万国時事周覧

世界中で起こっている様々な出来事について、政治学および統治学を研究する学者の視点から、寸評を書いています。

‘外国人ファースト’の日本国の政界-社会保障制度が利用される?

2018年12月09日 13時49分37秒 | 日本政治
年金一時金、増額を検討 外国人労働者ら出国時
本国会にて入管法改正案が成立したため、日本国の政界の関心は、はや、外国人の受け入れ環境の整備に向かっております。こうした受け入れ態勢の整備に関して懸念すべきは、与野を問わずに何れの政党も制度改革の方向性が‘外国人ファースト’である点です。

 法案可決以前にあっては、日本国の医療保険制度に加入している在日外国人の海外在住扶養家族に対してまで同保険基金から治療費が支払われている現状が問題視され、是正する方向で議論が進んでおりました。一般の日本国民の扶養家族が海外で治療を受けたとしても、自己負担、もしくは、民間の保険でカバーするしかありませんので、同制度が外国人優遇制度であったことは否めない事実です(諸外国の医療制度と比較しても、これ程まで外国人を優遇した制度はないらしい…)。また、短期滞在者にまで医療保険の加入が認められていることもあり、不正受給も含めて外国人に対する支出額は増加傾向にもありました。さらには、近年、永住資格者の生活保護問題も取り沙汰されてきており(これらの受給者は1号資格者として就業するのでしょうか…)、凡その流れは、外国人優遇制度の是正へと向かっていたのです。社会保障制度の多くは、その国の国民が長期に亘って積み立ててきた資金を元に運営されていますので、受益と負担のバランスからしましても、外国人優遇制度は一般の国民にとりましては損失を意味するのみならず、生涯設計まで不安定化しかねない要因なのです。

ところが、入管法改正案が可決された直後から、政府は75歳以上が加入する後期高齢者医療制度の低所得者の保険料の軽減特例の廃止や、受給要件の10年を充たさずして出国した外国人に対する「年金一時金」の引き上げを検討中、といった報道が目立つようになりました。後者については、日本国民の場合、一時金支払いの制度はないはずですので、これもまた外国人優遇政策となりましょう(もっとも、帰国にインセンティヴを与えるための措置としても理解されますが、その分、日本国民の年金支給額は減額される…)。また、上記の諸問題の是正に必要とされる法改正についても、入管法と同時に改正されることなく積み残されてしまったのです。

本法案を主導した菅官房長官が‘外国人労働者に日本に来てもらうためには、さらなる受け入れ体制の整備が必要’と述べていたことを考え合わせますと、これらの政府方針が、同法案の可決と無関係であるとは思えません。少なくとも、一般の日本国民に対しては負担増、あるいは、福利厚生レベルの低下の甘受を求める一方で、賃金のみならず社会保障制度にあっても、外国人に対しては‘日本国民と同等、あるいは、それ以上’の待遇を約束しようとしているように見えるのです。今後とも、政府は、各種の社会保障制度を外国人に有利に運営することで、上限として設定された凡そ‘34万人’の数値目標を達成しようと躍起になることでしょう。しかも、外国人を雇用する企業や事業者にとりましては、社会保障制度の利用は、自らの懐を痛めることなく人件費を削減し得る好都合な方法です。外国人実習生制度に対する‘奴隷労働’といった内外からの批判も、国からの福利厚生が厚なれば緩和されるかもしれません。政府与党は、‘移民政策ではない’の一点張りで国政選挙を経ずして同法案を可決成立させましたが、入管法の改正は、社会の在り方や税や保険料負担を含め、全日本国民に多大なる影響を与える重大な問題なのです(百歩譲って移民政策ではないにしても、国民に是非を問うべき問題であることには変わりはない…)。

そもそも、社会保障制度に関しては属地主義と属人主義が混在しており、国際レベルでの調整を要する課題でもあります(少なくとも、労災保険への加入は認めても、医療保険や年金の国民保険部分については、外国人労働者は本国の制度に加入すべきでは…)。両主義を最悪の形で組み合わせますと、日本国民が給付対象から外される一方で海外の外国人までが受給者となり、日本国の各種保険制度の資金や国庫から外国へと流れることともなります。これでは、負担のみを押し付けられる一般の日本国民の反感や不満が高まるのも当然です。フランスでは、新自由主義を推進してきたマクロン政権に対する激しい暴動が発生しており、国民の7割がデモ側に共感しているそうです。日本国政府も、暴動とまではいかないまでも、政策の‘犠牲者’ともなる多くの国民が、改正入管法に対して憤懣やるかたない気持ちでいることを理解すべきではないかと思うのです。

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コメント (5)
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