ判決を言い渡しました。それは、被告である同企業は、当時にあって日本企業の下で勤労動員された韓国人原告に対して損害賠償を支払う義務があるとするものです。同裁判所は、‘違法な植民地支配の被害者’として扱っておりますが、韓国司法判断は、あまりにも身勝手なのではないでしょうか。

 身勝手である第一の理由は、徴用工の未払い賃金分を含めて同問題を最終的に解決した1965年の「日韓請求権協定」において‘植民地支配の償い’を強く求めたのは、当の韓国側であったからです。難航した同協定の交渉過程にあって、日本国側は、当初、サンフランシスコ講和条約の第4条に基づく両国間の国と国民の財産請求権の清算として理解していました。日韓の間に戦争状態はなく、当然に、日本国が朝鮮半島を攻撃して損害を与えた事実はなかったからです。また、併合時代を通して、日本国は、常に同地域に財政移転を実施すると共に、官民を挙げてインフラ整備等への巨額の投資も行っていました。日本国には、国際法に照らしても戦争被害を賠償する義務は全くなかったのです。

講和条約第4条の主旨は韓国独立に際しての相互清算にあり、これを原則に財産の相互清算を行えば、むしろ韓国側に日本国に対して支払いを行う義務が生じておりました。それにも拘わらず、同協定において日本国側が多額の経済支援を実施する方向で合意したのは、朝鮮戦争を背景としたアメリカの政治的圧力(西側陣営支援の意図…)、並びに、韓国側による‘植民地支配の償い’要求があったからです。日本国政府は後者の主張は認めないものの、経済支援という名目の下で多額の資金を韓国に対して提供することで妥協します。この時、戦争被害が存在しない韓国が多額の支援金を受け取ることができたのは、‘植民地支配’という別の根拠を持ち出したからに他ならないのです。今般、韓国の最高裁判所が過去の経緯を無視して同根拠を持ち出すのは信義則に反する態度であり、悪質な‘二重払い請求’とも言えます。仮に、協定上の賠償責任があるとすれば、それは、韓国政府に他なりません(歴代政権は解決済みと認めている…)。

第二の理由は、韓国側の一方的な被害者意識です。同国の言い分は、‘日本国による朝鮮半島統治は違法であり(実際には、韓国併合条約に基づく合邦のようなもの…)、その時代に実施された戦時動員は違法な強制労働に当たる’というものなのでしょう。この論に基づけば、日本国が韓国を一方的に支配し、その国民に損害を与えたことになります。しかしながら、韓国は、韓国を護るために日本国が払った多大な人的・経済的犠牲を全く無視しております。そもそも、清国の冊封体制から韓国が独立できたのは、日清戦争にあって日本国民が血を流して戦ったからです。通常、国家独立に際しては、自国民が命を賭して戦うものですが、軍事力を脆弱であった韓国の場合、代わって日本国民の血が朝鮮半島独立のために流されたのです。確かに、朝鮮半島の防衛は間接的には日本国をロシアの脅威から守るためには必要ではありましたが、それが唯一の選択肢であったのか、と申しますと、そのために払われた日本国民の犠牲を考慮しますと再検証して見る価値はあるように思えます。

また、日本統治時代には、日本国は自国の国内投資を後回しにしても朝鮮半島の近代化に予算を投入しておりますし、戦時にあって、朝鮮半島の人々が徴兵されることもありませんでした(末期に徴兵は実施されたものの、戦地に配属されることはなかった…)。戦地で命を落とし、激しい空襲を受けて犠牲となったのは日本人であったのです。日本統治下にあって朝鮮の人々は国民としての義務を免除され、優遇された側面もあるのですから、日本統治=‘植民地支配’=被害とする三段論法的主張は、歴史上の事実を無視しています。

韓国最高裁判所の判決を受けて、日本国政府は、「日韓請求権協定」に定められた規定に従うか(両国間の外交交渉を行うものの、それでも解決に至らない場合には仲裁に付す)、あるいは、ICJ(国際司法裁判所)への提訴を辞さない構えのようです(日本国政府、並びに、日本企業が常設仲裁裁判所に訴える選択肢も…)。報道に拠りますと、韓国政府が救済基金を設立し、日本国政府、並びに、日本企業が同基金に拠出するとする案があり、おそらくこの案は、勝ち目のない司法解決を避け、二国間での外交交渉の段階で解決したい韓国側の意向なのでしょう。しかしながら、韓国司法による日本企業の資産差し押さえ等は免れたとしても、これでは実質的に賠償支払いに応じたこととなり、日本国が‘二度払い’を行うことを意味します。上記の歴史的経緯を考慮すれば、日本国側が、同案に合意するはずもありません。この案に日本国が安易に乗じれば、国際法秩序の破壊行為に加わることにもなりかねませんので、ここはやはり、韓国の無法と非道を国際法廷の場に訴え、国際社会に法の支配を確立する上でも、法的な解決に委ねるべきではないかと思うのです。

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コメント (4)
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